表記も変わったChageの宝箱的30周年作品『Many Happy Returns』

◆Chageのフォトアルバム
Chageのアーティスト活動30周年を記念してリリースされるこの『Many Happy Returns』は、彼がこれまでに発表してきた楽曲や彼がリスペクトするアーティストの楽曲のカヴァー、さらに4曲のオリジナル楽曲を、谷村新司、松浦亜弥、スガ シカオ、根本 要、キマグレン、夏川りみなどなど、数多くのビッグアーティストとのコラボレーションによって全14曲収録されている。
ファンとしては、今回のアルバムではクレジットをこれまでの “CHAGE” から “Chage” という表記にチェンジしているのもポイントだろう。<俺の名前に(N)を入れてほら / “CHANGE”になれば道も開く!>と、前作『アイシテル』収録曲「クールで行こう」で歌ったことから表記を変えたのかは定かではないが、ともあれ、本稿でも今回のアルバム記事に関しては、CHAGEではなくChageと表記したい。ちなみにこの名義が今後も続くのかを所属レーベルに確認したところ、 “現段階ではわからない” とのことだったが、<唱う門には“Chage”来たる! 「茶会」 Special Live 10 Days at Sogetsu Hall>や<Chageの細道2009>といった近々に控える彼のライヴ、ツアーのタイトルを見る限りでは、しばらくは “Chage” なのではないかと推測される(余談だが、3月25日から始まった彼のオフィシャルブログのヘッダー部分では、“Chagé” と、イタリア語で使われるアキュート・アクセントのついた “é” となっている)。

注目楽曲をいくつか紹介しよう。まずは、アルバムタイトル曲「Many Happy Returns」。誕生日カードなどに書かれている “Many Happy Returns” というフレーズがキーになっているこの楽曲は、Chage自身がハマっていたウクレレとパーカッションだけでオケが作られており、Chageの力を抜いたヴォーカルとともに心地よい気分にさせられる。コラボレーションしているザ・ブーメランズとは、Chageと、WAHAHA商店所属のウクレレ芸人・ウクレレえいじ、そして “そこらへんにいた愉快な仲間たち” で構成されているとのこと。
Chageメインのアルバムながら、彼の声によって逆にコラボレーションした相手の力が上手く引き出されている楽曲として「飾りじゃないのよ涙は」を挙げたい。一度聴くだけで、松浦亜弥のクールなヴォーカルがChageの怪しいヴォーカルに絡んだ瞬間に思わず鳥肌が立つ。松浦亜弥というヴォーカリストは、元々アイドルというカテゴリーの中でも突出したセンスと実力を備えていたが、このふたりのコラボを耳にすると、(Chageの上手さは言うまでもなく)松浦亜弥のヴォーカルセンスのよさ、表現力の高さを改めて認識できる。また、歌詞の女性の心の叫びのような感情的なヴァイオリンを弾いているのは、さだまさしの息子、佐田大陸だ。
30年というChageのアーティスト活動を感じさせる楽曲も数多い。「他愛のない僕の唄だけど」は、<ヤマハポピュラーソングコンテスト>の先輩で、2008年12月に急逝した松山を代表するシンガーソングライターの上隅信雄氏の代表曲。彼の描いた、ちっぽけながらも大きな優しさの形を丁寧に歌うChageのヴォーカルが胸を打つ。この曲のヴォーカルレコーディングでは、いい歌を歌えているという手ごたえこそあったものの、具体的な記憶がないというChage。“ノブさんが残したこの名曲を、少しでも多くの人に聞いてもらえるよう、未来につなげていけるよう、歌っていきたいと思ってる” と、コメントする彼にとって、この曲のレコーディングは上隅信雄さんとの大切なコラボレーションだったに違いない。
