チック・コリア&上原ひろみ Concert<デュエット>レポート

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2007年9月のブルーノート東京公演で話題をさらった夢のコンビ、チック・コリア&上原ひろみが、今度は武道館のステージに舞台を移し、再び熱いステージを見せた。

2008年4月30日、一夜限りで行われた<チック・コリア&上原ひろみ Concert「デュエット」>は、ジャズコンサートとしては異例の武道館公演。ステージには、フルコン(フルコンサート・グランドピアノ)2台が互いの窪みを補うように向かい合わせに置かれているのみで、ドラムスやギターアンプなどの見慣れたバックバンドの機材などは一切なし。潔いほどシンプルなステージ構成だ。その左右のスクリーンには、演奏中の両者の表情や指が、対比されるように映し出される。

演奏された曲は、昨年のブルーノート公演を収めたライブ盤『Duet』とほぼ同じ。チック、上原それぞれのオリジナル曲のほか、ビル・エヴァンスの「Very Early」、ガーシュインの「Summertime」、ビートルズの「The Fool On The Hill」といったスタンダード曲も織り交ぜつつ進んでいく。

途中、パーカッションを交えたり、ピアノの弦をこすったり叩くなど、二人の自由なパフォーマンスも飛び出し、観客を飽きさせない。最後のアンコール「Spain」のキメでは観客が一斉に手拍子。全9曲のステージは興奮のうちに幕を閉じた。

演奏中、いたずらっ子のような表情で、チック・コリアを挑発しまくる上原ひろみ。一方、そんな“やんちゃ娘”を大きな器でどっしりと受けとめ、深みのある音で支える巨匠チック・コリア。ときおり顔を上げて上原ひろみの強い視線に笑みで返す。2人の姿は、まさに“親子”のよう。

緊張感溢れるインプロビゼーションの応酬あり、ピアノのふくよかな音色を存分に聴かせてくれるしっとりとした演奏あり、怒涛のユニゾンで納得させてくれるところもあり、ジャズならではの技巧とフレーズが随所に散りばめられた楽しいデュオだった。バックバンドがいない点を補って余りある、二人のやりとりの妙をたっぷり聴くことができ、ピアノデュオ@武道館という異例のコンサートは大満足のうちに幕を閉じた。

2003年のデビューからわずか5年。この大舞台で堂々と巨匠と肩を並べるところまで駆け上がった上原ひろみの座右の銘は、「努力、根性、気合」という。面白いように動く彼女の指は、並々ならぬ日ごろの鍛錬の結果得たものにほかならない。この超絶的な技巧と、チック・コリアと堂々を渡り合ったという自信が、彼女をより高いところへ導くことだろう。

これまではオリジナルを中心に活動を続けてきた彼女だが、5月28日には初のスタンダード曲集『Beyond Standard』をリリース。今後の展開がますます楽しみだ。

●コンサート写真をもっと見たい人はコチラ
https://www.barks.jp/feature/?id=1000039984

<セットリスト>
1.Very Early
2.Summertime
3.Childrens Song #12
4.Place To Be
5.Humpty Dumpty
6.The Fool On The Hill
7.古城、川のほとり、深い森の中
8.Bolivar Blues
9.Spain

撮影:広瀬誠

●上原ひろみオフィシャルサイト
http://www.hiromiuehara.com/

●ユニバーサルミュージック
http://www.universal-music.co.jp/jazz/
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