増田勇一のライヴ日記 D'ERLANGER@新潟club JUNK BOX(5/22)

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久しぶりに『ライヴ日記』をお届けしようと思う。数えてみれば、年が明けてから5月末までに観てきたライヴはすでに58本。今後、過去数週間のうちに観てきたさまざまなライヴについて、時系列を無視しながらあれこれと書き連ねていくことにする。もしかすると数ヵ月前のライヴについても、いずれ唐突に飛び出してくることになるかもしれない。

◆D'ERLANGERライブ画像

5月22日、僕はカメラを抱えて新潟に向かった。目的はD'ERLANGERを観ること。彼らは現在、<D'ERLANGER live 2010 La bouche de 8 ange>と銘打たれた新規ツアーを展開中。毎週の土・日曜日のスケジュールを塗りつぶすようにして組まれたこのツアーは、関東近郊を中心とする全8箇所をまわるもので、すでに新潟、郡山、熊谷、高崎でのライヴが熱狂のうちに終了。ちょうど今、折り返し地点に到達し、残すところ4公演となっている。

僕が目撃した新潟でのライヴは、同ツアーの初日公演にあたるもの。会場となったclub JUNK BOXは明らかにこのバンドにとって狭すぎる空間であり、当然のごとくチケットは事前に完全ソールドアウト。しかも彼らの放出する過度の刺激に満ちたバンド・サウンドの濃密さと、4人のメンバーたちの圧倒的な存在感は、ただでさえ暑く密閉されたフロアをよりいっそう熱いものにし、ステージ前でずっと写真撮影をしていた僕自身も酸欠状態に陥りそうになるほどだった。

ところで今回のツアー開幕に先がけて行なわれた取材のなかで、CIPHERは次のように語っている。どちらの発言も『FOOL'S MATE』誌6月号に掲載の、筆者が行なったインタビューからの抜粋である。

「2月から3月にかけてのツアーでは、やっと“当たり前のバンド”やと思ってもらえてるな、と感じた。当たり前に存在してるD'ERLANGERとして捉えてもらえてるな、と」

「活字にするとダサいかもしれないけど、結局は俺たち、いまだに“ロック・キッズ”なんだよ。リリースがどうのとかと関係なく活動できるのは、憧れがちゃんとあって、それが消えないからなんだろうと思う。自分たちのまわりの人間たちにも俺は同じものを感じるし、それはきっと、誰にも変えられないはずのものだから」

このバンドのライヴに通いつめてきた熱心なファンたちに対しては、もはや何ひとつ説明する必要もないはずだが、この発言中にある「当たり前のバンド」という言葉は、間違っても「ありきたりなバンド」という意味ではない。長い沈黙を破って禁断の扉を開いた“復活バンド”としてのドラマとはもはや無関係の日常を、現在の彼らは生きているということなのである。さらに付け加えるならば、過剰なコンセプトや戦略、テーマめいたものを必要としないバンド、という意味でもあるだろう。

D'ERLANGERというバンドは、今、本当に“当たり前のように”存在している。が、そんな現在が成立しているのは、彼らという存在自体が“当たり前ではないから”でもある。そして4人のなかから“憧れ”が消えていないからこそ、彼ら自身が周囲にとっての“憧れ”の対象になり得ているのだ。この夜のライヴで実際にどんな曲が演奏され、どんな言葉が発されたかなどについては、敢えてこの場には書きたくない。それ以上に僕が伝えたいのは、いかなる枠組みにも属することなく、自分たち自身の歴史やパブリック・イメージにすらも束縛されていない現在の彼らが、ロック・バンドとしていかに強烈であるかということだ。実際、前出のインタビューのなかでCIPHERの口からは「誰にも負ける気がしない」という言葉も飛び出しているが、本当にこの4人の“バンド力”というものには他を寄せ付けない圧倒的なものがある。

この強力無比、唯一無二のロック・バンドのステージに、是非あなたにも触れてみて欲しい。彼らのことをいまだに「伝説/歴史上のバンド」と見ているような人、自分たちの世代には無関係な存在と決め付けているような人たちにこそ。ただし残された計4公演のうち、すでに終盤の2公演のチケットは完売となっているようだが。念のため、今後の公演スケジュールを付記しておく。

文・撮影●増田勇一

<D'ERLANGER live 2010 La bouche de 8 ange>
6月5日(土)水戸・ライトハウス
6月6日(日)甲府・KAZOO HALL
6月12日(土)横浜・F.A.D YOKOHAMA(SOLD OUT!!)
6月13日(日)埼玉・HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3(SOLD OUT!!)

◆D'ERLANGERオフィシャルサイト
◆D'ERLANGERマイスペース
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