TAHITI80、ロックの原点に立ち返った意欲作4thアルバム『アクティヴィティー・センター』リリース大特集

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Tahiti80 約3年半ぶり通算4枚目のオリジナルアルバム『アクティヴィティー・センター』リリース大特集 INTERVIEW

――待望の新作『アクティヴィティ・センター』がやっと届いたけど、前作の『フォスベリー』から3年半も経ってる。その間どんな活動をしていたの?

グザヴィエ・ボワイエ(以下、グザヴィエ):この3年半、けっこう色々やっていたよ。『フォスベリー』を出した後、日本向けに『Unusual Sounds』というコンピレーション盤を作って、それにはTAHITI80の新曲も入れたのは知ってるよね? その後の1年間くらいは僕のソロアルバムを作っていたんだ。それ以外はツアーだね。インドネシアとか韓国、タイ、今まで行ったことがなかったアジアの国にもたくさん行ったな。それから他のアーティストのプロデュースもしてた。このアルバムにとりかかったのは去年の終わりくらいなんだけど、それまでの間はそうやって色々忙しくしていたんだ。

――メデリックは?

メデリック・ゴンティエ(以下、メデリック):えーと、ハンティングしてたよ(笑)。

グザヴィエ:ハンティングだって! そんなのウソだ。彼は確かに森の近くの家を買ったけど、ハンティングなんて行ってないぞ(笑)。彼はね、ソロとかサイドプロジェクトとかをやってたんだよ。

メデリック:ホントはそうなんだ。サイドプロジェクトもやっていたし、自分のソロ用の曲も作っていた。まだソロアルバムを出すところまではいっていないんだけど、その準備をしてたんだ。ほかにもリミックスとかDJとか、僕も色々やってたよ。

グザヴィエ:ペドロ(ペドロ・ルスンド、B)とシルヴァン(シルヴァン・マルシャン、Ds)はMa Radio Starというリミックスプロジェクトをやっていたし。みんなそれぞれTAHITI80の新曲を作ったりもしていて、ただ休んでたわけじゃないんだよ。

――タイトルの『Activity Center』って、オモチャの名前なんだって?

グザヴィエ:うん、僕らが子供だった頃にとてもポピュラーだった幼児用のオモチャの名前なんだ。小さなデスクの上にボタンとかハンドルとかリールとか色々なものがたくさんついてて、音が出たりするんだ。それを、不用品を売るガレージセールでたまたま見つけて“ああこんなの昔あったなあ”なんて思い出したんだ。このオモチャのロゴも大好きだったな。で、一ヶ所に色々なものが集まっているこのオモチャって、スタジオの環境に共通するところがあると思ったんだ。

メデリック:スタジオのコントロールルームって、狭いところにボタンがいくつもあって、ドラムマシンとかキーボードとかベースとかを操作できたりするんだ。このオモチャとなんかすごく似てるんだよ。

グザヴィエ:スタジオには色々な機材があって、やりたいことをできる可能性が広がってて、遊び心もあったりする。そんなところに似ているから、このオモチャの名前がアルバムのタイトルとしてとてもいいと思ったんだ。僕らはパフォーマーでもあり、コンポーザーでもあって、色々な側面がある。一つのところにたくさんのものが含まれている、そんなところも共通しているんじゃないかと思うな。

――このアルバムを作るにあたって、なにかコンセプトはあった?

グザヴィエ:コンセプトらしいコンセプトはなかったけど、あるとしたらフィーリングの部分だね。自分たちのルーツにもういちど還ってみようと思ってた。今までの3枚のアルバムはそれぞれ異なる路線で作ってきたし、とくにプロデュースワークについてはかなり手の込んだことまでできるようになってきた。だから今回はシンプルなところに戻ってみようと思ったんだ。自分たちがステージでバンドとして4人で出す音、そこで放たれるエネルギー、そういう感覚を大事にして作りたいと思った。だから、4人でスタジオに入ってレコーディングするっていう、今までやらなかったことも試してみた。

――“せーの”でライヴレコーディングしたの?

グザヴィエ:うん。ライヴ感を出したアルバムにしたかったからね。全部じゃないけど、みんなでライヴレコーディングした曲が多かったよ。だから今回は洗練されていないというか、荒々しい雰囲気になってると思う。

――『フォスベリー』はエレクトロニック寄りのサウンドが特徴だったけど、今回のアルバムはそれとはかなり違うね。『フォスベリー』のときは、その前の『ウォールペーパー・フォー・ザ・ソウル』の反動だと言っていたけど、今回もまた『フォスベリー』の反動でこうなったの?

グザヴィエ:そう、その通り! 僕らはアルバムを作るたびに方向性が変わるけど、それは前の作品の反動というところが大きいと思う。アルバムを作るときは、つねに自分たちが興味をもって制作できるようにしたいと思うし、新鮮さも重視したいんだ。最初の『パズル』はライトな感じだったけど、2ndの『ウォールペーパー・フォー・ザ・ソウル』はへヴィでダークになって、3枚目の『フォスベリー』はグルーヴがあってギターもけっこう入れてっていう感じ。そして今回のアルバムは、『フォスベリー』の反動で、より“オーガニック”になったんだ。

――前のアルバムの方向性がどうなっていたかが、次のアルバムの方向性に毎回影響を与えているってこと?

