増田勇一の『フィンランド特集(3)』アリ・コイヴネン編part.3

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「5年後あたり、日本に移住しちゃうのも悪くないかも」──アリ・コイヴネン

前回は、入魂の2ndアルバム『ビカミング』のタイトルに込められた意味と、レコーディング秘話を披露してくれたアリ。いよいよこのインタビューも最終章突入ということになるが、3回にわたってお届けしてきたこの記事から、これまで彼に常につきまとってきた「フィンランドから突然変異的に出現したメタル・アイドル」といったイメージが少しでも払拭されることになれば幸いだ。

――『ビカミング』のアルバム・カヴァーでのあなたは、眼が血走っていて、ちょっと怖い顔をしてますよね。もしかして、そこにも「アイドルに見られたくない」という気持ちが反映されているんでしょうか?

アリ:うん、そうだよ。いつも笑顔の写真を欲しがられるんだけど、自分では、それが僕自身に相応しいイメージだとは思ってない。ぶっちゃけ、ファースト・アルバムのアルバム・カヴァーは好きじゃないな(笑)。あれじゃあポップ・アルバムだよ。今回にしても、ジャケットの表に僕の写真だけポンと載るようなのは、僕としては避けたかった。だけどレコード会社としては当然ながら「ひと目で誰の作品だかわかるようなものにして欲しい」というのがあるわけ。そこで「だったら顔のアップでも構わないけど、敢えて半分だけにして、しかも目が黒く見えるっていうのはどう?」という話になった。背景は炎と煙に包まれた都市。なかなかロックらしくて、いいアートワークになったと思うよ。

――ブックレット内の写真では、あなたは“一番”とプリントされたTシャツを着ていますよね?

アリ:うん。もちろん意味は知ってるよ(笑)。

――デビュー作の『フューエル・フォー・ザ・ファイア』は母国フィンランドのアルバム・チャートで文字通り“イチバン”を12週間にもわたって独走することになったわけですが。

アリ:素晴らしい出来事だったと思うよ。あのアルバムがリリースを迎えたとき、「お願いだからトップ10に入ってくれ!」って祈ってた(笑)。それが正直な気持ちだったよ。そしたらいきなり初登場首位で12週間独走。僕以外には、誰にもそんなことできてないんだ。異常だよ。たったひとつの例外はボン・ジョヴィのベスト・アルバムだけ。改めて思い返してみてもすごいことだと思うね。

――しかしこの『ビカミング』にとってのゴールは、チャートの首位を独走することじゃなく、「アリ・コイヴネンというバンドを世界のさまざまな国に連れて行くこと」じゃないかと思うんですよ。

アリ:そうあって欲しいね。僕自身、何よりもそれを望んでる。売り上げが2000枚だろうが200万枚だろうが僕の気持ちは変わらない。ただ、それを気に入ってくれる人たちがいて、その人たちがライヴに来て楽しんでくれるのなら、それで僕は満足なんだ。とにかくみんなにライヴを観に来て欲しいな。ステージこそが、僕が真価を発揮できる場所だから。

――今回は東京限定でのライヴだっただけに、観たくても観られなかったファンが日本にもたくさんいるはずだと思うんですよ。

アリ:今回会えなかった人たちには、次の機会には絶対に会えるようにしたいし、できるだけ早く戻ってきたいと思ってる。勝手なことを言うと、たとえば2ヵ月くらい日本に滞在して、その間毎晩ライヴをやるとか(笑)。そんなことが実際に実現可能かどうかはわからないけど、僕自身は何でもやるつもり。“日本で何かをする”というのは、僕自身が望んでることだからね。

――決して不可能なことじゃないと思うんですよ。実際、フィンランド国内でも、過去1年間で100本以上のライヴを消化してきたんですもんね?

アリ:うん。それと同じことが日本でできたら素晴らしいなと思う。もっと言っちゃえば、たとえば5年後あたり、日本に移住しちゃうのも悪くないかも(笑)。フィンランドは常に寒いし、気候面ではホントに最悪なんだ。日本にも雨の季節があったり、夏が蒸し暑かったりするというのは聞いてるけど、僕にとってはたいしたことじゃない。これからまた何時間も飛行機に乗ってフィンランドに帰るわけだけど、本音を言えばもっと長くここにいたくてたまらないんだ(笑)。

大の日本びいきになってしまったアリ・コイヴネン。きっと今頃はこの国を恋しく思っているに違いない。さて、彼のインタビューはこれにて終了ということになるが、フィンランド特集はまだ終わらない。次回はシュトゥルム・ウント・ドラングのインタビューをお送りする予定なのでお楽しみに。メンバー全員が90年代生まれという修学旅行気分丸出しの5人と、60年代生まれの筆者との会話は果たしてキチンと成立するのか?

増田勇一
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