<BLANK MUSEUM>、原美術館がブルー一色に染まった夜

ポスト
東京都品川区の原美術館で開催中のクロスカルチャー・イベント<BLANK MUSEUM>の2日目となる『BLUE NIGHT』が行なわれ、デレク・ジャーマン『BLUE』の上映と、渋谷慶一郎と相対性理論のやくしまるえつこが出演しインスタレーションを披露した。

◆<BLANK MUSEUM>『BLUE NIGHT』画像

映画の上映までは、1Fの階段付近では大石麻央(動物マスクの人体彫刻)が自らの作品を被り出演するなど、昨日行なわれたLUCIFER NIGHTのピリッとした緊張感と変わり、この日の館内はリラックスしてくつろげるムードに満ちていた。

上映開始の時間となり、館内のすべてのギャラリーで、デレク・ジャーマンがエイズの闘病を続けながら、最初から最後までを青一色で描いた『BLUE』が日本語字幕付きで上映。彼の遺作であり、病気に伴う肉体的/精神的な信じがたい痛み、宗教観、人間の意識、青という色にある神話性など様々なイメージを綴っていく作品に続いては、各ギャラリーで照明家・仲西祐介によるライティング・インスタレーションがスタート。ギャラリーIIの『BLUE SCREEN』では、スモークがたかれたギャラリー内のそこここに角度をつけた鏡が置かれ、青い光が投影されることにより、直前まで青い映像が映されていた壁に見ている人たちの影が次々と映されるという趣向。

部屋ごとのコンセプトに基づいた照明によるBLUEのバリエーションは、まさに体験するインスタレーションと言えるもので、他にも揺れる水面が淡くサイケデリックな文様を有むギャラリーIIIの『BLUE WIND』、何の変哲もない壁を窓から覗くと別の像が浮かび上がるギャラリーIVの『BLUE WALL』、明滅する光により観客のシルエットが青く壁に映し出されるギャラリーVの『BLUE SHADOW』と、デレク・ジャーマンが青に込めた精神を新たなかたちで表現していた。

この後、中庭では美術館の壁面に『BLUE』の映像が映されるインスタレーションが行なわれた。白い原美術館の外観が青く染められ、そこに『BLUE』のサウンドトラックが流れるという趣向で、さらに渋谷慶一郎が緑豊かな中庭に置かれたスタンウェイのグランドピアノによりデレク・ジャーマンの『BLUE』に新しい息吹を与えた。後半にはこの夜の特別出演であるやくしまるえつこが加わり、『BLUE』の台詞の日本語訳をリーディング。

サウンドトラックとのコラボレーションのあと、ふたりは相対性理論+渋谷慶一郎『アワーミュージック』に収録の「BLUE」を演奏。やくしまるの「おやすみなさい」という言葉とともに、BLUE NIGHTは終了となった。これからの日本の音楽シーンを担うふたりのクリエイターが『BLUE』という共通項で繋がれ、この作品にある終末感ではなく、生命力に転化させこれからの若い世代に今作のスピリットを伝えていくきっかけになったことだろう『BLUE NIGHT』は鬱屈した世情を吹き飛ばす、極めて開放感に溢れた一夜となった。

なお<BLANK MUSEUM>は残すところあと2日。28日(土)、29日(日)は羊が先導役になり注目のパフォーマー、そしてミュージシャンが多数出演するカオティックな『LOOKING FOR THE SHEEP』で、当日券はそれぞれ13時から発売となる。

<BLANK MUSEUM>とは
なにも展示してない原美術館の休館日に行われる音楽と映像とパフォーマンスといったオールジャンルをクロスさせたイベント。1938年に竣工された邸宅を1979年に改装し開館した原美術館。その美術館の展示室と廊下、階段、屋上など館内全てと緑の芝生の庭を使用して行う4日間、1日300人限定のイベント。訪れた観客はイベントと同時に美術館の常設展示作品である宮島達男、森村泰昌、奈良美智など現代アーティストたちの作品を見る事もできる。
8月26日はケネス・アンガー作品上映+ライブの『LUCIFER NIGHT』、27日は美術館全館をブルーに染めた中でのデレク・ジャーマンの『BLUE』上映とインスタレーションの『BLUE NIGHT』。28、29日は3組のパフォーマンスと4組のライブが庭と館内を使ってタイムライン上で交互に行われる『LOOKING FOR THE SHEEP』。観客がイベントを求めて美術館全館を歩き回るという演出で、案内役は一匹の“羊”。

<BLANK MUSEUM>
2010年8月26日(木)~29日(日)
時間
28、29日 16:30開場 / 17:30開演
30、31日 14:30開場 / 15:30開演
料金
28、29日 前売2,800円 / 当日3,300円
30、31日 前売5,500円 / 当日6,000円
会場:原美術館(東京都品川区北品川4丁目7-25)
http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html
出演:飴屋法水、伊東篤宏、エミ・マイヤー、勝井祐二、迫田悠、さとうじゅんこ、渋谷慶一郎、ジム・オルーク、JOJO広重、JON(犬)、Shing02、種子田郷、テニスコーツ、のぎすみこ、灰野敬二、東野祥子、日比谷カタン、ホナガヨウコ企画、マイア・バルー、やくしまるえつこ、山川冬樹、山本精一(五十音順)
上映作品:ケネス・アンガー作品 デレク・ジャーマン『BLUE』

公式サイト http://www.webdice.jp/blankmuseum/
公式twitter  https://twitter.com/BLANK_MUSEUM
この記事をポスト

この記事の関連情報