グザヴィエ:そうだね。まあ反動というか、前のアルバムで最後にレコーディングした曲が、次のアルバムの方向性のキーになってることが多いんだ。たとえば『パズル』で最後に録った「イエロー・バタフライ」でトリッキーなコードを使ったり実験的なことをしたりしたのが、次作につながってる。『ウォールペーパー …』はタイトル曲が最後だったんだけど、ここではコンピュータとかサンプラーとかドラムマシンを使っていて、次の『フォスベリー』もそういうサウンドになってる。そして『フォスベリー』では最後に「Take Me Back」をライヴレコーディングで録った。それが今回につながってるんだ。

メデリック:結果的に、最後にレコーディングした曲が、必ず次のアルバムの方向を示唆することになっているね。

――最初のシングルは「All Around」だけど、もっともハードでスピーディなロックチューンの「Brazil」のほうが、このアルバムのサウンドを象徴してるように感じる。自分たちではどう思う?

グザヴィエ:「Brazil」は確かにアップテンポだしダーティなギターも入ってて、T-REXみたいなロックなサウンドだよね。でもこの曲は、今までの僕らはソフトロックのイメージが強かったみたいなんで、それを崩したくて、ある意味サプライズとして意図的に入れた曲なんだ。ただ今回のアルバムについては、アルバムを代表するとか象徴する曲というのは選びにくいな。全部の曲が連なって、ひとつの塊として存在するようなアルバムにしようと思って作ったから。「Whistle」みたいにかなり色の違う曲もあるけど、それも含めてね。たとえばニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホースのアルバムを聴いたとき、“これはたぶんこういう感じでレコーディングしたんだな”って、作った時のストーリーなんかが情景として浮かぶ、そういうアルバムにしたかったんだよ。すべてまとめてひとつのアルバムということで、どの曲が代表かってことは考えてないんだ。

――ちょっと陰りのあるサウンドもTAHITI80の特徴のひとつだと思っていたけど、今回のアルバムはすごく明るくハッピーなサウンドばかりだね。気持ちや意識、内面になにか変化があったの?

グザヴィエ:作品にはつねに前向きなところも入れたいと思っているし、確かに今回のアルバムは希望が感じられるようなものになっていると思うけど、うーん、理由は自分たちでもわからないなぁ。今回はシンプルでアップビートなものが多かった、それが理由のひとつかもね。今まではプレイしたことがなかったくらい速いテンポの曲もあるんだよ。普通は歳をとるとスローダウンするだろう? そしてゆっくりめのレイドバックした曲をやったり、ヴォーカルも低めの声の曲をやったりするんだけど、今回は逆で、ヴォーカルも今までにないくらい高い音域を歌ったりしたんだ。アルバムを3枚作ってもう一度若返ったというか、再び青春期を迎えたみたいな感じなのかもしれないね。キース・リチャーズみたいに、スイスに行って血液を全部入れ替えてきたもんだから(笑)。

――毎回、色々な音楽をミックスして幅を広げるのが面白いと言っていたね。以前、『フォスベリー』はビートルズの『リボルバー』とマーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』の組み合わせだと言っていたけど、このアルバムを同じようにたとえると?

グザヴィエ:あえて言うとすると、ザ・バンドの2ndの『ザ・バンド』と、ストーンローゼズの1st『石と薔薇/ストーン・ローゼズ』かな。今回やりたかったことは、モダンな部分も持ちつつタイムレス、つまり時代に関係ないものを作るということだったんだ。それで機材も古いものを使ったりしたんだけど、だからといってたとえばスモール・フェイセスみたいなレトロなものじゃなくて、ストーン・ローゼズみたいに時間が経過しても聴けるものを目指したんだ。

――今後の方向性がどうなるか決まってる? さっきの話からすると、最後にレコーディングした曲というのがそのヒントになりそうだけど、それはどの曲?

グザヴィエ:次のアルバムにつながるという意味で言えば、「Tune In」がキーになるかな。この曲は歌詞もサウンドもコンセプチュアルな作りなんだ。作ったときに頭にあったのがバグルスの「ラジオスターの悲劇」だったんだよ。あの曲ってその当時の状況を表現しているだろ? 「Tune In」も、若者の今のフィーリングとか、みんながケータイ電話を持っててとか、自分の内面じゃなくて、今の一般的な状況について歌ってるんだ。自分のことじゃなく周囲の状況を歌う、そしてコンセプチュアルな作り、そういうところが次のアルバムにつながっていくかもしれないね。でも今はわからないな。次に作るときになったらまたドラムマシンを使うかもしれないし、アブストラクトとかジャーマンとか、ハウス・ミュージックとか、全然違うものになるかもしれないよ(笑)。

メデリック:ケータイの音がピコピコ入ってたりするかもよ(笑)。

取材・文●田澤 仁

 
 
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