アルバムに収録された新曲にも目を向けてみたい。「夢のほとり」には、新鮮に感じる点が2つある。まずひとつが “作詞Chage” のクレジット。確かに、1999年3月にリリースされたCHAGE and ASKAの両A面シングル「この愛のために/VISION」収録の「VISION」くらいから、Chageが作曲だけでなく作詞を手がける楽曲が増えた。ただ、Chageが自分以外の人の曲に歌詞をつけるという形は、“CHAGE” ではなく “Chage” という見慣れない字面とともに、なかなか新鮮だ。いや、思い返せばMULTI MAX時に村上啓介の曲に歌詞をつけたことがあったが、あくまでそれはグループ内でのこと。“作詞 Chage/作曲 吉川英治” というクレジットからは、作詞家Chageとしての展開すらも見え隠れする。
もうひとつが、Chageのファルセット。かつてASKAに “犬笛” と表現された彼のハイトーン・ヴォイスだが、地声ではなく柔らかなファルセットを用いているというのも珍しいことではないだろうか。これは、「夢のほとり」を含めた、今回のアルバム全体がアコースティックにこだわった、音の柔らかさを全面に出した作品であることが大きい。
「Hello Goodby」は、ファンならばニヤリとしてしまう。MULTI MAXのメンバーでもある村上啓介とのコラボレーション。1999年の<CHAGE&ASKA 千年夜一夜ライブ~福岡ドーム 僕らがホーム~>以来となるChageと “啓介さん” とのハーモニーは、ASKAとのそれとはまた違った味がある。ともすれば、MULTI MAXのライヴの定番曲「WINDY ROAD」に備えて “紙飛行機の準備をしなければ!” などと手が動いてしまったファンも必ずやいるはずだ。また、タイトルの「Hello Goodby」や、ロックとポップのちょうど中道を行くような曲調からは、Chageや “啓介さん” の音楽的ルーツでもあるビートルズの影響が感じられる。
最後に触れたいのが、やはりラストトラックの「ふたりの愛ランド2009 with 石川優子」だろう。CHAGE and ASKAが「流恋情歌」で入賞を果たした<第16回 ポピュラーソングコンテスト>に出場したことがきっかけでデビューを果たした石川優子。1984年に “石川優子とチャゲ” 名義でリリースされた「ふたりの愛ランド」といえば、今なおデュエットソングの定番として歌われ続けている。そんな彼女と、25年の時を超えて「ふたりの愛ランド」が復活した。
「ふたりの愛ランド2009 with 石川優子」は、アレンジも一新。Chageが松浦亜弥とウォッチャー(VJ)を務めるWOWOWの音楽番組『コラボ☆ラボ ~夢の音楽工房~』内で、彼女とともに “CHAGE&AYAYA” として披露した「ふたりの愛ランド'08」に近い、スローポップへと姿を変えている。あえて表現すると、1984年のオリジナルが血気盛んな20代のはじけた「ふたりの愛ランド」だとすると、今回のバージョンは、あの頃から大人になったふたりがゆったりと大人のバカンスを楽しむような、そんな「ふたりの愛ランド」だ。ちなみに今回のアレンジに合わせて、Chageもオリジナルよりもオクターブ下でヴォーカルをとっている。
そのほかにも、大先輩・谷村新司とコラボレーションした「遠くで汽笛を聞きながら」や、飲み友達のスガ シカオとの「トーキョータワー」、CHAGE and ASKAをフェイバリットアーティストとして挙げるキマグレンとの「レノンのミスキャスト」、加藤いづみを迎えての名曲「告白」、さらに中学時代の同級生“手嶌君”の娘、手嶌 葵との「嘘」など、聴きどころは満載。まさに、Chageと彼を取り巻くアーティストとの絆によって誕生した、“CHAGEのTreasure Box” と言わんばかりの、音を楽しめるアルバムだ。
◆iTunes Store Chage(※iTunesが開きます)
◆『Many Happy Returns』のCD情報&収録曲全曲レビュー
◆Chage オフィシャルサイト(CHAGE and ASKA)
◆Chage オフィシャルブログ「ManyManyHappyReturns」
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