KREVA、陽性の感動を生み出す<意味深2>のパフォーマンス

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2009年4月19日(日)、KREVA CONCERT'09<意味深2>最終日。青いライトに照らされながらステージに現れたKREVAは、おなじみの千晴&FU-JIのサイドMCと左右に音を振り分ける2DJ(SHUHO&HAJI)+MPC(熊井吾郎)を従えて、いきなり最新曲「成功」を披露。そこから「THE SHOW」「あかさたなはまやらわをん」「Have a nice day!」とつなげ、一気に会場のテンションを上昇させていった。

大歓声を全身に浴びながらKREVAはこの日最初のMCでこう言い放った。「<意味深>というのは、普段やらないことをやるライヴだと俺は考えてます。今回もみんなが観たことない俺をたくさん出していきたいと思う」

ダンスやマジックなどを取り入れ新たなエンターテイメント性を追求した前回の<意味深>ホール・ツアー(2007年6月)、たったひとりで武道館のステージに立ち会場に鳴るすべての音を司ってみせた<武道館ライヴ>(2007年11月)、日本人のヒップホップ・アーティストとしては初となる<MTV UNPLUGGED>への出演(2008年8月)など、これまでも常に過去にやっていないことにトライするライヴを重ね、オーディエンスに「次はいったい何を見せてくれるんだろう?」という期待感を抱かせ続けているKREVAだが、やはりこの<意味深2>でもその多くの人の大きな期待をさらに超えていくこと序盤で約束してみせたのだ。そして、さらにこう言葉を続けた。「この調子で最後まで駆け抜けていきたいと思ってるので、アンコールがないんですよ。だから、曲のなかでおもいきり自分を発散して、後悔のないようの楽しんでほしい。俺らがベストを尽くすのは言うまでもないけど、いいライヴはいいお客さんに恵まれないとできないと俺は思ってるから」

そこから次のブロックへつなげるイントロダクションとして、これまでKREVAが客演及びトラックを提供してきた Romancrew、L-VOCAL、SEEDAの楽曲を紹介し(それが同時に、会場で先行発売された上記の3組も参加しているくレーベルコンピの新作プロモーションにもなっているところがまたニクい)、千晴を呼び込んで彼のアルバム『千晴見聞録』に収録されている「無礼KING feat.KREVA」へ。

KREVAが一旦ステージを千晴に預けると、次に登場したのが、今後日本の男性R&Bシンガーの代表的な存在になっていくであろう三浦大知。同じく千晴のアルバム『バカ正直』に収録されている「STOP!! feat.三浦大知」で新世代の勢いと熱を見せつけた。バトンのように千晴から三浦大知にステージが受け渡されると、今度は三浦がKREVAを招いてダンサー・チームとともに「Your Love feat.KREVA」、そして2月に配信でリリースされたKREVAの“勝手にリミックスシリーズ Vol.2”から「Magic Remix」(KREVA ×三浦大知)、さらになんと“マジックつながり”でKREVAが久保田利伸に客演した「M★A★G★I★C」のKREVA×三浦大知ヴァージョンと畳み掛け、オーディエンスは歓喜の声を上げた。

このブロックのテーマはズバリ、フックアップだ。KREVAはひとりのラッパー、トラック・メイカー、プロデューサーの視点から趣向を凝らし、これからもっとその名前と才能が世に広まるべきアーティストを紹介すると同時に自らのライヴを観に来たオーディエンスも満足させるという、実は非常に難易度の高いことをさらりとやってのけたのだ。

そして、ここからがまたすごかった。この規模の会場では恐らく世界で初めて導入したという“SVM-1000”という映像と音楽をリアルタイムでシンクロさせながらスクラッチやエフェクトをかけられるエポックメイキングな新機材の性能を「希望の炎」のミュージック・ビデオを使ってわかりやすくオーディエンスに説明。その後、熊井吾郎のアシストを受けスクリーンの映像とサウンドを有機的に融合させながら「I Wanna Know You」、驚きのYMOの名曲カヴァ—「君に胸キュン」と続け、近未来的なライヴ感覚を堪能させてくれた。そこからSONOMIを呼び込んで彼女の楽曲「midnight」をダンスも交えながら初デュエットし、SONOMIがセルフ・プロデュースを手がけた新曲「ごめんねfeat.KREVA」と続けた。

