『IDEAS ~very best of KAN~』で知る、KANが周りからリスペクトされる理由
2007年にリリースされた作品の中から、音楽好きなら聴いておくべき作品を1つ紹介しよう。KANのベストアルバム『IDEAS ~very best of KAN~』だ。
●アルバム収録の新曲「IDEA」試聴
Mr.Childrenの桜井和寿やaikoなどなど、第一線で活躍している日本のミュージシャンの多くがKANをリスペクトしているのは、今更説明するまでもない事実。そして実際にKANの作品を聴くと、そんな数多くのKANフォロアーのヒット曲の断片が見え隠れするため、“この曲のルーツはここだったのか!?” と驚かされることになる。
ではなぜ、KANはこれほどまでにミュージシャンからリスペクトされる存在なのか? もちろんKANは、偉大なるメロディメイカーである。ただし、彼が支持されるのには、もっと深い理由がある。
手元にあるアルバム『IDEAS』の資料には、KAN本人の手による全曲解説が掲載されている。たとえば、BARKSでも試聴を用意している「サンクト・ペテルブルグ-ダジャレ男の悲しきひとり旅-」の解説を一部抜粋する。
“メロディ・歌詞ともに私の中で最も納得度の高い作品のひとつは、67年頃のPaul McCartney作品の影響を強く受けています。”
言われてみると、メロディーラインからコーラスワーク、曲の展開、どこをとってもポール・マッカートニーの音が混ざっているように聴こえる。楽曲でいうとザ・ビートルズ時代の「ペニー・レイン」あたりだろう。とはいっても、これは決してコピーといった類のものではなく明らかにKANの音。KANの音の中に、ポールの何かが見え隠れするのだ。
たとえば彼の大ヒットシングル「愛は勝つ」。『IDEAS』の中にも収録されているこの曲の解説にはこうある。
“私の存在を広く認知していただくキッカケとなったいろんな意味で重要な楽曲は、着想から作曲・編曲まで83年のBilly Joel作品「Uptown Girl」を明確な目標にし、できあがってみたらベートーベン的王道メロディに仕上がったストレートなロックナンバー。”
確かにビリー・ジョエルの「アップタウン・ガール」に通じるフレーズやコード進行、アレンジワークが感じられる。でもしかし、これもKANの世界観ありきでのこと。
また、今回のベスト盤を出すにあたって、KANはこう記している。
“過去の作品を片っ端から聴き直していると、いわゆる “ひらめいた” という感覚なんてのは年に何度もあるものではなく、そんな希少な “ひらめき” の勢いのまま曲が完成したなんてことも記憶になく、私の場合ほとんどの作品は “考えて考えて作った” んだなぁ、ということを再認識します。
つまり、このKANという秀才肌なアーティストは、すでに世に出ている数多くのアーティストの楽曲(特にビリー・ジョエルとポール・マッカートニー、そしてスティービー・ワンダー)から何かしらのヒントを得て、もしくはその楽曲自体を目標にして、楽曲を生み出していくタイプのアーティストなのだろう。しかし、大切なのは、これら指針となるアーティストやその楽曲をそのまま真似するのではなく、彼自身がそれら楽曲を一度噛み砕き、解釈して、そしてKANの音として要素を取り入れているという点。いうなれば、多くの先人たちやその作品を彼自身もリスペクトして、自分の血、肉として消化し、そして消化した要素を再び自身の作品に練りこんで放出できるのがKANなのだ。
ゆえに、KANの曲を聴くと、どこか洋楽のような気がする。日本人KANが(本人はパリジャンになりたかったのかもしれないが)、日本語で歌っているにも関わらず、どこか洋楽。しかもかつてどこかで触れたことがある名曲の香りがエスプレッソのように香る。多くのミュージシャンがKANを敬愛するのは、自分たちの音楽のルーツをKANの中に見ることができるから。もっといえば、KANの音には、かつて自分の憧れたアーティストたちと同じ響きがするから。さらにいうと、ここまで他のアーティストのサウンドを自己の音楽遺伝子レベルまでに落とし込んで、自分の作品の中に組み込むことができるという彼の才能への羨望が、リスペクトという形となっているのではないだろうか。
今回はサウンドについて触れたが、KANは歌詞も秀逸だ。先に挙げた「サンクト・ペテルブルグ-ダジャレ男の悲しきひとり旅-」は、タイトルどおり歌詞の中にダジャレをふんだんに盛り込んでいる。にも関わらず、昔の別れた彼女のことを旅先で考える悲しき男の気持ちが、悲しすぎず寂しすぎず、切ないような切なくないような…そんな微妙な心情が、ダジャレ効果によって素晴らしいくらいにダイレクトに伝わってくるのだ。
KANの『IDEAS ~very best of KAN~』。B.ジョエルやP.マッカートニーやS.ワンダー、J.レノン、E.クラプトンなどなど、音楽が煌きとエナジーを存分に放っていた60年代から80年代のサウンドが好きな人にこそ、ぜひ手にとってもらいたい1枚である。もちろん、Mr.Childrenの名曲「Over」が好きな人も(理由はアルバムを聴けばわかる!)。
なお、KANは2月よりバンドライヴツアー<NO IDEA>を全国で行なう。
●アルバム収録「サンクト・ペテルブルグ-ダジャレ男の悲しきひとり旅-」試聴
●KAN BAND LIVE TOUR <NO IDEA>チケット情報
●『IDEAS ~very best of KAN~』などのCD情報
●KANオフィシャルサイトにはさらに試聴音源も!
