増田勇一のライヴ日記 2007年1月18日(金)ナイトウィッシュ@東京・恵比寿リキッドルーム

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やはり1月はメタル月間なのか。昨年9月にリリースされた最新作、『ダーク・パッション・プレイ』をひっさげて約3年ぶりに来日を果たしたナイトウィッシュを観た。

どうやら当日券が完売に至ったようで、リキッドルームのフロアはぎっしりと人、人、人で埋め尽くされた状態。多くのオーディエンスの興味と好奇心は、まさに新生ナイトウィッシュの顔というべき新シンガー、アネットに開演前から向けられていたはずだが、暗転直後、彼女が満面の笑みを浮かべてステージに登場したその瞬間から、場内はずっと穏やかで柔らかな空気に包まれていた。

詳しい演奏内容などについては、今後、あちこちの音楽誌などで報じられることになるはずだが、とにかくそのアネット登場の瞬間に象徴される、明るくてまばゆいトーンのライヴだった。このバンドの看板であり続けてきた前任のターヤと比較した場合、確かにオペラティックな要素は減少しているし、ある種の物足りなさを感じる人たちも少なからずいることだろう。が、事実、アネットにはまだまだカリズマ性は足りないかもしれないけども、彼女にしか作ることのできない空気感というものが確実にある。アクの強い歌い手ではないが、少なくとも彼女は“自分の歌”を歌うことについては完璧だし、良い意味での軽やかさも魅力だ。

そして何よりも、深刻さとは無縁の明るいキャラクターがいい。語弊のある言い方かもしれないが、愛嬌があるのだ。母国語ではないがゆえの、わかりやすいシンプルな英語のMCも、そうしたキャラによく似合う。もう一人のフロントマンというべきマルコについてもそれは同じ。たとえば日本でも「東北弁で話しかけられると、なんだかホンワカした気分になる」ということが多々あるが、彼らが観衆に向けて何かを語りかけようとするたびに、僕はそれと似たような感覚をおぼえた。ウォッカを呑みながらプレイするマルコを揶揄したアネットが「しかもスウェーデン産のウォッカを」と言った際、小さく起こったブーイングと野次(主にフィンランド人の観衆から発生したものと思われる)に、笑顔のまま“軽い怒り”を表現してみせた彼女(バンドはフィンランドを拠点としているがアネット自身はスウェーデン人)は、なかなかの演技派でもあるかもしれない。

もうひとつ笑ったのは、開演前、場内アナウンスでバンド名が明らかに「ナイトウォッシュ」と読まれていたこと。フロアでもあちこちで失笑が起きていたが、こんな間違いがなくなるのが時間の問題であることは、今回の公演の盛況ぶりをみれば明らかだろう。次回は、もっと大きな開場で観てみたいものである。昨年、『LOUD PARK 2007』の際、取材のために来日していたフィンランド人ジャーナリストが、「ナイトウィッシュは大切なものを失ったが、もっと大きなものを手に入れることになると思う」と語っていた。今は僕も、まったく同感である。

増田勇一
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