増田勇一の『今月のヘヴィロテ(2月篇)』

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ふと気がつけば3月も第1週が終了。去年の今頃はハノイ・ロックスのフェアウェル・ツアーに燃えていたわけだけども、それからちょうど1年を経た今週はバックヤード・ベイビーズが「最後かもしれない日本公演」を行なう。さらにはAC/DCの来日も控えているわけで、新譜よりも目先のライヴに神経が向かいがちな今日この頃だが、この2月にリリースされた作品たちのなかにも美味しいものがたくさんあった。なかでも特にがっつり聴き込んでいたのは以下の10枚だ。

●FAKE?『SWITCHING ON X』
●MASSIVE ATTACK『HELIGOLAND』
●SPOON『TRANSFERENCE』
●STORY OF THE YEAR『THE CONSTANT』
●BLOOD RED SHOES『FIRE LIKE THIS』
●Mari Hamada『Aestetica』
●SIGH『SCENES FROM HELL』(輸入盤)
●FEAR FACTORY『MECHANIZE』(輸入盤)
●OVERKILL『IRONBOUND』
●東京事変『スポーツ』

勝手ながら今回からリスト内のみ、洋楽作品の表記を欧文にさせていただくことにした。というのも、カタカナ表記が並ぶなかに国内アーティストの名前だけ欧文表記で混入してくるケースがあまりにも多くて気持ち悪いのと、「国内盤未発売だから欧文表記」というのもなんだか妙だから。

そんなことはさておき、今回も雑食性の高いラインナップになった。が、聴いた回数を厳密にチェックしているわけではないから確かなことは言えないけども、おそらくこの2月、これらの作品のなかでいちばんの頻度で聴きまくっていたのは、FAKE?の『SWITCHING ON X』だったと思う。未聴の方は今からでも是非チェックしてみて欲しい。3月14日には大阪、22日には東京でのライヴも控えている。

そのFAKE?と同じくらい日常的に聴いていたのがマッシヴ・アタック。デーモン・アルバーンが参加していたりする連鎖からブラーの古いアルバムを引っ張り出して聴いたりもしていたな。スプーンもよく聴いた。日本での認知度からは考えられないほど全米チャートでの実績はすごいし、もっと普通に広く聴かれていていいはずのバンドだと思う。が、かつてよくあった「アメリカでの活況を考えると日本での状況には淋しいものがある」というやつとはちょっと違う。いまや、アメリカのヒット・チャートのほうにこそ特異さを感じさせられることも多々あるわけで。

浜田麻里の新作は、なんとLOUDNESSの高崎晃なども参加していて、想像していた以上にロックな美学が感じられる作品に仕上がっている。自身の資質を充分すぎるほどに熟知している人の強み、凄みを感じさせる1枚だ。付け焼刃のコンセプトだけでは、こんな作品は成立し得ない。久しぶりにライヴも観てみたくなった。

ストーリー・オブ・ザ・イヤーは、世間での一般的な認知のカタチがどういうものであれ、僕自身はハード・ロック・バンドとして聴いている。技術も伴った疾走感重視型ツイン・ギターの匂いと、アッケラカンとした空気感は、長年メタルの染み付いてきたこの耳には、往年のナイト・レンジャーなどに通じるものとして伝わってくる。実に気持ちいい。

東京事変については何も説明するまでもないだろうし、ブラッド・レッド・シューズについては近くインタビュー記事をお届けするつもりなのでお楽しみに。オーヴァーキルの“健在”を超えた説得力には脱帽したくなるし、ジーン・ホグラン(Dr)の加入でダブル巨漢体制(笑)になったフィアー・ファクトリーも早々に輸入盤を買って良かった。で、それ以上に濃い中毒性を孕んでいるのがSIGHの新作だったりもするのだが。

そしてすでに3月リリース分の新譜についても、ゴリラズをはじめ美味しいものがたくさん出回っている今日この頃。元気な音楽ファンの皆さん、CDショップに足を運びましょう。「気がついたらお気に入りの店がなくなっていた」なんてことになる前に。

増田勇一
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