音楽ライター赤木まみの「ぐずらのつづら」【2】―映画『なくもんか』

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前から観たいと思っていた『なくもんか』をやっと観てきました。言わずと知れた宮藤官九郎脚本、阿部サダヲ主演の映画です。

ハイテンションな主人公の人物設定。普通なら、最初からハイテンションだと観てる側は若干引いてしまって、なかなか物語に入り込めなかったりするものだけど、そこは緩急自在、押し引きの錬金術師クドカン。のっけからつかみはOK。で、そこからぐいぐい観るものを引き込んで、笑わせたりホロリとさせたりしながら、最後はシリアスな映画と同じくらい、もしくはそれ以上に、人間のなんたるかを浮かび上がらせてしまう。

これはいつも思うことだけど、いい作品、すぐれた作品というのは本当に、ある種の真理や何かの本質の断片を浮かび上がらせるものだな~と。それは映画に限らず、小説しかり、漫画しかり、舞台しかり、音楽しかり。

例えば、「僕は失恋して悲しい」という歌があったとして、すぐれた歌は失恋の悲しみや痛みと同時に、その奥から人間本来が持つ哀しみや孤独をも伝えてきたりする。一方で、歌い手が一生懸命「僕は悲しい」と歌っているのに残念ながら何も伝わってこない歌もあれば、本質的な部分は伝わってこないまでも失恋の悲しみはとりあえず伝わってくるものもあったりして。その違いって何なんだろう、とこれもいつも思う。まぁ簡単に言ってしまえば“表現力”の違いなんだろうけれど。

ところで『なくもんか』のエンディングでは、いきものがかりの「なくもんか」がかかるわけですが、これがまた、とても良かった。ゆったりとしたメロディに、それこそ人間誰しもが持つ哀しみや、それでも失わない希望が描かれ、それを歌う吉岡聖恵のせつなくまっすぐな歌声が映画の余韻とリンクして、体中にじわ~っと染みました。

人間、みんな心の内側にそれぞれ何かしら哀しみを抱えてたりするものだけど、でもみんな一生懸命頑張って生きてるんだな、なんて思いつつ。

というわけで、本日のオススメは超ベタですが、いきものがかりの「なくもんか」です。

元々はこの曲を聴いて映画『なくもんか』を観たくなった私。で、映画『なくもんか』を観たら、最後にこの曲がかかって、帰る道すがらそれが頭の中でヘビロテ。そうなるとまた映画『なくもんか』を観たくなり、観ればいきものの「なくもんか」が頭の中でリフレインし……って、これ、甘いものを食べると辛いものが食べたくなって、辛いものを食べると甘いものが食べたくなる無限の甘辛ループと同じ?………違うか!?(←漫才コンビ“ものいい”ふうに。←知らんか!?)

それじゃまたね。LOVE!

赤木まみ

◆いきものがかり オフィシャルサイト
◆映画『なくもんか』公式サイト
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