X JAPAN、日産スタジアムでみせた無言のプライド


◆<X JAPAN WORLD TOUR Live in YOKOHAMA 超強行突破 七転八起~世界に向かって~>2010年8月15日(日)真夏の夜 画像
<ロラパルーザ>でみせたソリッドなパフォーマンスを、スタジアム・ライブにふさわしいセットリストに組み替えたのが14日のコンサート内容となった。本編6曲にアンコール4曲、なんと全部で10曲というコンパクトな構成は、必要な栄養素だけを最小限残し、余計なものは切り捨て濃密な中身を再生成する挑戦的なものである。

しかしながら一方で、これまでとは明らかに異とするステージ構成とパフォーマンスのなかに、X JAPANの明確な方向性が隠されている点は実に興味深い。ひとつがその曲目リストだ。


X JAPANは、2008年3月に行なわれた東京ドーム3Daysで復活、手探りながらもできることの最大限を表現した。本来の過激な美学を貫くこと、HIDEとともにステージに立つこと、きちんと音楽を伝えること、会場に来られないファンにも映像を届けること…。満身創痍の中、全身でぶつかった2008年のパフォーマンスは絶大な評価と感動を生み出し、過去誰にも成しえなかった奇跡の復活と生きる伝説を真正面から叩きつけてみせた。ある意味、X JAPANの復活は「何もX JAPANは変わっていない」という不滅・不変の美学を証明して見せたことになる。

そして2010年、日産スタジアムという日本随一の会場で、彼らはいつの間にか抱えてしまっていたノイズを排除、自らのラインナップに厳しい目を向け贅肉を削ぎ落とすことに力点を置いた。理由は簡単。彼らの視線は世界を向いているからである。そしてこれは、バンドコンディションがコアに向かって凝縮し、強固な極上状態にあるからこそ叶えられるもの。HIDEがX JAPANの永遠のメンバーである事実に揺るぎはないが、だからこそHIDEにはステージパフォーマンスの一端を担ってもらう自然な形での登場となった。

20年前の作品と現在の新曲を同軸に並べパフォーマンスすることの、真の意味での難しさはオーディエンスの我々は知る由もない。ある人はTAIJIの登場に涙しながらも「Voiceless Screaming」を期待し、ある人は「X」でXジャンプをキメながら「オルガスム」を求める。「ENDLESS RAIN」のサビを絶叫しながら「Without You」を夢見る。オーディエンスは、自分の好きなX JAPANがそこにいてくれることを願うだけであるからこそ、大きな振れ幅を持つバンドであれば…キャリアの長いバンドであれば、バンドはオーディエンスの想いを受け取るために破壊と構築が急務となる。まるでX JAPANを言い表すキーワードのように。

世界へ向けた新生X JAPANが、日本一の会場を震わせた後に進むべき道はどこなのか。過去の名曲をしっかりと響かせながら、まだ見ぬ未知の新生X JAPANのサウンドで世界を切り開いていく覚悟を見せ付けたのが、日産スタジアムでのパフォーマンスだった。

冒頭で触れたオーディエンスの賛否両論は「オーディエンスがX JAPANに何を求めているのか」をあぶりだすキーワードだ。そしてその延長には世界がある。X JAPANが世界へ乗り出すその船出に参加した14日の夜、We are Xのキーワードが、本当の意味を持つ日となった。
text by BARKS編集長 烏丸哲也
<X JAPAN WORLD TOUR Live in YOKOHAMA>
1.Jade
2.Rusty Nail

3.Say Anything(Acoustic Ver)
SE(ラルゴ)
4.Tears(Piano solo)
SE(紅ストリングス)
5.紅
6.Born To Be Free
E1.Forever Love(Pf & Vo)
E2.I.V.
E3.X
E4.ENDLESS RAIN
SE(Tears/Forever Love)
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