「百鬼夜行奇譚」第一夜:【不眠】~Psycho Butterfly~[弐]

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Kaya 短編小説連載「百鬼夜行奇譚」第一夜:【不眠】~Psycho Butterfly~
[壱]
[弐]
[参]
[四/最終回]


   ◆   ◆   ◆

眠りに落ちる方法は、人によって様々であるが、大きくわけて二種類の方法がある。

ひとつは、頭の中を空っぽにして、何も考えないという方法。意識を徐々に白くぼやかして、真っ白な景色にとけ込むようにしているうち、やがて眠りが訪れる。

そしてふたつ目は、様々な思考をくり返し、すべての思考が飽和状態になったときに眠りが訪れるという方法。彼は物心ついたときから、後者であった。

幼い頃から、就寝時になると「眠りに落ちる瞬間はいつなのか」「その瞬間、何を思うのか」などと取り留めも無いことをあれこれと考えていた。そしてそんなことを意識し始めてしまうと、ますます眠りは遠のくばかりで、幼心に隣で眠る両親に気を遣い、二人を起こさぬよう、闇をじっと見つめて過ごすのだった。

うまく眠りを操作出来ぬまま、彼は成長した。高等学校を卒業すると、大学へは進学せずに、自宅近くで働き始めた。仕事は迷わず深夜勤務を選んだ。給金の良さもあったが、何より深夜に働くことは幼い頃から眠れぬ夜を過ごしてきた彼にとって、やっと自分の世界を見つけたように思えたのだ。

友人の大多数が夜眠ることに何の疑問も持たず、朗らかな陽光の下で活発に生活をする姿に、彼はある種の劣等感を抱いていた。自分は大多数と違う、異質のものだという思いは孤独を濃くしていった。

文:Kaya / イラスト:中野ヤマト

次回「【不眠】~Psycho Butterfly~」[参] 4月19日(月)公開予定

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Kaya 短編小説連載「百鬼夜行奇譚」
第一夜:【不眠】~Psycho Butterfly~
自室で不眠症に悩む青年。彼は、自らを憎んでいた。眠れぬ夜に、思い描く幻の蝶々。幻の蝶を追ううちに、彼は夢と現実の境界を失い始める。彼の目の前に現れた醜く美しい謎の生き物。夢の狭間で彼が垣間見たものは、夢か、現か、彼の心の闇か。心の闇を蝶々に見立て、不眠症の青年の心象風景を描く。

<Kayaマンスリーライヴ“DIVA”>
5月5日(水)池袋BlackHole
6月6日(日)池袋BlackHole
7月7日(水)池袋RUIDO K3
8月8日(日)新宿RUIDO K4
9月9日(木)高田馬場AREA
10月10日(日)渋谷RUIDO K2
11月11日(木)池袋BlackHole
12月12日(日)未定

◆Kaya オフィシャル・サイト「薔薇中毒」
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