『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』にみるジョニー・グリーンウッドの音世界

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『ブギーナイツ』『マグノリア』で世界を熱狂の渦に巻き込んだ天才ポール・トーマス・アンダーソン監督の5年ぶりとなる待望の新作『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』が、DVD及びブルーレイで発売となった。

石油王の破壊的な人生を、見渡すかぎり荒野が広がる20世紀初頭のカルフォルニアを舞台に、アメリカンドリームの裏に潜む欲望と復讐の物語として描き出す大河ドラマだが、この鮮烈な映像に、不協和音が織り成す創造的&革新的なサウンドで、本作に神々しいまでの風格を与えているのが、レディオヘッドのギタリストであるジョニー・グリーンウッドが手掛けた音楽なのだ。

『マグノリア』、『パンチドランク・ラブ』で素晴らしいコラボレーションを果たした盟友ジョン・ブライオンとのコンビを解消し、今回アンダーソン監督が音楽を依頼したのがジョニー・グリーンウッドだった。

きっかけは、2006年ブリティッシュ・コンサート・アワードのBBCラジオ3リスナー賞に輝いた「Popcorn Superhet Receiver」。同曲を聴いたアンダーソン監督が、その不気味で不調和な音世界の強い印象からグリーンウッドに音楽を依頼することになった。これまでの作風~ロバート・アルトマン的な群像劇~を一新して挑むこの意欲作で、グリーンウッドの新たな血を必要としていたからだという。

グリーンウッドは、その期待に見事なまでに応え、ギターではなくストリングスやピアノといったクラシックな楽器を駆使して、不安を掻き立て、同時にストーリーを物語るような革新的なスコアを作り上げた。アンダーソンの全幅の信頼を得て、自由に才能を発揮したグリーンウッドは、あのアビーロード・スタジオで録音を行ない、数々の優れた曲を仕上げていった。

まるで無声映画のように展開していく発掘現場のシーンに、耳障りなオーケストラの不協和音が重なっていくオープニングの20分間は、“『2001年宇宙の旅』以来の衝撃!”と絶賛されるほどの奇跡的な光景を生み出している。また、油井やぐらが炎上するシーンを彩るプリミティブなパーカッションによる多重奏は、物語がやがて憎しみと復讐のドラマへと転じていくことを上手く暗示しており、本作において音楽は登場人物や物語の設定と同じ重要な役割を担っていることがよくわかる。

◆『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』予告編

ジョニー・グリーンウッドは1971年生まれ。1992年レディオヘッドのギタリストとしてデビュー。以降、レディオヘッドは多数のプラチナアルバムセールスを記録、世界的なブームを巻き起こしている。近年では、レディオヘッドでの活動以外にソロ作曲家としても活躍。初ソロプロジェクトとしてサイモン・ピューメル監督作『Bodysong』(2003年 日本未公開)のサウンド・トラックを担当。2004年に作曲したクラシック曲「Smear」はリーズ・フューズ・フェスティバルでロンドン・シンフェニエッタによって演奏された。

2004年にBBC専属作曲家に選ばれ「Piano for children」「Popcorn Superhet Receiver」を作曲、BBCコンサート・オーケストラで演奏された。「Popcorn Superhet Receiver」は2006年ブリティッシュ・コンサート・アワードのBBCラジオ3リスナー賞に輝いている。

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
DVD:3,990円(税込)
ブルーレイディスク:4,935円(税込)
DVD、ブルーレイレンタル同日開始
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』公式サイト
発売元:ウォルト ディズニー スタジオ ホーム エンターテイメント
(C) Buena Vista Home Entertainment, Inc. and Paramount Vantage, A Division of Paramount pictures Corporation
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