サイモン・ラトル、内田光子とベートーヴェン「ピアノ協奏曲」全曲を演奏

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ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を率いるサー・サイモン・ラトルの動向を追いかける連載ニュースも、今回ですでに第五回目。次回の第六回で最終回を迎えることになる。

アニメ『のだめカンタービレ フィナ-レ』がテレビ放映中、また映画『のだめカンタービレ最終楽章 後編』の公開も近づき、クラシックがこれまでよりさらに一般的なものになってきた昨今。ベルリンフィルという世界最高峰のオーケストラすらも身近に感じてもらうべく、情報をここにお届けする。

さて今回は、ピアニスト内田光子と共演したコンサートの模様をお伝えしよう。

2月、ベルリンのクラシック音楽界では、サー・サイモン・ラトルとベルリン・フィルがベートーヴェンの「ピアノ協奏曲」全曲を演奏して話題を呼んだ。ソリストは、ドイツでも絶大な人気を誇る内田光子。演奏会は4回にわたって行なわれたが、同団においてひとりのピアニストが全5曲を弾くことは、たいへん名誉なこと。少なくとも過去20年間にこの待遇を受けたのは、マウリツィオ・ポリーニただひとりである。日本の音楽ファンとしては、誇らしいかぎりと言える(2月3・4、9・10、13・14、18~20日)。

その際のプログラムは、シベリウスの交響曲をまとめて取り上げた点でも際立っていた。ベルリン・フィルにおけるシベリウスは、カラヤンの名演奏が高い評価を得ているが、ラトルは今シーズン、その全7曲を指揮することになっている。今回は、最初の4曲のシンフォニー(第1~4番)が演奏され、カラヤンでさえ指揮したことのない「交響曲第3番」も、初めてベルリン・フィルのプログラムに載った。聴衆は、ラトルの果敢な挑戦に万雷の拍手を送り、まずは成功の模様。なお4月には、完結編として「交響曲第5~7番」が演奏されることになっている。

ベルリン・フィルは、2007年よりユニセフの親善大使に任命されているが、最終回20日の演奏会は、ハイチの地震救済コンサートに急遽変更された。その際ラトルと内田は、ギャラなしで演奏。ネット中継システム「デジタル・コンサートホール」のチケットを含む入場券の売上(約1,400万円)は、すべて現地のインフラ再建のために寄付される。

この日演奏された「ピアノ協奏曲第4番」では、内田の美音が際立ち、客席はため息をつくばかり。現地の新聞『ベルリナー・モルゲンポスト』も、「スタンディング・オヴェージョンが当然の見事な出来映え」と彼女の演奏を称えている。

文:城所 孝吉(音楽評論・ベルリン在住)

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◆サイモン・ラトル・オフィシャルサイト
◆映画『のだめカンタービレ最終楽章』オフィシャルサイト
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