クレイグ・デイヴィッド、 『TRUST ME』インタビュー

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──Kanoとのコラボ「This Is The Girlはカッコいいですね。MOBOアワーズでのパフォーマンスも素晴らしかったし、華麗なカムバックといった感じですが、どういう経緯で実現したのでしょう?

クレイグ・デイヴィッド(以下、クレイグ):Kanoとは共通の友人フレイザー・T・スミスを通じで知り合ったんだ。彼はKanoのトラック、それに僕のアルバムもプロデュースしてる。Kanoとはいつも“何かやろう”って言ってたんだけど、くだらないことを話すだけでなかなか実現しなかった。でもある日、セッションの合間に2時間あって“いまやってみようか”ってことになったんだ。そのとき書いたのが「This Is The Girl」と「Bad Boy」だ。両方とも彼のアルバムに収録されてる。正直言って、これを“カムバック・トラック”だって言う人もいるけど、ま、いいよ、いろんな意見があるからね。でも自分としては、シーンにはいつも注目してたし、そこから離れていたとも思ってない……。このトラックは僕を象徴するものだと思ってる。描写? 象徴? どっちだ? どっちかだ(笑)。等身大の自分がうまく表現されてると思ってるよ。最近の僕の音楽にはそれが欠けてた。

──2年前に会ったときに比べ、ずい分イメージが変わりましたね。大人になったのか、ヒゲがなくなったせいか……。

クレイグ:それって、今回は本気で恋に落ちたって意味だろ? 前は“ちょっといいかも”くらいだったのが、いまは本当に好きになった(笑)。

──でもこのコラボにより新しいファンを掴んだのは確かですよね。

クレイグ:この曲はラップとコーラスのバランスがうまく取れてる。ヒップホップ・ファンには“クレイグ、いいな”って思ってもらえただろうし、Kanoもクロスオーバーなミュージックが好きな人たちに名が知られるようになった。

──あなたは基本的に仕事中毒だと思いますが、前作をリリースしてから今作の制作を始めるまで、何をしていたのでしょう?

クレイグ:僕のルーツでもあるクラブ・シーンに復帰してたんだ。どんなDJがいて、どんな曲をかけてどんなリアクションがあるのか、実際にクラブへ足を運んで見てた。昔はみんなが知らないような曲もいっぱい知ってて、“これがいい”って教えるような立場だったんだ。それがこの何年かはツアーに忙しくて、レコードを買う時間さえなかった。自分が好きなシーンだけに、何が起きてるのかわからないのは欲求不満だったよ。だから、昔のようになりたいって思ったんだ。アルバムもいっぱい買ったよ。ハングリーな気持ちでスタジオへ戻りたかったんだ。

──それではたくさんの音楽を聴いたことだと思いますが、特にインスパイアされた音やミュージシャンはいましたか?

クレイグ:80年代のものだな。このアルバムはデヴィッド・ボウイの「Let's Dance」からスタートするけど、実はこの曲のことよく知らなかったんだ。曲がヒットしたのは'83年だろ。僕は'81年の生まれだからね。それにアース・ウィンド&ファイアーやホイットニー・ヒューストン。彼女の全盛期はすごかったね。シンプルな曲を歌い、みんなに愛された。僕も今回ソウルフルなアルバムを作りたいって思ったよ。

──なぜ今回、キューバでレコーディングすることにしたのですか?

クレイグ:ずっとキューバに憧れてたんだ。実際この目で共産主義の政権や生活を見てみたいって思ってた。音楽的にもキューバのミュージシャンは素晴らしいしね。(プロデューサーの)マーティン・テレフェが以前、キューバでレコーディングしたことがあって、行ってみないかって言われたんだ。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのオリジナル・メンバーを知ってるっていうし、彼のプレイを見るだけでも行く価値があるって思ったよ。実際行ってみて、社会が2分されているのがわかった。年取った世代は、カストロの政権に満足してる。でも、若い世代はインターネットやテレビで新しいファッションやテクノロジーを目にしてるだろ。でも、それを手にできなくて不満に思ってるわけだ。社会の中に変な緊張感があった。それを実際に見て、キューバに対する理解が深まったよ。それに、素晴らしいサウンドのアルバムが出来上がった。

──キューバへ行く前に曲を書き終えていたと思うのですが、実際向こうへ行ってみて、サウンドや曲の構成など変更した部分はありましたか?

クレイグ:ロンドンで基本となるヴァイブを作ってたけど、キューバでそこに命を吹き込むことができた。“まあまあかな”って思ってたものが、エネルギーを持つようになったんだ。結局、僕のヴォーカルも録り直したよ。みんなが素晴らしいパフォーマンスしてるっていうに、座ってるだけなんて馬鹿らしいって思ったんだ。すごくエネルギッシュになったよ。キューバに行ったことない人は絶対、行った方がいい。

──このアルバムはこれまでのファンが期待するものとはちょっと違うような気がします。とても実験的ですよね。あなたらしい曲もあれば誰が歌っているのかわからないものも…。

クレイグ:僕は、父親の影響でレゲエやラバーズ・ロックを聴いて育ったんだ。だから、このアルバムでレゲエ風の曲が出てきたとき“自分で歌える”って言ったんだよ。“誰が歌ってるんだ? ダミアン・マーリーか?”とか訊かれたけど、僕だよ。「She's On Fire」ではラップもしてる。“クレイグ・デイヴィッドはこんな歌い方しない”って思ってる人たちが、それを発見して驚く。楽しいね。このアルバムではヴォーカルやサウンドをいじって遊んでる。いつもの調子でいくのは簡単だよ。でも自信を持って新しいことに挑戦してみると、思いがけず素晴らしい結果を得られるものさ。

──アルバム・タイトル『Trust Me』に込められた思いは?

クレイグ:今回は誰の意見にも左右されず“これが自分だ”っていうアルバムを作りたかったんだ。正直言って、誰のために作るのか、どんな人が僕の音楽を聴くのかってことはどうでもよかった。でも、僕はすごくクリエイティヴになってたし、アルバムを作ることにエキサイティングしてた。だからいいものができないわけがない。“自分のやりたいようにやる、でも僕を信じろ”って思ったんだ。

──「Awkward」でフィーチャーされている女性シンガーについて教えてください。

クレイグ:リタ・オーラっていう女の子だよ。マーティンが、すごいヴォーカルだからバックに参加させたいって連れてきたんだ。16歳のすごくきれいな子だ。ヤング・ホイットニー・ヒューストンって感じさ。実際に声を聴いてみたら、あまりにもいいから、バックじゃなくてもっと歌ってくれって頼んだんだ。彼女は大物になるよ。才能豊かだし、まだ若い。いま一緒に曲を書いてるんだ。

──この先、ツアーが始まると思いますが、どんなショウを期待できますか?

クレイグ:来年、世界ツアーをやる。楽しみだよ。ブレイクダンスのほかには…ウソだよ(笑)。正直言ってプレッシャーはある。今回はいろんなバック・ヴォーカルを入れてるし、すごくソウルフルだからね。自分のヴォーカルの力量を試すことになる。“クレイグのライヴはすごい、彼の歌は本物だ”って言われたいんだ。

──BARKSを見ているファンにメッセージをお願いします。

クレイグ:みんなには本当に感謝してるよ。いつもサポート、ありがとう。日本へ行ってライヴをやるのが楽しみだ。1stシングル「Hot Stuff」それにニュー・アルバム『Trust Me』を気に入ってくれることを願ってる。またすぐに会おう。楽しんでくれ。ピース!

取材・文●Ako Suzuki, London

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