その切なくも愛おしい余韻が消えぬうちに全身白の衣装を身にまとい鍵盤の前に座るさかいゆうのシルエットが浮かび上がり、彼が母性と父性が同居した子守唄のような声色で「ひとりじゃないのよ」のサビ部分を囁きながら「生まれてきてありがとう(fear.さかいゆう)」へと導いていく。KREBAとさかいゆうが紡ぐ、普遍的で何にも侵されることない音と言葉の交わりに誰もが息を呑み、聴き入った。

ラスト・ブロックでも新たな試みは続いた。さかいゆう、柿崎洋一郎、SHOTA、YOSHIの4人のキーボーディストで新たに結成された“クレイジー鍵盤BAND”がシンセサイザーを駆使しながら、それぞれピアノ&ドラム、ストリングス、エレピ&アコースティック・ギター、ベース音を表現。つまり、通常は生バンドの編成で鳴らす音をすべて鍵盤のみで実現させてしまおうという斬新なアイデアだ。このアイデアは、<MTV UNPLUGGED>の経験を経て手に入れた産物であることは間違いない。さらに、そこに2DJとMPCが加わるのだから、このヒップホップ楽団は間違いなく、比喩でもなく、世界で唯一無二の存在である。彼らしか出せない、ここでしか聴けない豊潤なヒップホップ・サウンドをもって「くればいいのに」「スタート」「アグレッシ部」「音色」とKREVA特有の“ビートの利いたセンチメンタル”が際立つシングル曲を披露し、その流れはまたKREVAのヴォーカル力の進化を浮き彫りにもした。

「ラスト2曲」という合図から放たれたダンスホール・アレンジの「イッサイガッサイ」、そして、それまでのピースフルな流れから一転、不穏なサウンドのなかKREVAが「このまま爽やかに終わるわけねーだろ、さっきの曲であと2曲って言ったってことは、次がどういうことかわかってるか? 準備はできてるか!」と咆哮すると、さかいゆうがピアノを叩きつけるように「ストロングスタイル」のイントロを響かせる。この曲をアンコールなしのオーラスにもってくるとは、なんてアグレシッヴなライヴだろうか。それでいて、会場を見渡すとオーディエンスたちがこの空間でもっともライヴを楽しんでいるのは自分であると証明するかのように大きく手を挙げ、身体を揺らしながらステージから放たれるサウンドの波を泳いでいる。これが、KREVAのライヴだ。

いままで誰も踏み入れたことのない領域のアイデアを具現化し、会場にいるすべてオーディエンスに有無を言わせず「すごい!」と思わせる。しかし、 KREVAはただ観る者を圧倒させるだけでは終わらない。彼は絶対そこにオーディエンスが楽しめる場所を設け、参加させるのだ。だから、KREVAのライヴはいつも「すごい!」に「楽しい!」が加わり、「すごく楽しい!」という陽性の感動が生まれる。そして、そのオーディエンスが覚えた感動を彼らの表情や声から確認し、受け取ることでKREVAは次なる制作の原動力を得る。そんな音楽を通したポジティヴィティの循環こそが、KREVAの歩みを未来へと向かわせているのだ。

終演後の会場には<意味深2>の3公演を振り返る映像とともに未発表の新曲「瞬間 speechless」が流れた。人肌の温度をたたえた、どこを切り取ってもメロウで心地好いフレーズから構成された曲だった。曲が鳴り止み、スクリーンに文字が映し出される。それは“ニュー・シングル「赤」、7月リリース決定”“今秋、アルバム・リリース決定”“今冬、ツアー決定”という吉報3連発。KREVAが疾走する2009年は、既にここまでコースができている。さあ、僕らも追走しよう。

文●ライター・三宅正一/fixed

<くレーベル祭り2009 ~く Label is Dead?~>
2009年5月10日(日)
@EBISU LIQUIDROOM
開場/開演:16:00 / 17:00
3,900円(別途DRINK500円) 4月26日(日)一斉発売
[問]ディスクガレージ 03-5436-9600
◆KREVAオフィシャルサイト
◆KREVAオフィシャルブログ
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