増田勇一の『今月のヘヴィロテ(3月篇)』

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1ヵ月のご無沙汰でした。例によって2月に国内発売された新譜のなかから、日常的によく聴いたものをザクザクとご紹介していきたい。そう、今回はなんだかザクザクしたラインナップなのである。

●AIRBOURNE『NO GUTS.NO GLORY.』
●SLASH『SLASH』
●POISONBLACK『OF RUST AND BONES』
●MUTINY WITHIN『MUTINY WITHIN』
●SOLUTION.45『FOR AEONS PAST』
●DARK TRANQUILLITY『WE ARE THE VOID』
●SYBREED『THE PULSE OF AWAKENING』
●THE DILLINGER ESCAPE PLAN『OPTION PARALYSIS』
●kannivalism『helios』
●9 GOATS BLACK OUT『TANATOS』

2月のメイン・イベントは当然ながらAC/DCの来日公演だったわけだが、ちょうど彼らが日本上陸を果たしたその日にリリースされたのが、エアボーンの第2作。同じオーストラリアから登場した、文字通りAC/DC直系と言えるバンドだが、彼らの屈託のない熱血ロックンロールを聴いていると、自然と背筋も伸びるし歩調も軽やかなものになってくる。で、繰り返し聴いていると、なんだか今度はAC/DCが恋しくなってきてしまう。もはや「これが最後?」というのが既成事実みたいになっていた彼らの来日公演だが、まだまだ何度でも観たいものだし、ひとまわり大きく成長したエアボーンのステージも一日も早く目撃したいところだ。

スラッシュの作品については3月31日に発売されたばかりだが、すでに何度となく聴き込んでいるという読者も多いはず。この作品で改めて証明されたのは、スラッシュが「一瞬にして彼だとわかるフレーズや音色を持っているうえに、さまざまな場面に自分を当てはめてしまうことができる人物」だということ。あまりにも豪華すぎるゲスト・ヴォーカリスト陣のなかにあって、ロッコ・デルーカがしっかりと持ち味を発揮しているのが嬉しかった。ファーギーとの共演や、アヴェンジド・セヴンフォールドのM・シャドウズとのコラボは、もっともっと聴いてみたい気がする。

3月は、ヘヴィ級ロック作品のなかに興味深いものがたくさんあった。実はゴリラズやヨンシーも聴けばシャーデーの原稿を書いてみたり、Ken Yokoyamaの『Four』やフロッギング・モリーのライヴ盤を聴きながら酔っ払ったりもする筆者なのだが、なんだか3月は、ヘヴィでダークでカオティックだけども美学のある音世界のなかに閉じ込められている時間が長かったように思う。ダーク・トランキュリティやザ・ディリンジャー・エスケイプ・プランのような“信頼のブランド”のみならず、元スカー・シンメトリーのヴォーカリストが新たに始動させたソリューション.45、オペラ歌手としてのトレーニングを積んできたというフロントマンを擁するミューティニー・ウィズインのデビュー作、スイスから登場したサイブリードの第3作なども興味深かった。また、男臭さとメランコリアの同居するポイズンブラックの濃厚さには、「やっぱり美学があって、歌い手のキャラの濃いバンドがいいよなあ」と改めて感じさせられた。これはそのまま、いわゆるヴィジュアル系のなかにも僕の興味の対象が多々あることの理由にも重なってくる。僕的にはフィンランドのポイズンブラックも、名古屋の9 GOATS BLACK OUTも、そう遠くない次元で楽しめるところがあるのだ。そしてkannivalismの『helios』も、このバンドの想像力と創造性を感じさせる仕上がり。聴いていて、何度も唸らされた。

もうひとつ付け加えておきたいのは、ようやくこの3月に日本リリースされたアダム・ランバートのデビュー作。以前、輸入盤で扱ったことがあったので敢えて今回は選外としたが、やはりこの作品もよく聴いた。そして、すでに現時点で4月度の10選に当確なのが、ラットとコヒード・アンド・カンブリア。他にも「待望のリリース」がいくつもあるし、実際にCDショップに足を運んでみれば、あなたと出会いたがっている作品たちがたくさん待ち構えているはず。だから、まずは外に出てみよう。花粉とかに負けたりせずに。

増田勇一
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