ビリー・ジョエル、シェイ・スタジアム公演2日目最終日レポ

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2009年に取り壊されることが決定しているシェイ・スタジアム、その最後の公演となるビリー・ジョエルのLast Play At Shea。2008年7月16日の初日はトニー・ベネット、ジョン・メイヤー、ドン・ヘンリー、ジョン・メレンキャンプと豪華ゲストが参加したが、2日目であり最終日でもある7月18日の公演では前夜に引き続き超豪華アーティストが次々登場し、連夜の奇跡の夜となった。

ビリーは20:50ちょっと遅れて登場し、アメリカ国家斉唱でスタート。「マイ・ライフ」のあと完全ソールドアウトの55000人の大観衆に向かって「Thank you! Goodevening Shea!この場所は取りこわされるけど、私に世界一素晴らしい仕事をさせてくれたことに感謝したい!」とメッセージ。16日にもまして最初から絶好調で素晴らしいビリーのパフォーマンスに、観客は最初から最後まで大合唱。

10曲目の「ニューヨークの想い」では前夜に引き続きトニー・ベネットが登場。またもや80歳以上という年齢を感じさせないシャウトで熱唱。歌い終えた彼に“Tony Tony Tony…”と会場がエールを送ると、それを聴いたビリーはトニー・ベネットの大ヒット曲「思い出のサンフランシスコ」の一節を歌いトニーを見送った。

22:30頃、19曲目の「シェイムレス」ではカントリー界の大スーパースター・ガース・ブルックスがメッツのユニフォームと帽子を被って登場。この曲はビリーの『ストーム・フロント』に収録された隠れた名曲であるが、それをガース・ブルックスが1991年にカバーし全米No.1を獲得するほど大ヒットさせた曲だ。

ビートルズの「ア・ハード・デイズ・ナイト」を挟み込んだ「リバー・オブ・ドリームス」を演奏し大歓声の中、コンサートも終盤に差し掛かった23:00頃、なにか影アナみたいに姿は見えないけど、変な声でビリーのトークに絡んでくるヤツがいる…、それもどう考えても特徴のある声。「あれ?あれ?」と会場中がざわざわしはじめる…そうどう考えても、あの方のお声! ビリーが遂に呼び込んでエアロスミスのスティーヴン・タイラーが登場。観客は“信じられない!”といった驚きとともに興奮の坩堝と化したところで、あのギターリフがスタート。そう、なんとエアロスミスの名曲「ウォーク・ディス・ウェイ」をビリー・バンドとともに熱唱だ。豹柄のシャツにいつものマイクスタンドであの踊りとステップ、まさに“これぞスティーヴン・タイラー!”的な見事なパフォーマンスを披露(スティーヴン元気でよかった!)。曲が終わるとひらひらとマイクスタンドに付いてるいくつもの極彩色のスカーフにビリーが頭を突っ込んでかつらのようにおどけて笑いを誘う。

その後「ハートにファイア」「ロックンロールは最高さ」の2曲立て続けに大ヒット曲連発でさらに場内最高潮の中、23:14頃、“長年の友人を紹介するよ”というビリーの呼びかけで、シェイ・スタジアムでかつて公演をしたザ・フーのヴォーカル・ロジャー・ダルトリーが登場。演奏するのはこれまたザ・フーの大名曲「マイ・ジェネレーション」をビリーと競演。ロジャーの堂々たるヴォーカルと完コピに近い見事なビリー・バンドの演奏(ロジャーは転調のところで入るところをちょっと間違えたけど、そんなのご愛嬌!)。ロジャーは十八番のマイクをぐるんぐるん回して上に振り上げて飛ばして、キャッチするパフォーマンスも見せてくれたり、ビリーはビリーで最後にザ・フーのピート・タウンゼントばりに、ギターをたたき壊すパフォーマンスも見せてくれて大サービス!

もうビリー自身もやりすぎたのか、ステージ上で“ハーハー、ゼイゼイ“って感じのしぐさをみせ、「ガラスのニューヨーク」を演奏し本編は終了。

アンコールの一発目は前回と同じく「イタリアン・レストランで」で観客とともに大合唱。この日の撮影のためか会場の頭上にはヘリが飛んでいて、ビリーがそれを指差し、どっかいけ!って感じで会場中を笑わせる。するとここで、スタッフがあわててビリーにかけより何かメモを渡す、若干の間があったあと、ビリーがバンドメンバーを呼び寄せ何か耳打ち。なんか変だなあと思いつつ(もしかしたらゲストが最後に全員登場するのか??なんて想像しつつ…)、何事もなかったの如く、続く「若死するのは善人だけ」へ突入。一回目のアンコールは終了で一回全員引っ込む。

いつもよりもやや長い間のあと23:40頃、二回目のアンコールでビリーが再びステージへ。まずはギターのリフで「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」のイントロを奏でると、それだけで会場中は盛り上がった…が、そのあと誰もが想像だにしなかったビッグ・ビッグ・サプライズが待っていた。

