クラシック+ヒップホップ×バイオリン=Nuttin But Stringz

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多くの音楽ファン、業界人から驚きと大きな期待に迎えられたNuttin' But Stringz。クラシック音楽の名門:ジュリアード音楽院を卒業したトーリー、ダミアンのエスコバー兄弟によるユニットだ。

専攻したクラシック音楽と、敬愛するヒップホップ/ソウルを融合させた新感覚のバイオリン・ミュージックは、長い期間、NYの地下鉄の中で演奏活動をしていただけに即興性も抜群だ。その独特な音楽性とパフォーマンスは全米ではyoutubeを中心に広まり、あっという間に時のユニットとして知られることになった。

Nuttin' But Stringzの日本デビュー・アルバムは5月21日にリリースとなる。



──ネットを通じて、パフォーマンスを観たけど、すごく衝撃的だった。バイオリンとヒップホップを融合させたパフォーマンスを披露するなんて!と。同じ衝撃を受けた人が世界に多数いて、すごい盛り上がりになっているよね。

トーリー:いい感じの反響をもらってるよ。Nuttin' But Stringz(NBS)を通じて、新しい音楽の魅力に出会った!とか。オレ達は、独自の世界を作れたんだな、って思っているよ。

ダミアン:ああ、何千・何万人の規模で新ムーブメントを作れたような気がするよ。

──そもそも、音楽を始めたきっかけって?

トーリー:5年前くらいかな。それまでは特にやりたいことなんてなく、このままの状態だったら、悪い道へ足を踏み入れそうな感じだった。でも、絶対に足を踏み外したくなかったから、何かできることはないか?探した結果、音楽という道を選んだんだ。

ダミアン:まぁ、音楽を始めるまではさまざまな紆余曲折があるんだけどさ。それは追々話をすることにして。とにかくオレ達が生まれたニューヨーク・クイーンズ地区ってのは、酷い環境だったんだ。殺人や暴力、窃盗…さまざまな犯罪が横行していた。オレ達はそんな環境からいち早く抜け出したかったんだ。でも抜け出すためには、何かで成功を掴むしか方法はない。そこで、オレ達が選択したのが音楽だったのさ。

──じゃあバイオリンって、5年前くらいから始めたの?

トーリー:いや。小学4年生の時なんだ。音楽の授業でバイオリンを弾くことになって。オレはその時うまく弾くことができなかったんだけど…。

ダミアン:オレは兄貴がバイオリンを持って家に帰ってきたのを見て、すごく惹かれたんだ。これを弾いてみたい!って。それで小学4年にあがり、始めて以来、ずっと弾き続けているんだ。

トーリー:オレはダミアンの一生懸命な姿に触発されて、再びバイオリンを持ち始めた、って感じなのさ。

──バイオリンではクラシックを演奏することが多いと思うんだけど、なぜヒップホップ/R&Bのビートをあわせた音にしようと思ったの?

ダミアン:うん、オレはずっとクラシックを弾いてきたから、バイオリンをやるんだったらクラシックしかないと決めつけていた。ヒップホップやR&Bの要素をミックスさせようと提案したのは兄貴のほうなんだ。

トーリー:オレはフリースタイルで、ヒップホップとかやってたからね。それをバイオリンにあわせたら、面白いことになるんじゃないかって。つまり二人の異なる感性が重なり合って、今のNBSが生まれたんだよ。

──この音楽スタイルを形成するにあたって、影響を受けたアーティストは?

ダミアン:特にないね。好きなアーティストはいっぱいいるけど、彼らがオレ達のスタイルに影響を与えたか?と言われるとそうではないと思う。

──さっき話していたけど、地元クイーンズの街の空気が、音楽に影響を与えることは?

