chee、『バロン』インタビュー

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――いよいよフルアルバムが完成したね。どんな作品になったと思う?

Chee:最初に考えていたのは、バロンという名前の、クラブとラウンジとバーが一緒になったような建物があって…地下がダンスホール、一階がラウンジ、二階にバンドがいて、屋上でアコースティック・ギターが聴けるみたいな、そういうアルバムを作ろうと思ってました。イケイケのやつもあったんですけど、もっとゆるいトーンで統一して、BGMにもなる感じで。それぞれシーンがちょっとずつ違うような打ち込み、ナマ、バンドとかいろんなタイプの曲をいれて、歌で世界感を統一して、気持ちいい空間がずっと流れてる感じにするために、最終的にはけっこう外しました。

――初のフルアルバムだという気負いとか、プレッシャーみたいなものはなかった?

Chee:そうですね…、あったような気がするんですけど、考えてる時間がそんなになくて、すごく楽しくなってきちゃって。1枚目(デビュー・ミニアルバム『VOICE OF CHEE』)の時には自分の立ち位置を考えて、出どころをちゃんとしなきゃいけないなとかいろいろ思ってたんですよ。自分はバンドのシーンでも、ダンスホールでもやってるし、子どもたちが来るような昼間のイベントでもやっていて、どれもお客さんがかぶらないんですよ。ソウルとかファンクも好きで、それも混ぜてやりたかったし。やりたいことがたくさんある中で、そぎ落としていく感じが、途中からすごく楽しくて。

――すごく濃厚なレゲエ・アルバムなのに、聴きやすくて親しみやすい。これがCheeスタイルなんだな、と。

Chee:それはすごくうれしいですね。

――太くて強いリズムの上に、優しくて透明なウィスパー・ボイスが乗っている。そのバランスが絶妙だと思うな。

Chee:絶妙っていってもらえると嬉しいです(笑)。こだわりポイントです!ベースが好きなんですよ。太くてうねってる。なのでいつもベース対ボイス、ボトムとボイスとがいつも相対的な位置に置かれている空間が好きなんですよ。なので常に気持ちいい所を探しています。

――あらためて聞くけど、今のソフトなウィスパー・ボイスのスタイルって、歌い始めた時からこの歌い方だったの?

Chee:いえ、最初はサラ・ヴォーンとかチャカ・カーンとかがすごい好きで、その真似っこだったんですよ。黒人大好きだったから、そのクセをまねて、ジャズ・ヴォーカルの先生のところに通って、声を張って技術で聴かせるみたいな感じだったんですけど。そのあと別のボイス・トレーニングの先生のとこで1年かけてクセをとりました。

――その、黒人っぽいクセをやめようと思ったのは何かきっかけがあったの?

Chee:たぶん、自分と向き合って、自分を受け入れることをしたらこうなったと思うんですね。カッコつけたかったんだと思うんですよ、それまでは。黒くなくちゃイヤだ!みたいな。でもレゲエを歌い始めると、カヴァーもいっぱいやるし…ジャマイカではポップスもロックも、節操ないくらい何でもカヴァーしちゃうんですよ。だからレゲエがあって初めて、ロックとか苦手だった分野を聴くようになったと思うんですね。それまではすごく強くなりたかったんですけど、レゲエの現場歌うことでお客さんとむきあって、自分とむきあうようになって、ちっぽけでも今の自分をそのまま受け入れられるようになっていったような気がします。

――じゃあ“私はレゲエ・シンガーだ”というこだわりは強くある?

Chee:特にないです。レゲエの現場で歌ってきて、今もレゲエシーンにいるので、当たり前というか芯がレゲエでできてるというか…うーん。レゲエ・シンガーでもシンガーソングライターでも、演歌でも、うたうたいに変わりはなくて、ただひとつ違うのはレゲエ・シンガーだ!って頭で考える前に、体がもうレゲエなんです。きっと。低音欲してしまうし…"リディム"とか""セグメント"という概念はレゲエにしかないし、音で体が動くし、うきうきするし、体がこだわってしまうかも。ジャンルはどうでもいいけど、自分はどこにいても自分なので、面白くてわくわくすることをしていたい。それを聴いた人が感じて付けた肩書きは、それでいいと思います。

――あと、知らない人のために付け加えておくと…Cheeのプロフィールですごく目を引くのは、海外に旅をした経験だよね。アメリカ、ヨーロッパ、アジア…何十カ国も行ってる。すごいよね。

Chee:全然すごくないです。値段の高いところは行ってないですもん(笑)。

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