●アルバム収録の新曲「IDEA」試聴
Mr.Childrenの桜井和寿やaikoなどなど、第一線で活躍している日本のミュージシャンの多くがKANをリスペクトしているのは、今更説明するまでもない事実。そして実際にKANの作品を聴くと、そんな数多くのKANフォロアーのヒット曲の断片が見え隠れするため、“この曲のルーツはここだったのか!?” と驚かされることになる。
ではなぜ、KANはこれほどまでにミュージシャンからリスペクトされる存在なのか? もちろんKANは、偉大なるメロディメイカーである。ただし、彼が支持されるのには、もっと深い理由がある。
手元にあるアルバム『IDEAS』の資料には、KAN本人の手による全曲解説が掲載されている。たとえば、BARKSでも試聴を用意している「サンクト・ペテルブルグ-ダジャレ男の悲しきひとり旅-」の解説を一部抜粋する。
“メロディ・歌詞ともに私の中で最も納得度の高い作品のひとつは、67年頃のPaul McCartney作品の影響を強く受けています。”
言われてみると、メロディーラインからコーラスワーク、曲の展開、どこをとってもポール・マッカートニーの音が混ざっているように聴こえる。楽曲でいうとザ・ビートルズ時代の「ペニー・レイン」あたりだろう。とはいっても、これは決してコピーといった類のものではなく明らかにKANの音。KANの音の中に、ポールの何かが見え隠れするのだ。
たとえば彼の大ヒットシングル「愛は勝つ」。『IDEAS』の中にも収録されているこの曲の解説にはこうある。
“私の存在を広く認知していただくキッカケとなったいろんな意味で重要な楽曲は、着想から作曲・編曲まで83年のBilly Joel作品「Uptown Girl」を明確な目標にし、できあがってみたらベートーベン的王道メロディに仕上がったストレートなロックナンバー。”
確かにビリー・ジョエルの「アップタウン・ガール」に通じるフレーズやコード進行、アレンジワークが感じられる。でもしかし、これもKANの世界観ありきでのこと。
また、今回のベスト盤を出すにあたって、KANはこう記している。
“過去の作品を片っ端から聴き直していると、いわゆる “ひらめいた” という感覚なんてのは年に何度もあるものではなく、そんな希少な “ひらめき” の勢いのまま曲が完成したなんてことも記憶になく、私の場合ほとんどの作品は “考えて考えて作った” んだなぁ、ということを再認識します。
つまり、このKANという秀才肌なアーティストは、すでに世に出ている数多くのアーティストの楽曲(特にビリー・ジョエルとポール・マッカートニー、そしてスティービー・ワンダー)から何かしらのヒントを得て、もしくはその楽曲自体を目標にして、楽曲を生み出していくタイプのアーティストなのだろう。しかし、大切なのは、これら指針となるアーティストやその楽曲をそのまま真似するのではなく、彼自身がそれら楽曲を一度噛み砕き、解釈して、そしてKANの音として要素を取り入れているという点。いうなれば、多くの先人たちやその作品を彼自身もリスペクトして、自分の血、肉として消化し、そして消化した要素を再び自身の作品に練りこんで放出できるのがKANなのだ。
ゆえに、KANの曲を聴くと、どこか洋楽のような気がする。日本人KANが(本人はパリジャンになりたかったのかもしれないが)、日本語で歌っているにも関わらず、どこか洋楽。しかもかつてどこかで触れたことがある名曲の香りがエスプレッソのように香る。多くのミュージシャンがKANを敬愛するのは、自分たちの音楽のルーツをKANの中に見ることができるから。もっといえば、KANの音には、かつて自分の憧れたアーティストたちと同じ響きがするから。さらにいうと、ここまで他のアーティストのサウンドを自己の音楽遺伝子レベルまでに落とし込んで、自分の作品の中に組み込むことができるという彼の才能への羨望が、リスペクトという形となっているのではないだろうか。
今回はサウンドについて触れたが、KANは歌詞も秀逸だ。先に挙げた「サンクト・ペテルブルグ-ダジャレ男の悲しきひとり旅-」は、タイトルどおり歌詞の中にダジャレをふんだんに盛り込んでいる。にも関わらず、昔の別れた彼女のことを旅先で考える悲しき男の気持ちが、悲しすぎず寂しすぎず、切ないような切なくないような…そんな微妙な心情が、ダジャレ効果によって素晴らしいくらいにダイレクトに伝わってくるのだ。
KANの『IDEAS ~very best of KAN~』。B.ジョエルやP.マッカートニーやS.ワンダー、J.レノン、E.クラプトンなどなど、音楽が煌きとエナジーを存分に放っていた60年代から80年代のサウンドが好きな人にこそ、ぜひ手にとってもらいたい1枚である。もちろん、Mr.Childrenの名曲「Over」が好きな人も(理由はアルバムを聴けばわかる!)。
なお、KANは2月よりバンドライヴツアー<NO IDEA>を全国で行なう。
●アルバム収録「サンクト・ペテルブルグ-ダジャレ男の悲しきひとり旅-」試聴
●KAN BAND LIVE TOUR <NO IDEA>チケット情報
●『IDEAS ~very best of KAN~』などのCD情報
●KANオフィシャルサイトにはさらに試聴音源も!
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