さよなら絶望先生、三度目の絶望。

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週刊『少年マガジン』で連載中の久米田康治による人気漫画『さよなら絶望先生』のテレビアニメ第3期シリーズ『懺・さよなら絶望先生』の放送が7月よりU局とBS11にてスタートした。

同アニメは『さよなら絶望先生』、『俗・さよなら絶望先生』の2期にわたり放送された人気アニメで、第2期シリーズ『俗・さよなら絶望先生』の放送が終了した際には、まさに「さよなら、絶望先生…」と絶望したものだったが、“三度目の絶望。”(意味:最初の二回と同様に、三回目も当てにならないということ。)という絶望的なキャッチコピーのもと、見事第3期シリーズとして復活。主人公の糸色望(いとしき・のぞむ、通称「絶望先生」)の声を担当している神谷浩史も、第3期アニメ化が決定し、「最高に嬉しかったデース。」とコメントしている。

そして今回のシリーズの主題歌を歌うのはもちろん、大槻ケンヂと絶望少女達。オープニング主題歌「林檎もぎれビーム!」は、大槻ケンヂと作編曲を手掛けるNARASAKI(COALTAR OF THE DEEPERS、特撮ほか)が生み出す独創的でモダンなロック・サウンドに、絶望少女達(声優アーティストたち)の愛らしい声がほどよく絡み合う、ラウドなのにスウィートな甘苦いナンバー。

そんな主題歌を歌う大槻ケンヂのインタビューをお届けする。

   ◆   ◆   ◆

――「林檎もぎれビーム!」で、ついに『さよなら!絶望先生』テレビ・シリーズでは3回目の主題歌を担当されます。今、どのような感想をお持ちでしょうか?

大槻ケンヂ:『絶望先生』に関わらせて頂いてからは、本当に驚きの連続でした。その前にも、いくつかアニメのお仕事をやらせて頂いたことはあったのですが、いわゆる“深夜枠アニメ”について知ったり、「大槻ケンヂと絶望少女達」というユニットとして声優さんたちとライヴをやったり、そこまでガッツリと関わった事は今までなかったので。そういうことの一つ一つが、すごく新鮮でした。「こんなに濃いファンがたくさんいる世界があったのか!」と、今のアニメ業界を垣間見るたびに、目から鱗がボロボロ落ちていって(笑)。アニメや声優のファンのみなさんって、すっごくエモーショナルじゃないですか? アニメやアニソンの世界のことについて詳しくなっていく度に面白い発見があったんですけど、この面白さをロックの世界に持っていかなくちゃダメだな、とも思わされました。“スタフェス(スターチャイルドフェスティバル2009)”とかに出させていただいて、声優さんとオーディエンスの関係を見ていると、その関係性が生み出すある種の共同幻想とか、共犯関係みたいなものを感じたんですよね。しかもそれを、オーディエンスそれぞれはファンタジーと認めながらも、みんなでガチなものとして共有しようとしているというか。それって、ロックで言えば若いエモーショナル系のバンドとか、ラウドロック系のバンドのライブにも見られる光景なんですよね。そういう意味でも、意外に近いんじゃないかな? って。今まで、接点がなかっただけなんだなって。

――大槻さんは、2009年<フジロック>にも<アニサマ>にも出演されるわけで、そういった点からもバイリンガルな存在ですよね。

大槻:どうなんですかね。でも2つ出るって、まだ水木一郎アニキでさえやってはいなかったことですもんね? 本当にすごいことをさせていただくなぁって、思っています。ロック・ファンとアニソン・ファンが混ざり合って、もっと面白い状況になればいいなぁとも思っていますし、そういう垣根をぶっ飛ばす状況ができたらいいですね。だからほんとは、<アニサマ>に筋肉少女帯で出て、<フジロック>に大槻ケンヂと絶望少女達で出たかったんだよなー。

――ロックにも共通する意識である、アニメ・ファンが作品や声優さんに抱く共同幻想の要素を、「林檎もぎれビーム!」では徹底的に歌詞に落とし込んでいますよね?

