J、AX 5デイズ第一夜 with SNAIL RAMP

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▲SNAIL RAMP
10月3日、ついに体力勝負の5日間が始まった。この日、業界用語で言うところの“午後イチ”から都内某所で某バンドの取材を行なった僕は、帰宅後、幼稚園児のように昼寝をした。これぞフリーランスの特権。しかしこれは睡眠不足解消のためというよりは、数時間後に控えた灼熱地獄(自分から好きこのんで飛び込むのだから“灼熱天国”と言うべきか?)に備えて体力を温存しておくためのものだ。

そんな自分の判断が正しかったことを思い知らされたのは、午後7時26分、今夜のスペシャル・ゲスト、SNAIL RAMPのステージが終了した瞬間のことだった。外はもうTシャツ1枚で歩くには肌寒い季節になりつつあるのに、渋谷AXの場内は真夏の暑さ。もちろん何かの間違いで空調のスイッチが暖房に切り替わってしまっているわけじゃなく、SNAIL RAMPの熱演ですでに“火”が広がりつつあったからだ。

▲SNAIL RAMP
ぶっちゃけ、彼らの演奏時間を見越して遅めに会場入りした人たちや、ロビーでくつろいでいたファンも皆無ではなかったことだろう。が、そんな人たちは明らかに損をしたと言わざるを得ない。それくらい、いいライヴだった。とても3人編成とは思えないあの音圧、切れ味の良さ、強引に受け手側を巻き込んでしまうパワーと無条件な楽しさは、サスガに百戦錬磨のライヴ・バンド。

TAKEMURAのジャンプの高さと話術の巧みさについても、言うまでもない。しかし、まさかこのステージ上で『MOZAIKU NIGHT』での対談時に続いて“おニャン子クラブ”の話が出るとは思ってもみなかったし、あまりにもタイムリーすぎる沢尻ネタや、「宣伝したいけどスケジュール憶えてない。SNAIL RAMPで検索してみて!」発言には爆笑するしかなかったが。

そんなSNAIL RAMPのライヴで大いに汗をかき、大いに笑った後は、いよいよJの登場。BGMの音量が急に大きくなったかと思うと(ちなみにこの夜ずっと流れていたのはスマッシング・パンプキンズ)、それが突然プツリと途切れ、場内は暗転。そこでSEが聴こえてきた瞬間、1997年にタイムスリップするかのような感覚に襲われた。

1曲目はもちろん「PYROMANIA」。あの耳慣れたイントロが始まった時点で、フロアはすでに激震状態。オーディエンスは激しく波打ち、Jに「歌ってくれるかい?」と問われるまでもなく大合唱し、「やっちまえ!」と煽られるまでもなくクラウドサーフに興じる。

改めて説明するまでもないはずだが、『PYRO DAY』と銘打たれたこの第一夜のメイン・メニューは、1997年に発表された彼の最初のソロ・アルバム、『PYROMANIA』に収録されていた楽曲たち。そう、放火魔の歴史はそこから始まったのだ。考えてみれば、僕がJと関わりを持つようになったのもその頃のことだった。当時、『MUSIC LIFE』という雑誌の編集長をしていた僕が、彼の担当ディレクターからの依頼で“洋楽サイドから見た『PYROMANIA』”みたいな原稿を、この作品のプレス資料用に書くことになったのが、この男のロックと出会う切っ掛けだった。それから1年も経たないうちに僕は会社を辞め、フリーランスでの活動を始めている。そうした経緯もあって、僕は『PYROMANIA』に対して、転機の象徴ともいうべき因縁めいたものを勝手に感じていたりもする。

そんな僕自身のことはともかく、『PYROMANIA』という作品がいかにJ自身にとって重要であるかは言うまでもない。これは彼自身のひとつの起点であると同時に、ずっと変わらず存在し続ける“基準”であり“モノサシ”なのだ。実際、2007年の現在に『PYROMANIA』を聴いてみると、未成熟さが感じられる部分も多々ある。あのアルバムから聴こえてくるJの歌声は、現在の彼が発するそれと比べたら別人のものとも思えるほどだし、すべての要素にまつわる説得力の重さが、今とはまるで違う。しかし、彼が発信しようとしているもの、彼が“途切れさせてはいけない”と感じているものは、あの頃も今も、少しも変わってはいない。だから『PYROMANIA』からの楽曲たちは、今も、懐かしさではなくリアリティを感じさせてくれるのだ。

アタマのなかでそんな思いをめぐらせているうちに、灼熱のライヴは加速度を増しながら進み、気がつけばアンコールに突入していた。鳴り止まない歓声に引きずり出されたJは、笑顔ばかりがひしめく客席に向けて、こう語りかけた。

「ホントに今夜はどうもありがとう! スゲえいいスタートが切れたと思います。昨日からドキドキしてたんだけど、またさらに、今夜は眠れなくなりそうです!」

アンコールは「TWISTER」と「So High」という、まさに“今”の曲たち。しかし1997年と2007年の間には、やっぱり何の隔たりも感じられなかった。そして僕はその夜、体力消耗からぐっすりと熟睡するはずだったのに、昼寝が悪い方向に作用したのか、なかなか眠ることができなかった。というか、ここで「本当は興奮が冷めなかったからだ」と明言できないあたりが、僕の素直じゃないところだったりもするわけなのだが。

増田勇一

SNAIL RAMPからのメッセージ
https://www.barks.jp/watch/?id=1000019995


<J SHIBUYA-AX 5 Days –ALL of URGE-10th Anniversary SPECIAL LIVE>
2007年10月3日(水)
[SET LIST]
  • PYROMANIA

  • BURN OUT

  • A FIT

  • Go Charge

  • SQUALL

  • ONE FOR ALL

  • LOOP ON BLUE

  • ACROSS THE NIGHT

  • I HATE YOU

  • LIE-LIE-LIE

  • BUT YOU SAID I'M USELESS

  • CHAMPAGNE GOLD SUPER MARKET

  • -encore-
  • TWISTER

  • So High
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