ベン・ハーパーが提示する、サウンドの緊張感と開放感の関係[後編]

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2008年夏、このメンバーで再結集したベンは本能のまま作品を作り上げた。それが5月13日リリースの『ホワイト・ライズ・フォー・ダーク・タイムス』だ。オリジナル・スタジオ録音アルバムとしては9枚目となる本作は、ニュー・バンド:リレントレス7とともに音の揺らぎに誘われるように自然体の魂が咆哮するロック・アルバムとなった。

◆前編より続き

──冒頭の「ナンバー・ウィズ・ノー・ネーム」から、熱いセッションが響いていますね。まるで、これまでおさえていたフラストレーションが爆発したような、シャウトするバンド・サウンドに興奮しました。

ベン・ハーパー:この曲は、ナショナルのシルヴィオというショート・スケール・ギターを使用した。1930年代か40年代のギター。メタル・ボディなんだよ。ファンキーな音なんだ。アンプとギターは別々の部屋でマイクにつなげて、二つの音をブレンドさせて完成させたんだけど、確かにそういう爆発があったな。本来ロックンロールって、フラストレーションを吐き出すための装置だと思う。それが伝わらないロックって、使命を怠っているような気がするんだ。

──また、リードトラックの「シマー・アンド・シャイン」も、80年代のハードコア・パンクを彷彿させるスピード感のあるサウンドで、かなり刺激的でした。

ベン:この曲のレコーディング時の音があまりにも大きく、胸が圧迫されたのを覚えている。相当ラウドなレコーディングだった。これぞ音の爆発を楽しんで作った曲だ。まるで祝い事だよ。歌詞だってそうさ。なんせ<光り輝いて>いるんだからさ。光り輝きながら未来へ向かっていくんだ。曲の内容は歌詞を読めば明白だよ。

──そういった激しい楽曲の合間には、美しい静寂を響かせる楽曲も織り交ぜていて、そこがさまざまな表現世界を持つあなたらしい音楽になっているのかな?と。

ベン:オレたちは自分たちのロックサウンドを捜し求めていた。安易なロック、他人のために作ったロックではなく、自分たちのためのロックを求めていた。そういった意味で、静かな楽曲もオレたちにとってはロックだったんだ。ロックだからといって騒音じゃなきゃならない理由はない。ロックで一番好きな要素ってサウンドの緊張感と開放感の関係。このアルバムには緊張と開放の連続が含まれている。ほら、アルバムのタイトルにも緊張と開放が含まれているだろ?

──確かに、人生の表と裏を表現しているような。そんなアルバム制作を通じて、ベン・ハーパーというアーティストのとどまることのない音楽創造力と、ロックの魅力に改めて気づかされました。ベン自身、アルバムを通じて得たものとは?

ベン:これまでのレコーディングでは感じることのできなかった種類の充実感を味わうことができた。前作までは、自分が輪の中心にいて、そこにサポートしてくれるアーティストがいたというスタイルだったけど、今回オレは正方形の角のひとつになったというか。4人が対等な立場で音楽を響かせたんだ。それが、とてもエキサイティングでフレッシュな感覚を与えてくれた。最高の時間を過ごせた気分だよ。

──では、今後もリレントレス7は活動を続けていくと?

ベン:そう、これは一度限りのプロジェクトではない。もう数枚アルバムをリリースしたら、ベン・ハーパーの名前を取って、リレントレス7のメンバーの1人として、活動していくつもりなんだ。

──そうなんですね!また、夏には5年ぶりとなるフジロック出演が決定しました。

ベン:待ちきれないよ!待ちきれない!フジロックは、最高の環境の中での最高のフェス。オレが頭の中でイメージしているライヴをみんなに見せることができれば、って願っている。このバンドでフジに立つことを想像しただけで、鳥肌がたってくるよ!

インタビュー・文:松永尚久

◆iTunes Store ベン・ハーパー&リレントレス7(※iTunesが開きます)
◆ベン・ハーパー・オフィシャルサイト
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