大槻:そうですね。僕が深夜アニメを見るようになって思ったのは、「きっとアニメ・ファンは、本当は持つ必要のないコンプレックスみたいなものを持っているのでは?」という部分だったんですよ。僕の青春に置き換えると、中学生や高校生の時代に、ラジオの深夜放送とかを聞きながら感じていた、「何でこんなにも面白いサブカルチャーがあるのに、一般の人は認めようとしないんだ!」といういきどおりというか……。

――誰に向けていいのか分からないルサンチマンというか。

大槻:そうそう。そういう怨念めいたものを楽曲に落とし込んできたのが、これまでの「人として軸がぶれている」とか「空想ルンバ」だったんですね。でも今回は、今までの2曲よりもより深くアニメ業界やオーディエンスとの関係を知ったからこそ書けた歌詞だと思うんです。歌詞の<君が想うそのままのこと歌う誰か見つけても すぐに恋に落ちてはダメさ>とか、声優さんたちに<お仕事でやってるだけかもよ>とか歌ってもらってますけど、決してアニメや声優ファンを茶化しているわけではないんですよ。その後で歌われているのは、そうと分かっていても突き進むことで、みんなで生み出す幻想のシャングリラが待っているということで。それって、本当にそうだと僕は思っているし、僕もそこに参加したいという思いがあるんです。だって、僕が高校生の頃に“スタフェス”に行っていたら、もしかしたらロックやってないかもしれないって、本当に思いますから(笑)。

――「林檎もぎれビーム!」は、今までにも増してヘヴィなサウンドが際立った、モダンなラウドロックに仕上がっています。しかも声優さんが歌う要素も増えていて、まさにこれまでの集大成的な楽曲ですよね。

大槻:最初に関わらせていただいた時から、ラウドロックをアニメ・ファンに楽しんでもらおうという思いで、NARASAKI氏と一緒にやってきたんですけど、回を重ねるごとにNARASAKI氏がのめり込んでいったんですよ。彼の声優さんに対するディレクションとかもどんどん上手くなっていって、ラウドロックと声優さんの声が生み出す新しい面白さを、上手いこと追求していて。それが、今回の「林檎もぎれビーム!」できっちりと出せたんだろうなって、思っています。

――ちなみに、この「林檎もぎれビーム!」という合言葉には、どのような意味があるのでしょうか?

大槻:これはですね、60年代に“宇宙友好協会”、通称“CBA”というUFO研究団体があったんですよ。初めは普通の団体だったんですけど、そこが次第に、代表の人の意向でちょっとカルトめいた団体になっていったんですね。その人がある日、「もうじき地球の軸がブレてカタストロフが起こるから、その時は「リンゴ送れ、C」っていう合言葉を送る。それを受け取ったら、CBAの会員は指定の場所に逃げるように」という宣言をした、「りんご送れ、C事件」というのがあったんです。その事件、僕なんか好きなんですよ(笑)。『絶望先生』にもカルト教団みたいなのが出てくる回もあるし、もしかしたら『絶望先生』のファンもこの話が好きなんじゃないかな? と思って盛り込んでみました。だから最初は、タイトルも「リンゴ送れ、C」だったんです。だけどよく考えたら「リンゴ送れ、C」っていう歌が深夜のブラウン管から聴こえてきたら、ご存命の“CBA”の方が集まってきちゃうかもしれないじゃないですか? それはちょっとと(笑)。なので、そこからいろいろな言葉遊びを経て、「林檎もぎれビーム!」でいこうと決まったんです。

――大変興味深いお話でした(笑)。それでは最後に、『絶望先生』ファンと大槻さんのファンに、メッセージをお願いします。

大槻:今回の『懺・さよなら絶望先生』は、僕も毎回リアルタイムで見て、皆さんと一緒に楽しみたいですね。僕もう40過ぎているんですけど、アニメというものを改めて勉強したいと思っているんですよ。声優さんの世界も含め、アニソンの世界も含め、良い部分を自分なりにたくさん吸収したいという気持ちがあるんです。そうやって僕も勉強するので、もしよかったらアニメ・ファンのみなさんも、僕のやっているロックの世界の面白さにも触れてほしいなって思っています。僕のファンのみなさんは、もっとアニメの世界に入ってきてみてください。リンクしていけば、みんなでもっとハマリますよ(笑)。

ちなみに『懺・さよなら絶望先生』第2弾エンディングテーマ「暗闇心中相思相愛」は、なんと糸色望(神谷浩史)と絶望少女達たちが歌っている。絶望先生の歌声に絶望…するかどうかは、オンエアを見てから決めることにしよう。

「林檎もぎれビーム!」
KICM-3192 ¥1,200(tax in)
2009年7月23日発売

◆『懺・さよなら絶望先生』
◆マイスペース 懺・さよなら絶望先生特集ページ
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