チープ・トリック、リック・ニールセン直撃取材(前編)

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2008年4月24日まで、残すところちょうど1ヵ月。いよいよ間近に迫ってきたチープ・トリックの武道館公演。それに先駆けて、彼らの最新情報から過去の逸話まで、あれこれお届けしていこうと思うのだが、まずは去る2月、今回の公演決定発表に際して単身来日していたリック・ニールセンのインタビューを2回にわたってお届けすることにしよう。

雑誌の記事ならばカットするような漫才みたいな掛け合いも、この場では敢えてすべて掲載。しかし、そんなやりとりのなかに実は秘話が盛り込まれていたりするから、この人は侮れないのだ。もちろん侮ったことなど一度もないけども。

――こうして面と向かって話をお聞きするのは久しぶりですよね。アルバムが出るたびに電話インタビューなどはさせていただいてますが。(めずらしく敬語? なにしろ相手はひとまわり上!)

リック・ニールセン:ああ、おまえさんのことはちゃんと憶えてるよ。なにしろいつも質問が意地悪だからな(笑)。

――こんなにやさしい相手をつかまえて何を言ってるんですか! ちなみにこのインタビューが今回の来日取材の1本目だとか。『at武道館』に収められているMCのなかで、あなたは「日本に着いて最初にしたのは日本製ギターの購入」なんてことを言っていますけど、今回はまず、何をしました?

リック:ジャパニーズ・ステーキを堪能した。しかも神戸ビーフだ(笑)。それはともかく、本当に到着して最初にしたのは入国管理での指紋照合検査。日本では初めての経験だった。で、今回だって昨夜はまずギターを買いに行きたかったけど、もう遅くて店が閉まっていたから断念した。今日、この取材が終わったらギター・ショップに行くつもりなんだ。

――すみませんね。大切な買いものの前に時間をいただいて(笑)。日本には何度もいらしてるあなたですが、この国は変わったなと感じます?

リック:1978年以来、かれこれ15回ぐらい来ているのかな。ああ、確かに変わったとは思う。今はガイジンが多すぎる(笑)。俺は1978年だって今だってガイジンだけど、昔はガイジンが珍しかったのに、今の東京では日本人を探すのが難しいぐらいだ(笑)。でも人々が素晴らしいことは変わらないし、テクノロジーが素晴らしいのも同じこと。交通量が多いのもね(笑)。初めて来たとき、ウォークマン登場以前の小型テープレコーダーを買った。ソニー製の、おそらくプロ仕様のやつ。当時にしては新しかったんだ。ベータのビデオもね。そういえば『at武道館』のジャケ裏の写真について言っておきたいことがあるんだけど。

――何です?

▲確かに黄色く見えるリックのギター。サインの痕跡は見なかったことにしておいて(笑)。
リック:あのギターは俺用に作られたものでね。写真ではイエローに見えるんだけど、実際の色はブルーなんだ。青いギターに黄色い照明が当たってるわけさ。グレコの青いリック・ニールセン・モデルだ。おかしいのは当時の来日公演のツアー・ブックに、すでにあのギターの広告が出ていたってこと。俺がもらう前にね(笑)。日本人の仕事の早さを実感させられる瞬間だった(笑)。

――ははは! ちなみに初来日公演のとき、僕は高校生でした。

リック:俺もだよ(笑)。

――冗談はともかく、十代の僕としては、ブルージーな「キャント・ホールド・オン」などは正直、あまり好きになれなかった記憶があります。それが年月を経て、『at武道館』のコンプリート盤で聴く頃になると全然感じ方が違っていて。

リック:それは興味深い話だね。ま、俺自身は、当事者だから自分たちのポップ・サイドもヘヴィ・サイドも理解していたわけで、どちらも自分にとっては自然な姿だった。チープ・トリックは最初からそういうバンドだったわけさ。どんな曲だって自分自身で書いてたからね。でも、実はそのことで悩んでいたこともあったんだ。

――その話は初耳ですね。いったい何について悩んでいたんです?

リック:1stアルバムの曲はすべて俺が作曲したものだけど、当時、俺はトムにこう訊いたことがあるんだ。「ソングライターとして、俺は曲の種類によっては違うペンネームを使うべきだろうか?」ってね。たとえば「バラッド・オブTVヴァイオレンス」を書くような人間と「マンドセロ」を書いた人間とが同じだというのは、リスナーにとって信じ難いことだろうし、そこで信憑性が問われるようなことになるんじゃないかと感じたからさ。あまりにも両極端すぎるからね。でも結果、トムは「ノー」と言ってくれて、俺自身もそうした愚かな選択はせずに済んだわけだけども。でも、常々気がかりではあったんだぜ。ヘヴィな曲が好きなファンは、俺が「甘い罠」にクレジットされていたら、「あいつ、こんな軽い曲を書きやがった」と見ることになるんじゃないかってビクビクしてた。今にして思えば、もう少しラクな考え方をしてても良かったんじゃないかと思うけどもね。イージーでポップな曲も書けば、ヘヴィな曲も書く。それが俺だから。俺にはいくつもの側面が必要なんだ。だけど、俺がすることはすべてがクールなんだ。おまえさんもよーく知っているようにね(笑)。

――はいはい。よーく存じておりますとも(笑)。

この続きは、また改めて。

増田勇一

<チープ・トリックat武道館AGAIN!>
4月24日(木)東京・日本武道館
開場:18時/開演:19時
[問]H.I.P. http://www.hipjpn.co.jp/pc/
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