増田勇一の全方位無差別インタビュー【1】ブラッド・レッド・シューズ「変則的2人組バンドがこだわった「パーフェクトな曲」の意味」

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誠に唐突かつ勝手ながら、このようなインタビュー・コラム枠を設けさせていただくことにした。ここでは音楽の種類や邦楽/洋楽といった垣根とは関係なく、さまざまなジャンルと世代のミュージシャンたちのインタビューをお届けしていく。最新のものばかりではなく、僕個人のストックのなかからの“蔵出し”も必要に応じて行なっていきたいと思っている。

今回お届けするのは、2ndアルバム『ファイアー・ライク・ディス』で飛躍的な進化をカタチにしてみせたUKの男女2人組、ブラッド・レッド・シューズ。この取材が行なわれたのは、去る2月16日のこと。つまりアルバム発売からわずか5日後に東京・代官山UNITで行なわれた一夜かぎりの来日公演が、大盛況のうちに終了した翌日のことである。

取材、取材、取材でぎっしりの1日を過ごしていたローラ・メアリー・カーター(Vo、G)とスティーヴン・アンセル(Vo、Dr)はやや疲れ気味で、特にローラはかなり眠そうだったが、僕が取材用のテープレコーダーを差し出した途端、「わ、今日の取材で初めてのテレコ登場。僕ら、アナログなものが大好きなんだ!」とスティーヴンが大喜び。ちなみにローラの手には、アナログ・カメラがあった。結果、そのままの温度感で、インタビューは続くことになった。

◆「同じ曲を5ヴァージョン録って、それをあとで合体させるとか。そういうのって馬鹿げてると思う」

――これが今日の最後の取材だとか。もしかしてちょっと疲れてます?

スティーヴン:うん、かなり。僕ら、正直な人間だからそれは認める(笑)。

――実に早くも5回目の来日だったんですね。僕はこれまでタイミングが合わず、今回ようやく初めて観ることができたんですけど、「どうして今まで観ずにいたんだ!」と思わずにいられないくらい昨夜のライヴは楽しかった。

ローラ:ありがとう。私自身もすごく楽しかった。ニュー・アルバムが出たばかりだし、そこからの曲たちを試してみるのにもいい機会だったし。

スティーヴン:うん。実際、新作に伴うツアーとしていいスタートを切ることができたし、自分でもいいライヴだったなと思う。

ローラ:会場の雰囲気も素敵だったし、ファンの反応も素晴らしかった。

――みんなしっかり『ファイアー・ライク・ディス』を予習してきてましたよね。

スティーヴン:うん、そう思う。あの反応の良さは正直、期待以上だったな。

ローラ:アルバムが出てから、まだ丸1週間も経っていないのに、なんかすごくて。

スティーヴン:まだそんなに聴き込めてるはずはないのに、曲を知ってるファンがたくさんいてくれた。あれはすごく嬉しかったな。

――実際、こういう時期のライヴというのは新曲発表会みたいな雰囲気になってしまいがちなところがあるけども、全然そんなことはなくて、まるで長くツアーをやってきた途中の1本という雰囲気だったし。

スティーヴン:そう感じてもらえたんであれば嬉しい。ただ、うまくやれた理由は自分でもわからないし、ラッキーだったとしか言いようがないな。一度もライヴでやったことのなかったのが3曲ほどあったけど、できるだけ多くの新曲をやりたかった。まだ聴いてない人も多いはずだから、前作からの曲やシングルの曲をやるのとは違ってリスクもあるし、うまくいく保証なんてない。だから正直に言えば、「いい反応が得られますように!」と祈るような気持ちで演奏してた曲もある。でも反応は上々だったし、本当に素晴らしいオーディエンスだなと思った。新曲に対する反応ばかりじゃなく、全体の雰囲気がとても良かった。早くもアルバムを熟聴してくれてるんだってことは、いくつかの曲に対して即座に反応があったことからもわかったし、みんな夢中になってくれていたように思う。

ローラ:うん。私もまったく同感。

――でも、初披露の曲があるときというのは、独特の緊張感が伴うはず。

スティーヴン:うん。でもそこは集中力で解決するしかない。それに、結果的には曲が半分くらい進んだところで一切の不安が消えたんだ。最初はちょっとドキドキしながら「集中しなくちゃ!」という意識で演奏し始めたんだけど、途中でオーディエンスが踊ってるのが見えたからね(笑)。そこから先は、自分自身も曲にのめり込むことができたよ。

ローラ:あの緊張感がたまらないのよね。初めての曲をやるのって、すごくエキサイティング。

――ニュー・アルバムからの曲たちをライヴで演奏してみて、改めて気付かされたことというのは何かあります?

スティーヴン:どうかな。考えたこともなかった。ただ、「ワン・モア・エンプティ・チェアー」という曲については、前々からそれなりに面白い曲だとは思ってたんだけど、いわゆるシングルになるような際立ったものだとは認識してなかった。だけど実際にステージで演奏してみて「これ、ヒットじゃん!」という感覚があったよ。この曲に限らず、今回のアルバムからの曲はどれもライヴ映えするものばかりだし、これから定番曲になっていくものがたくさんあるんじゃないかな。

――実際、「ライヴでやってみたら極端に感じ方の違う曲」というのは、ブラッド・レッド・シューズの場合はほとんど皆無なはず。確か、ほとんどライヴに近いカタチでレコーディングしてるんですよね?

スティーヴン:完全なライヴ・レコーディングってわけじゃないけどね。

ローラ:まずスティーヴンのドラム・テイクから録るんだけど、そのときも私は一緒にプレイするの。

スティーヴン:うん。それからギターを録って、ヴォーカルを重ねて…とやっていくわけだから、そういう意味では全然ライヴではない。だけど基本的にすべてがワン・テイクなんだ。最近はみんなプロトゥールズであれこれやったりするんだろうけど、僕らはそういうことはやらない。同じ曲を5ヴァージョン録って、それをあとで合体させるとか。そういうのって馬鹿げてると思う。どの曲もそうやって合体させたものじゃなく、ひとつのストレートなヴァージョンのまま収められてるんだ。
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