映画のように歌う、映画のような人生を歌う鈴木祥子

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浜離宮朝日ホール。室内楽のホールで行なわれたコンサート<鈴木祥子 in 6月の映画 ~Le cinema de juin~>に出かけた。これは、7月25日から渋谷UPLINK Xで公開される鈴木祥子ドキュメンタリー・フィルム『無言歌』に絡めたコンサートだ。コンサートでは『無言歌』の一部も一足先に公開された。

ステージにはグランドピアノが一台。主役の登場を待っている。19時5分。客電が落ちピアノの音が流れる。そして『無言歌』の映像の断片がスクリーンに映し出される。歌う彼女。泣く彼女。日常の彼女がそこで生きている。

そんな映像のあとに現れたのは、ピンクのワンピースにピンクの靴、ピンクの髪飾りの鈴木祥子。『無言歌』の挿入歌である「DO YOU STILL REMEMBER ME?」からスタート。暗くもなく明るくもなく、とてもニュートラルにコンサートがスタートする。この淡々とした感じ、そして、ライヴハウスとは違う空気感に、私はまだ少し戸惑っている。

続いて「ローズピンクのチーク」。高い天井に響く声に不意に酔い始める。まるで魔法のようだ。急に世界に引きこまれた。

歌い終わったあとに、「ドキュメンタリー・フィルムにちなんでみまして、『無言歌』のなかで歌われている曲を歌います」とコメント。「リラックスして、ゆっくり聴いていってください」とも。確かにライヴハウスでのライヴとは違う、今日はそうコンサートを聴きにきたんだ、と思う。

そして「ただの恋だから」。「こんなに in love になれる頃があったなぁと思う。そして、much in loveな女性を歌った歌」と紹介。確かに、<近くにいると からだふるえる>ような恋。<呪いのように朝から何もたべられない>なんて恋、強烈です。

季節にあわせて「あじさい」。久しぶりに聴く。とてもダイナミックな演奏という印象を受けた。このあと数曲続いて、第1部が終わる。ここでの選曲は、とても彼女のプライベートを現わしているように感じた。彼女の曲からこぼれ出る、彼女の“生きている”という肉声が強い曲が集められているようだ。

1部と2部を繋ぐのは、『無言歌』のプレ上映。原田真二さんとのシーン、鈴木慶一さんとのシーン。そして、バッハについて語るシーン。

プレ上映のあと、再び現れた彼女は、さっきまでのピンクの衣装とはまったく違う。黒に大きな花柄のワンピース、そして帽子、模様のある黒い靴。そう、まるで映画のヒロインのよう。

プレ上映に対して「恥ずかしかった~」と可愛い表情を見せてくれた。

そして、映画のテーマソングシリーズへ。『慕情』から「慕情のテーマ~Love is a many splendored thing」。『ブルー・ハワイ』から「好きにならずにいられない」や『ボーイズ・オン・ザ・サイド』から「YOU GOT IT」など。名曲が、鈴木祥子の色に染められて、天高く響く。

映画シリーズのあとは、女シリーズへ。『無言歌』の主題歌である「I'LL GET WHAT I WANT(超・強気な女)」。続いて「こんな上品な場所でやるのははばかれるけど」と言いながら「25歳の女は」。

最後に『無言歌』のタイトル曲をラララだけで歌った。

そして、アンコール。黒のワンピースから一転、Tシャツとジーンズに着替えた彼女が、軽やかに登場。まずは告知タイム。そして、映画のようにストーリーがあるということで、「恋のショットガン」。

ピアノだけで綴られたコンサートに、ここでギターが登場。チューニングをしたあとに「SWEET SERENITY&chocolate milk tea」。そして、1000年以上前に生きた和泉式部をトリビュートしたという新曲が歌われ、コンサートが終わった。

『無言歌』が、公開されるのは、まだ1ヵ月以上も先。少しだけ見せられて余計に見たくなった。彼女自身が自ら撮った偽りのない彼女がたっぷりみられるんだと期待する。

<SINGS“SHO-CO-SONGS collection2”>
2009年6月21日(日)
@南青山マンダラ

<鈴木祥子ドキュメンタリー・フィルム“無言歌~romances sans paroles~”>
7月25日~8月7日レイトショー公開
@渋谷UPLINK X

「I'LL GET WHAT I WANT」
2009年6月10日発売
※7inch EP & Cassette Tape

◆鈴木祥子オフィシャルサイト

[寄稿] 伊藤 緑:http://www.midoriito.jp/
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