ダミアン:すごくあるね。オレたちの音楽って、日常の生活のなかから生み出されていくものというか。リアルな思いを音楽に投影していきたいんだ。だからクイーンズ時代はもちろん、それ以降の現在まで、すべての生活が音楽に結びついていくんだ。

トーリー:だから、最近はいろんな人から曲を作ってほしいと言われるんだけど。そう簡単には作れないのさ。だって、オレたちの音楽は生活が奏でるものなんだから。

──そのなかでもクイーンズの街って、二人のなかで特別な存在感を持っているのでは?

トーリー:そうだね。結成当時は、クイーンズの地下鉄駅の構内でパフォーマンスをして、力をつけていったから。あそこは、オレ達の音楽的故郷だ。この時代がなければ、今は存在しないね。

──デビューアルバム『Struggle from the Subway to the Charts』は、タイトルどおり、そんなクイーンズ時代から現在のミュージシャンとしての生活に辿り着くまでの、二人の闘いの日々を描いている感じがした。

ダミアン:このアルバムはオレ達の歴史だ。だから途中の曲から聴き始めたり、好きな曲だけを聴いてもらいたくない。1曲目から順番にオレたちの軌跡を描いているんだ。今後も、そういうストーリー性のあるアルバムを作っていきたいと思っているよ。

トーリー:1曲目の、友人が殺された時のショックを綴ったものからスタートし、やがて音楽チャートの1位を目指すための意思を持っていくまでの、心の動きを、途中で恋愛やパーティ、さらには学校で学んだ音楽の魅力まで、さまざまな物語を交えながら伝えているんだ。

ダミアン:結果、オレ達がどういう意思を持った人間であるのかかわかる内容になっているのかな。

──確かに。聴いていると絶望の淵から這い上がり、輝かしい未来を手に入れるまでの二人の心境が伝わってくる構成になっているよね。

ダミアン:やったね!オレ達いい仕事したぜ(笑)。

──では収録曲について教えて。まず1曲目の「Broken Sorrow」。これはさっき言ってたけど、友人が殺されてしまったことへの怒り・悲しみを表現した曲だそうだけど。そういう辛い事件を思い起こして音楽にするのって、大変?それともセラピーみたいな感じだった?

トーリー:演奏していると、心が浄化されていく感じなんだよ。たいてい親しい人が殺されたりすると、犯人に対して復讐をしようとか、ネガティブな感情が先に浮かんでくる。でもそれをやったら、またどこかで新しい憎しみが増えるだけで、何も解決しない。さらに事態は悪い方向へ進んでいく。オレたちは、その憎しみを音楽にぶつけたことで、恨みが消えたというか。もうこんな悲しい出来事を社会に増えさせてはいけない、という気持ちになっていったんだ。

ダミアン:世界には、同じような憎しみ・悲しみを抱えている人が多くいると思う。この曲がそういう人の心のなぐさめ・励ましになってくれたら、って願うよ。

──3曲目の「Thunder」は、そんな悲しみから立ち直り、音楽を通じて稲光を起こしてやろうっていう二人の気合いを感じるエモーショナルなナンバーだね。これは全米学生バスケットボール選手権のテーマソングに起用されたそうだけど、この勢いのある感じは、スポーツのテーマソングにぴったり。

トーリー:この曲はエモーショナルというより、すごく楽しい気分のなかで作った曲なんだ。

ダミアン:電車に乗っている時に、メロディが沸いてきたんだけど。当時、音楽制作のフォーマットなんて何にも知らなかったからさ。思い浮かんだアイデアをとにかく詰め込んで作ったよ。だから完成するまでに2、3年くらいかかったんだ。

トーリー:でもさ、オレ達の音楽ってリリックがほとんどないから、リスナーによっていろんな捉え方ができるんだよなぁ。「Broken Sorrow」だって、失恋ソングと感じている人もいるし。つまり、オレ達はいろんな感情を揺さぶる音楽を作っているってことだな!

──だと思うよ。二人のバイオリンは、すっかりヴォーカルの役割を果たしているからね。特に10曲目「EGYPTIAN IN THE NIGHT」は、バイオリンがラッパーみたいなフローを響かせているし。

トーリー:実は、この曲はすごく気に入っているパーティ・チューンなんだ。日本へ来る飛行機のなかでも聴いていたんだけど「何て素晴らしい曲を作れたんだ!」って我ながら感動していたよ(笑)。構成もしっかりしているし、演奏のバランスも最高。素晴らしい1曲だよ!

