永遠のポップスたる宿命的サウンドを具現化した、MANISH

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MANISHは、高橋美鈴、西本麻里の2人で構成されたポップ・デュオ。彼女たちがデビューしたのは1992年。トレンディ・ドラマ全盛時代、“女性”が確かな主張を持ち始めた時代の幕開けでもあった。“女性らしさ”を肯定しつつ、より輝く自分を演出する為の手段をいかにして得るかがテーマだった時代。その空気に見事マッチしたのが、MANISHのサウンドだった。

小さい頃から“歌手”に憧れ、デビュー直前まで“発声練習”を近所の公園で欠かしたことがなかったという高橋美鈴、そして高校を卒業する頃から作曲活動を始め、何曲もの作品を作り溜めていた西本麻里。プロデューサー、長戸大幸を介して出会った二人は、当初、お互い全く異なる印象を抱いてたそうだ。

「きっと仲良くなれないだろうな、って思ってました(笑)。一緒に音楽をやってる内に、私達は似たもの同士過ぎるなと」(高橋)

「私は逆。女の子だけのユニットってうまくいかないって説がありますけど、一緒にいて私達はトラブルが起きないんですよ。物事に対して無頓着な部分とかよく似てるんで、上手くいくなあと」(西本)

“MANISH”というユニット名は長戸が名付け親。身長の高い二人を見て「まるで男子みたいだね。」という直感から“ちょっとボーイッシュな女の子”を意味するこの響きあるネーミングに。その言葉のイメージが二人には程よくマッチしたせいもあるだろう。彼女達はデビュー時から注目される存在になっていく。

1992年12月、デビュー・シングル「恋人と呼べないDistance」に続いて、翌年1月にリリースされ、パリ・ダカールラリーのテーマソングとして起用された「声にならないほどに愛しい」がオリコンチャート26位を記録、続く「素顔のまま KISSしよう」も34位にランクインし、デビュー半年にして早くもネクストブレイクを狙える位置に辿り着く。そしてTBS「COUNT DOWN TV」オープニング・テーマ曲としてリリースされた「君が欲しい 全部欲しい」でオリコン初登場14位を記録、この年に1stアルバム『MANISH』を発表、オリコン最高位3位に輝いている。

1994年、年明け早々に発売された「もう誰の目も気にしない」ではオリコン初登場5位を記録、念願のトップ10入りを果たし、人気アニメ「スラムダンク」のエンディングテーマとしてO.A.された「煌めく瞬間に捕われて」では、再びベストテンに返り咲く等、彼女達の活動は順調だった。

1996年頃からは音楽性にも変化が現れ、より生音を織り込んだアナログな音触りへと変化してゆく。同年8月に発表された3rdアルバム『Cheer!』は、前2作の方向性を踏襲しつつも、より幅広い音楽性に食い込んだ意欲作だった。

90年代の半ばをすっと駆け抜け、そのきらめきを残したまま消えていったMANISH。彼女たちが残したサウンドは、変わっていく時代の中で現在も色褪せることなくその輝きを放っている。MANISHこそ、まさに永遠のポップスたる宿命的サウンドを具現化した奇跡的ユニットだったのだ。

◆「BEST OF BEST 1000」シリーズ ダイジェスト映像
https://www.barks.jp/watch/?id=1000020789


[楽曲解説]

1. 声にならないほどに愛しい

MANISHのブレイクポイントとなった2ndシングル。オリコンTOP100圏内に連続15週ランク・インし、ロング・ヒット。初登場62位から、7週目で最高位26位を記録。MANISHらしいロックな1曲。さらに、作詞とコーラスにはWANDSの上杉昇と当時のビーイング制作陣の総力を結集。

2. 煌めく瞬間に捕われて

1995年2月6日リリースの10thシングル。 「もう誰の目も気にしない」以来、久々のトップテン・ヒットとなった今作は、タイトル通りまさに“キラめいた”という言葉が相応しい好ポップ・ソング。作曲は川島だりあ。小気味良いビートにのったセンチメンタルなメロディ展開は、MANISHのイメージともベストフィットし、存在感を聞かせている。ただし、アレンジ面では難航し、7パターンものヴァージョンが制作され、最もシンプルな?今作ヴァージョンに落ち着いた。

