▲タワーレコード渋谷店
音楽の販売/流通がダウンロードに移りつつあり、パッケージであるCDが不振と言われている中、店頭でCDが売り切れになっているほどの熱い注目を集めているアーティストをご存知だろうか?以前から一部のコアなリスナーの間で自主制作音源が話題となっている、ピロカルピンというバンドだ。

ピロカルピンはVo、Gの松木智恵子をメインに据えた4人組ギター・ロックバンド。早速音を聴いてみると、なるほどと納得。なんと言っても特徴的なのは、作詞・作曲も手がける松木の持つ天性の声と、蜃気楼のような幻想的なイメージを醸し出す新感覚のサウンド。2008年は<MINAMI WHEEL>に出場を果たすなど、徐々に知名度が高まる中、大手レコード店のバイヤーも彼らの音楽性に注目。7月3日にTOWER RECORDS限定の1st Single「人間進化論」とHMV限定の1st Single「京都」が2枚同時にリリースされると、店頭への問い合わせが相次ぎ、あっという間に完売になった。

▲HMV限定でリリースされた「京都」(左)と、TOWER RECORDS限定でリリースされた「人間進化論」(右)
というのも、これには仕掛けがある。まず2枚とも1曲入りで税込100円というワンコインCD。売れれば売れるほど赤字が膨らむという前代未聞のパッケージ商品だ。また、この2枚を並べるとジャケットがぴったりつながり、1枚の絵になるというファンシーな作りになっていた。ただし2枚そろえるには、TOWER RECORDSとHMVで別々に購入しなくてはならない。なかなか面倒ではあるが、今だかつてない掟破りの展開方法と、企画としての斬新さがうけた。

数量限定での販売ということもあり、店頭に並ぶやいなや、初日で完売してしまう店舗も。TOWER.JP J-INDIES週間予約チャートで1位、週間セールスチャートで2位、オリコン・インディーズチャートにも2枚同時にランクインするなど、新人としては異例の盛り上がりを見せた。7/3付の読売新聞にも取り上げられ、「ライバル2社がジャケットデザインで初提携」と紹介されていた。

このCD、無料配信のようなプロモーション効果を狙ったものだが、配信と明らかに違うのは、やはりパッケージとしての魅力が十分に備わっていること。100円だからと言って妥協はない。安っぽさは皆無、むしろ美しいイラストの紙ジャケ仕様で、何故これが100円なのかといぶかしく思えるほど。現在はほとんどの店頭で入手不可能となっており、オークションで1000~2000円のプレミアが付くほどだ。

そんなピロカルピンだが、8月5日に先の先行シングル2曲を収録した6曲入りミニ・アルバム『落雷』を発売。発売初日のTOWER.JPチャートでは、矢沢永吉、ムラマサ☆に続き3位にランクイン。バイヤーや店頭スタッフも絶賛しており、多くの店舗で大きく展開されている。TOWER.JPでも「今年確実にくる逸材中の逸材」と大プッシュ。たしかに楽曲やサウンドはもちろん、ジャケットやパッケージの隅々にまで強烈なこだわりを感じさせる内容に仕上がっている。

◆「人間進化論」プロモーション・ビデオ
◆『落雷』全曲試聴

不況にあえぐ音楽業界。タイアップが付かなければ、リリースすらできないアーティストもいるときく。大きな宣伝材料がなければ、CDを受注するCDショップも二の足を踏む。宣伝費をかけなければCDが売れない⇒CDが売れないから宣伝費がかけられない、という悪循環が生じていく。

そんな中、CDというパッケージを武器にして自力で勝負していくピロカルピン。CMソングやテーマ曲としてではなく、まずは音楽の中身を正面からリスナーに問いたいというアーティストの本質が芯を貫いている。そして彼らの作品を評価するオーディエンスも増えてきている。テレビやタイアップ主導型のプロモーションとは無縁の、しかしながら素晴らしい音楽との出会いに喜びを感じ、自分の感性で音楽をチョイスするリスナーもまた増えてきているのだ。

◆ピロカルピン・オフィシャル・サイト
◆ピロカルピン・マイスペース