美青年ピアニストのエレガントな挑戦

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写真はフランチェスコ・トリスターノ・シュリメ。ルクセンブルグ出身の若きクラシック・ピアニストである。

▲photo by Rikimaru Hotta
フランス国際オルレアン・コンクールでグランプリを受賞するなどクラシック界で高く評価されている彼がシーンに登場した際、海外メディアは、その才能の出現を“クラシック界の貴公子登場!”と形容。今、ヨーロッパで話題を呼んでいる人物である。

これまで、名匠と言われるミハイル・プレトニョフ指揮でロシア・ナショナル交響楽団と共演した作品、またラヴェルやプロコフィエフを録音した作品など数作品が発表されているが、ここ日本では、それらほとんどを入手する事が難しい。

しかし、ここ日本でも入手できる面白い作品があるので紹介しよう。

彼は音楽を学ぶ為、10代の時にニューヨークのジュリアード音楽院に在籍していたのだが、ある日、ニューヨークで足を踏み入れたクラブで掛かっていた、ディープ・ハウスやデトロイト・テクノといったダンス・ミュージックに大きな衝撃を受けたという。「音楽を一枚の大きなアートとして捉えよ」との教育をフランスで師事したエミール・ナウモフから授けられていた彼は、そこで経験したクラブ・ミュージックを自分自身の音楽表現の一手段として取り入れ始めたのだ。

その大胆なる挑戦が実を結んだのが、彼のフランチェスコ・トリスターノ名義の作品『not for piano』と、彼がけん引するユニット、Aufgang(アウフガング)の作品である。

ピアニストの作品でありながら『not for piano』と名付けられたこの作品は、ピアノ1台の生演奏を基本としながらも、テクノ・ミュージックの美しさと躍動を見事に表現している。クラブやダンス・ミュージックに無縁な方でも、このシンプルで力強い美しさには心を奪われるであろう。

一方、Aufgang(アウフガング)は、彼がニューヨークのジュリアード音楽院で出会ったピアニスト、ラーミ・カリーフェ、フランスのエレクトロ/ロックシーンで活躍していた同じくクラシックを背景に持つドラム/パーカッショニスト、フェニックスのエイメリック・ウェストリヒと共に結成したユニット。

2台のグランド・ピアノと1台のドラム・ユニットという画期的な編成のこのユニットは、時に美しく、時に激しく奏でられるピアノの旋律と、ドラムとエレクトロニクスによる躍動するリズムがドラマティックに展開する。ライブの際にも1台のドラムを向かい合った2台のグランド・ピアノで挟み込むようにレイアウトされたステージは圧巻である。これぞアコースティック/エレクトロニックの垣根を越えた3人だけのオーケストラといえるだろう。

この両作品は、クラシック界、ダンス・ミュージック・シーンという、一見交わることの無さそうな世界の音楽関係者、音楽ファン達を強く惹きつけてしまったのだ。

だが、彼の音楽は、限られた一部の音楽ファンの為だけに存在するのではない。クラシックやダンス・ミュージックに無縁な方にこそ、一度手に取ってみる事をお奨めしたい。クラシック(アコースティック)の美しさ、激しさ、ダンス・ミュージックの躍動感を併せ持った音楽が新しい音楽体験への扉を開いてくれるだろう。

なお、フランチェスコ・トリスターノ・シュリメは、2010年2月に個人としての来日コンサート・ツアーも決定している。音楽界でエレガントな挑戦を続ける若き美青年ピアニスト、大胆なるその才能に魅了されることだろう。
▲photo by Rikimaru Hotta

フランチェスコ・トリスターノ
『ノット・フォー・ピアノ』
XECD-1103-1104 ¥2,580

アウフガング
『アウフガング』
2010年2月3日発売
XECD-1125 ¥2,380(税込)

<フランチェスコ・トリスターノ・シュリメ 2010年来日公演>
2010年2月20日(土)彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
2010年2月21日(日)Hakuju Hall
2010年2月23日(火)東京文化会館小ホール
2010年2月25日(木)サンビームやない
2010年2月27日(土)大阪倶楽部
2010年2月28日(日)藤沢リラホール
[問]ユーラシック 03-3481-8636
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