3. 眠らない街に流されて

前作「君が欲しい 全部欲しい」よりわずか2ヶ月弱というペースでリリースされた1993年7月28日リリースの5thシングル。このメロディー、この爽快感、これこそがビーイング・サウンドだ。 オリコン最高位18位。

4. もう誰の目も気にしない

1994年1月10日リリースの7thシングル。オリコン初登場5位、MANISHにとって初のTOP10ヒットは、初のバラード・シングル。作曲は、西本麻里。また、当時10代だった高橋のヴォーカリストとしての成長ぶりも聞き逃せない。バラード部の聞かせ所とサビメロ部のドラマティックな展開での聞かせ所とのコントラストもGood。これでもかという位大仰で、そこがまたカッコいい渾身の一曲。

5. 君が欲しい 全部欲しい

1993年6月2日リリースの4thシングル。 「フレーズで難しいところがあっててこずりました。低い音を多用していて、音域的に苦手なところなので辛かったです。いちばん高い部分もやっぱり辛かったんですけど、やっていくうちになぜか出るようになるんですよね」(高橋) そんな生真面目な姿勢が当然のごとく楽曲全体に表れていて清々しい。その波動はセールス面でも好影響を及ぼし、オリコン初登場14位、いきなり自己最高位を記録。ちなみに同年4月にリリースされた1stアルバム『Manish』はオリコン最高位3位を記録。デビューから1年弱で早くもアーティストとして認知され始めた。楽曲中の印象的なサックスは、DIMENSIONの勝田一樹。

6. 明日のStory

1994年5月25日リリースの8thシングル。ひたむきなMANISHの姿勢が端的に表現された1曲。特に歌詞面では大きく反映されており、“半端な気持ちで流されたくない”“素直な気持ちで会って笑いあおう”という言葉に励まされたリスナーも少なくなかったはず。“MANISH”らしさがうまく表現されたきらびやかなポップシングル曲。オリコン最高位19位。

7. 走り出せLonely Night

“走り出せLonely Night”というキャッチーなフレーズ、そこに絡む、ポップで泣かせるメロディ。日常生活の中で誰もが感じる、等身大の喜怒哀楽をすんなりと歌詞にのせて表現出来たのは、90年代初期、MANISHに肩を並べる者はいなかったかもしれない。必要最小限の楽器編成で、メロディー自体の魅力を最大限に活かし、聴き手に届ける事が出来たのも、またMANISHならでは。また、プログレッシヴ・ロック調のキーボードプレイもこの曲では聞き物だ。作詞は高橋美鈴。オリコン最高位18位。

8. だけど 止められない

1993年11月3日リリースの6thシングル。作詞:高橋美鈴、作曲:西本麻里という、MANISHの2人による初のシングル楽曲。ハードなギターとキーボードのフレーズの強烈な絡みで始まるこの楽曲、70年代ハードロックの重厚さを知る向きにはたまらないアレンジだ。だからといってメロディはいつものポップなMANISH節が健在、聞き馴染みのあるJ-POPに仕上げているそのサジ加減も絶妙だ。オリコン最高位17位。

9. 素顔のまま KISSしよう

前作「声にならないほどに愛しい」がロング・ヒットを記録する中、わずか1ヶ月のタームでリリースされたのが本作。作曲は西本麻里(初シングル採用楽曲)。この辺りから西本自身の作曲ペースが急ピッチで上がってきて、この楽曲の音入れでスタジオに入る頃には30曲以上のストックがあった。この曲は1992年秋にレコーディングされたのだが、この時期はほぼ2週間に6曲もの作品がレコーディングされていた。もともと2ndシングルのカップリング作品として予定されていたが、予想以上の出来に急遽シングルとしてリリースが決定。今、聞いても非常に華やかな新鮮さをもったナンバーだ。オリコン最高位34位。

10. 恋人と呼べないDistance (130 Brand-New Mix)

1992年12月20日リリースのデビュー・シングル。ユーロビートを基調としつつ、ハードロックのテイストをうまく盛り込んだキャッチーなサウンドは、この時期のビーイングナンバーらしい仕上がり。楽曲的には、ボーカルはまだまだ初々しさを感じさせるが、瑞々しさいっぱいのサウンドはデビュー時から一貫している。

文:斉田 才
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