ギブソンから、衝撃的なSG登場
ギブソンから、衝撃的なSGがリリースされた。その名も「Zoot Suit SG」だ。
「Zoot」という言葉は、もともとジャズのスラングに由来し「先端的なスタイル」を意味するという。見ての通り、マルチピース素材を起用したこのモデルを、エレキギターの最先端をひた走るギブソンが「最先端」と位置づけたところに重みがある。
◆ギブソンから、衝撃的なSG登場 ~写真編~
同じモデルでもボディ材が1ピースであるか2ピースであるかによって価格も変わる。材による希少性の差異、産出国による価値の違いなどは、音に対する影響以上にモノとしての楽器の価値を左右してきた。産業が発展し、経済がぐんぐんと成長している拡大基調の世界市場の中で、合板で作られた楽器に愛情を注いでくれるプレイヤーなどはどこにもいなかったのだ。
もちろん複数の材をプライし、強度、振動特性、そしてルックスの上でも完成度の高い楽器が開発され、一定の評価を得てきた歴史もある。様々なギターが考案され百花繚乱の70~80年代においては、スルーネックが流行し、アレンビックを筆頭に、アリアプロIIからKAWAIまで5~7プライのネック構造を店頭で賑わせた。しかしこの成功は、楽器としての美しさや手の込んだ職人による作り込みという要素による芸術性の付加が、楽器としての価値を向上させてくれたからにすぎない。スタインバーガーやアダマスなどの人工素材を大胆に取り入れた成功例もあるが、いずれも天然素材を凌駕するストーリーを持って、初めて市場を席巻することができたものだ。
天然素材より多くのメリットを持つにもかかわらず、マルチプライ材は希少性やナチュラルな偶然性といったドラマを生むことも出来ず、楽器差材としては、全く支持されることなく、今に至ったのがギターの歴史である。
そして2009年。未曾有の経済不況、深刻な温暖化問題。もったいない運動。そしてエコ。人々の意識も変わった。価値観も大きく変化した。そんな中での、人工合板材を全面に推し出して登場した、Zoot Suit SG。今だからこそ、まさしくZoot=最先端じゃないか。
レインボーカラーとなったZoot Suit SG、もちろんこの模様は塗装によるものではない。予め染色されたバーチ材を幾重にも張り合わせたブロック材を削り出すことで生まれるラインだ。
一枚のバーチ材の厚さは約0.075インチ。約1.91mmという薄さのため、ボディーでも20枚以上、ネック&ヘッドにいたっては、数十枚もの重ね合わせが確認できる。Zoot Suit SGは全体の平均重量が約5.7ポンド(=約2.5Kg)というから、エレキギターとしてはずいぶんと軽量なほうだ。これまでのSGより若干の重みを持って、より明るいトーンと豊かなサスティンが生み出されるという。
スペックは、伝統のギブソン・スタイルで、特に特筆ポイントはない。ネックシェイプも伝統のラウンデッド・プロファイル、ヘッドアングルは17度、チューン-O-マチック&ストップテールピース、ピックアップはフロントに496R、リアに500Tという、極めてスタンダードなスペックだ。ちなみに塗装は2種類のサテン・ニトロセルロース・ラッカーが施され、ダメージにも強いという。このようなルックスだが、ナチュラル塗装というところだろう。
なお、既にお気付きのこととは思うが、綺麗なカラーラインを出すため、トップ、及びバックとも緩やかなアーチが描かれたボディーシェイプとなっており、通常のSGのもつカッタウェイ・ラインやコンターラインは描かれていない。
今回、Zoot Suit SGには、Rainbow、Black&Red、Black&White、Black&Natural、Red&Blueの5パターンのカラーが発表される。ギブソン・ロゴがプリントされたギグ・バックが付属するが、ツアーなどで酷使することが予測される場合は、別途ハードケースをご入手いただきたい。
なお、価格、発売時期などの詳細は発表されていないが、編集部調べでは、おおよそ市場価格20万円程度ではないかと推測される。Zoot Suit SGを雛形にすれば、複数の材を組み合わせ、理想的な音響特性と強度を確保することも可能であろうし、これまでではなかなか入手し得なかったサウンド特性を安定的に供給することも可能だろう。過去一部のギターに起用された圧縮材であるウッドファイバーをも視野に入れれば、素晴らしいサウンドが安価に設計できることにつながるだろう。Zoot Suit SGは、これからのギター市場の行方を担う、奇跡の改革元年を刻むのかもしれない。
フィニッシュ
Rainbow
Black and Red
Black and Natural
Black and Orange
Red and Blue
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