増田勇一の『今月のヘヴィロテ(4月篇)』

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黄金週間で曜日感覚を失っているうちに最初の3分の1が過ぎ去ってしまった5月。遅ればせながら、4月に国内発売された新譜のなかから、日々聴きまくっていた10作品をざっくりとまとめてご紹介したいと思う。例によって邦楽/洋楽の区別はない。

●RATT『INFESTATION』
●BULLET FOR MY VALENTINE『FEVER』
●COHEED AND CAMBRIA『YEAR OF THE BLACK RAINBOW』
●CYPRESS HILL『RISE UP』
●BLEEDING THROUGH『BLEEDING THROUGH』
●TRIPTYKON『EPARISTERA DAIMONES』
●SCORPIONS『STING IN THE TAIL』
●The DUST’N’BONEZ『DUST&BONES』
●9mm Parabellum Bullet『REVOLUTIONARY』
●UVERworld『LAST』

あちこちで絶賛されているラットの復活作、『インフェステイション』は、あくまで個人的感覚で言えば、このバンドの往年の代表作たちをしのぐ痛快さ。確かに目新しさはほぼ皆無だけども、ここまで潔く得意技ばかりを連発されると、何かひとつくらい文句を言ってやろうと考えているうちにアルバム1枚が終わってしまうほど体感スピードが速くて気持ちいい。また、かつてのロビン・クロスビーのポジションにおさまったカルロス・カヴァーゾ(元クワイエット・ライオット)の貢献度の高さも見逃せないところだ。

ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインの第3作に関しては、以前にもBARKSでは書かせていただいたが、とにかく「こうあってこそ、このバンド」というのが率直な感想。コヒード・アンド・カンブリアというバンドには、なんとなくコンセプチュアルでとっつきにくそうなイメージが伴いがちだが、内容的には難解な本がわかりやすい文章で丁寧に綴られているような、そんな感触が本作には伴っている。今作を入口としながら、このバンドがこれまで紡いできた物語を遡っていくというのも悪くないだろう。

ヒップホップについては何ひとつ専門的なことを語ることができない僕だが、それでもサイプレス・ヒルの6年ぶりの新作、『ライズ・アップ』からは全編を通じて心地好い刺激を味わうことができた。また、ブリーディング・スルーの今作での飛躍的進化/深化には素直に驚かされた。3月に来日した際のステージを観損ねてしまったことが今さらながら悔やまれて仕方がない。そして、かのセルティック・フロストの発展形というべきトリプティコンのデビュー作は、H.R.ギーガーによるアートワークがとても似つかわしい、実にまがまがしき1枚。6月には『EXTREME DOJO VOL.25』に参戦のため早くも来日を果たす彼らだが、こちらはなんとしてでも観たいところだ。

そして、スコーピオンズ。今作、『蠍団とどめの一撃』に伴うワールド・ツアーを最後に解散することをすでに明言している彼らだが、その潔い姿勢、自分たちの美味しいところを凝縮したかのようなこの作品から感じられる客観的な自己分析力の確かさ、加えてその徹底的なサービス精神というものには、本当に心の底からプロ意識の高さを感じさせられるし、敬服させられる。

さらに今回は、邦楽ロック作品から3枚を選出した。ダスボンも9mmもUVERも、それぞれ色の異なるバンドだが、「独自のスタンスとポジションを持ちつつ、しかもそれに縛られていない」という点では重なるものが感じられる。ことにThe DUST'N'BONEZについては、もっとこのバンドの稀有さが広く認知されてしかるべきだと思うし、ここにきて“あの頃のZIGGY”と音楽的に重なる匂いが漂ってきた事実もなかなか興味深い。ここで言う“あの頃”がどの時代を指すのかについては、敢えてこの場では語らずにおくが。

他にこの4月、頻繁に聴いていたものとしては、ビッグエルフの『鍵盤狂想曲 第1幕』や、ナイルの『神に嫌われし者たち』、MGMTの『CONGRATULATIONS』など。輸入盤ではピーター・ウルフ、国内インディーズではThe HANGOVERSなどもよく聴いた。そして5月に入ってからも素晴らしい新譜が続々と到着しているが、まず次回のセレクションに当確なのはデフトーンズ、ストーン・テンプル・パイロッツといったところ。国内ではラウドネスの新作もすごい。というわけで、来月もお楽しみに。

増田勇一
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