ちょっと緊張気味のビリーの口から信じられないフレーズが。「please welcome…Sir.Paul McCartney!」。颯爽とバイオリン・ベースを抱えて、ポールが登場すると「ギャー」とこれまでに聞いたことのないような大歓声で会場中が揺れるかのごとく。誰もが前へ前へと押し寄せ、口々に「Oh My God、Oh My God…」とその場の状況が信じられないといった感じ(ちなみに筆者は「うわ、でたー」とお化けでも見るかのようにうわごとのように叫んで、ステージ前へ自然に突進していたらしい…)。ポールのベースのあのリフにあの声、さらにビリーがピアノでバックアップ…という夢のような信じられないパフォーマンスはすさまじい、まさにビートルマニアもびっくりという大歓声で狂乱の状況の中、夢の競演は終了。ビリーとポールがハグし、ポールはいつものようにバイオリン・ベースを上にかかげ、ステージの裏へ去っていきました。もともと短いロックン・ロールなので、あーあっという間に終わってしまった、というのが正直な気持ち。

ビリーもバンドも観客も、信じられないといった雰囲気で、その余韻の残したまま、続いて「ピアノ・マン」(前夜はここで「Take Me OutTo The Ball Game」をはさんで大合唱したりしたけど、そんな余裕もなかったのかもしれない)。でもおなじみのイントロが来ると会場中は更なる盛り上がりを。そして大合唱。シェイ・スタジアム全体が大合唱する様はまさに見事なエンディング。今日はきっとこれで終わるんだろうなあと勝手に思ってたら…あらら、またスタッフがビリーにメモを差し出してる。そして、ビリーがまたまたバンドのメンバーに耳打ちを。前夜は号泣の「スーベニア」だったが、何か別の曲に差し替えるのか? はたまた??そうしたら、な、なんともう一度ポールがステージへ戻ってきたのです!

もう場内は何がなんだかわからない状況。大興奮状態の中、ポールがマイクへ向かって一言。

「遠い昔にビートルズで幕を開けたSheaの歴史に、ビリーと一緒に幕を下ろすためにやって来たんだ」

ポールはこのためにわざわざ飛行機でイギリスからやってきたのです。1965年8月15日シェイ・スタジアムの最初のコンサートを飾ったのがザ・ビートルズ。そしてポール・マッカートニーがそれ以来、43年ぶりにシェイの舞台にたったのがその最後の日。そしてそのシェイ最後を飾ったのは「レット・イット・ビー」でした。

ポールがピアノでイントロを奏でると、ビリーはその傍らでピアノに腰掛け楽しそうにポールの演奏を見つめている(ビートルズの大ファンであるビリーがある種一番近くでビートルズを見てる…本人も相当感激したことでしょう)。バンドはリハも何もまったくしていないのに見事にあわせる(みんなビートルズ好きだから当然一度はコピーとかしたことあるのでしょう)。

1965年にビートルズで始まったシェイ・スタジアムの終焉は、ポール・マッカートニーとビリー・ジョエルと55000人の観客の「レット・イット・ビー」の大合唱での大円団。奇跡の夜は終了した。

<2008/7/18 Last Play at Shea set list>
・The Star Spangled Banner アメリカ国歌
・Miami 2017(Seen the Lights Go Out on Broadway) マイアミ2017
・Prelude/Angry Young Man プレリュード/怒れる若者
・My Life マイ・ライフ
・The Entertainer エンターテイナー
・Summer,Highland Falls 夏、ハイランドフォールズにて
・Zanzibar ザンジバル
・Allentown アレンタウン
・The Ballad Of Billy The Kid さすらいのビリー・ザ・キッド
・New York States of Mind ニューヨークの想い(w/ Tony Bennett)
・Root Beer Rag ルート・ビア・ラグ
・Goodnight Sigon グッドナイト・サイゴン
・Don't Ask Me Why ドント・アスク・ミー・ホワイ
・Keepin' The Faith キーピン・ザ・フェイス
・The Downeaster Alexa ダウンイースター・アレクサ
・This Night 今宵はフォーエバー
・Movin' Out(Anthony's Song) ムーヴィン・アウト
・An Innocent Man イノセント・マン(opening Under The Boardwalk)
・Shameless (duet with Garth Brooks)/シェイムレス
・She's Always A Woman シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン
・Captain Jack キャプテン・ジャック
・Lullabye ララバイ
・River of Dreams リバー・オブ・ドリームス
・~A Hard Days Night ア・ハード・デイズ・ナイト(The Beatles)
・Walk This Way ウォーク・ディス・ウェイ(with Steven Tyler)
・We Didn't Start The Fire ハートにファイア
・It's Still Rock 'n' Roll to Me ロックン・ロールが最高さ
・My Generation マイ・ジェネレーション(with Roger Daltrey)
・You May Be Right ガラスのニューヨーク
-Encores-
・Scenes From An Italian Restaurant イタリアン・レストランで
・Only the Good Die Young 若死するのは善人だけ
-Encores-
・I Saw Her Standing There アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア(with Paul
・McCartney)
・Piano Man ピアノ・マン(w/ Take Me out to the Ball Game)
・Let It Be レット・イット・ビー (with Paul McCartney)
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