増田勇一のライヴ日記 エイミー・マン@渋谷AX

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とてもいいライヴを観たのでご報告しておきたい。実は長年こっそり好きなエイミー・マン(べつにこっそりすべき必要は何もないのだけども)が4年ぶりの来日公演を行なったので、8月25日、いそいそと渋谷に出かけた。「どれくらいファンがいるんだろう?」という失礼かつ素朴な疑問も抱きつつ渋谷AXに到着してみると、正直、想像していた以上の混雑ぶり。まずこれが最初の嬉しい誤算だった。

◆増田勇一のライヴ日記 エイミー・マン@渋谷AX ~写真編~

そして次の誤算は、2008年9月にリリースされた最新作『スマイラーズ』を中心とした演奏内容を当然のごとく想定していたら、それがあっさりと蹴散らされたこと。とはいえもちろん、いい意味で。言ってみれば、演奏形態は『スマイラーズ』に通ずるシンプルさなのだけども、セット・リストはレア曲や映画のサウンドトラックに収録されていた曲、彼女自身いわく「これまで演奏したことのない曲」までも含んだ、ある意味マニアックなもの。しかしそれでも、ヒット曲満載のライヴのような体感速度で時間が過ぎて行ったのは、この人の音楽が本当に心地好いからだろう。

ステージ上にはあれこれ楽器が並べられているのだけども、演奏者はエイミー自身と2人のサポート・ミュージシャンのみ。しかも典型的なトリオ編成バンドの演奏というわけじゃなくて、各自の担当楽器が演奏曲によって変わる。そういえばこの人の在籍していたティル・チューズデイはボストンを拠点としていたバンドで、彼女自身もかのバークリーで音楽を学んでいた人。女性シンガー・ソングライターというと“弾き語り”以上の次元で楽器を操る人というのは少数派ということになるのだろうが、彼女の場合は歌い手であることと演奏者であることがすごく近い次元にあるんじゃないかという気がする。もちろん脇を固める2人の技術とさじ加減も素晴らしく、なんだか「ものすごく高度な人たちが学校の音楽室で遊んでいる」といった雰囲気があった。

そんなふんわりとした空気のなかでめずらしくワインなど呑みながら観ていると(いつもはビールだけどね)、いつのまにかライヴは終了。普段なかなか味わうことのない“さらりとした感動”がそこにはあった。アンコールではティル・チューズデイ時代の看板ヒット曲、「ヴォイシズ・キャリー(愛のVoices)」も披露。当時とは異なるアコースティックなアレンジで、手触り自体はまるで違っていたのに、楽曲そのもののきらめきはまったく損なわれていなかった。

そういえば僕は1986年、ティル・チューズデイの初来日公演をしっかり観ていて、幸運にも楽屋でエイミーと対面している。ヘヴィ・メタル専門誌の編集者だったくせに。ちなみに、そのときの印象は「こんなに背の高い人なんだ!」。実際、彼女は180cmを確実に超える長身。この夜も、その姿は人垣を間からもよく見えたし、相変わらず美しかった。

で、もうひとつ思い出したのが、前述の初来日公演が、ものすごい低価格で新進アーティストばかりが観られるショウケース・シリーズの一環として行なわれたものだったということ。なんだかそういうライヴ、今みたいな世の中だからこそあって欲しい気がするんだけども。各メーカー及びプロモーターの皆様、いかがでしょうか? そしてもちろんエイミー自身の次回来日も、そう遠くないうちに実現して欲しいところだ。

<エイミー・マン@渋谷AX>2009年8月25日 1.Moth
2.Nightmare Girl
3.Momentum
4.Build That Wall
5.Par For The Course
6.Amateur
7.This Is How It Goes
8.Wise Up
9.Save Me
10.You Could Make A Killing
11.Little Bombs
12.31 Today
13.Freeway
14.Driving Sideways
15.Today's The Day
アンコール
16. One
17. Voices Carry
18. Deathly

増田勇一
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