──また、バイオリンだけでなく、ヴォーカルも曲によっては披露しているね。ヴォーカルとバイオリンを調合させるためにこだわっていることは?

ダミアン:最初に曲のアイデアを決めるにあたって、ここにヴォーカルを入れたほうがいいとか、話し合いながら調合させていくのが基本なんだけど。まぁ、自然な流れで、最初に決めたことじゃないことをやることもあるし。特にルールってものはないね。

──ヴォーカルの役割分担ってある?

ダミアン:うん、あるよ。兄貴はポップなものを歌うのが得意だね。例えるならヤング・マイケル・ジャクソンって感じ!? オレは、90年代の良質なR&Bっぽい曲を歌うのが好きなんだ。

──ライヴでは、さらにダンス・パフォーマンスまで披露する、エンターテイナーぶりを発揮。

トーリー:バイオリンを弾くにあたってもそうなんだけど、すべてはフィーリングに導かれて音楽が生まれるんだ。つまり音楽を通じて感じたものをストレートに表現しているだけさ。だから演奏中に、ダンスが混ざってきたりしたのは、魂のおもむくままに音楽と向き合った結果と言えるね。

──なるほど。

トーリー:今回のアルバムでは、ヒップホップっぽいビートが多く流れていたから、ダンスも混じっていたけど。オレたちはもっといろんなタイプの引き出しがあるんだ。今後はいろんな音に挑戦し、いろんなパフォーマンスで人々を魅了させたい。

ダミアン:オレ達は、純粋なミュージシャンだと思うんだ。つまり何のカテゴリーにも属さない。だから今後はカントリーやジャズとかにも挑戦するかもしれないしね。

──二人ともクラシックをきちんと学んできたから、どんな音楽をやっても自分らしさがブレない、という確信がある?

トーリー:ああ。オレ達は基礎がしっかりしているから。どんな音になろうがNBSらしさって伝わると思うんだ。

──現代って、いろんな音楽ジャンルが存在していて、しかもそのジャンル間は断絶しているところがあるよね。NBSはその断絶した世界をつなげる橋のような役割になるのかな?と期待してるよ!

ダミアン:オレ達は、すでにそれを実行していると思うんだ。今後ももっと、いろんな音楽と繋がっていきたいね。

──現代って、例えばカニエ・ウェストをはじめ、ストリングスを取り入れた音楽を作るアーティストが、いろんなジャンルに存在しているけど。彼らとNBSの決定的な違いは?

トーリー:カニエなどは、ストリングスを自分の音楽をさらに盛り上げる効果として使用しているけど。オレ達はその逆。バイオリンが最大の武器であることが、オレたちのオリジナリティであり、強みかな。

──今後はどんなアーティストに?

ダミアン:誰もが楽しめる音楽を作りたいんだ。しかも、そこから何か新しい音楽の魅力を知ってもらえるきっかけになるようなものを。個人的には今後はロックに挑戦したい。フー・ファイターズと共演できたら、最高だね!

トーリー:フォール・アウト・ボーイも面白そうだぜ(笑)。

──日本のリスナーにも、きっとNBSの魅力が伝わると思う。

ダミアン:だといいね。来日中にマッサージに連れていってもらったんだ。すごく気持ちよかったよ。また、受けにいきたいな(笑)。

トーリー:オレはショッピングが楽しかったな。クールなアイテムがいっぱいあったから、今度はゆっくり楽しみたいんだ。

──日本の女の子の印象は?

トーリー:とってもチャーミングだし、キレイだね。声をかけたくなる子がいっぱいいたよ(笑)。

──じゃあガールフレンド候補になる可能性も?

ダミアン:うーん。彼女じゃなければ、アリかも…。

インタビュー:松永 尚久
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