ASKA、アルバム『君の知らない君の歌』のアレンジから浮かぶ疑問

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ASKAのセルフカヴァーアルバム第2弾『君の知らない君の歌』が、11月3日にリリースされる。

◆ASKAの最新画像、「C-46(2010 ver.)」のミュージックビデオ

今回の作品はアルバム全体を通してひとつの恋物語。ASKAがこれまでに綴った作品群から、恋の始まり、恋愛真っ只中、そして恋が終わる予感、終わった恋、過ぎ去った恋を懐かしむところまで、ファンに伝わりやすい表現をするなら、“野いちごが揺れるところまで”を楽曲で網羅している。多くのリスナーがイメージとして抱いているであろう“ラブソングのASKA”であるがゆえ、もしくは“ロマンチック馬鹿でいよう”であるがゆえに成立したセルフカヴァーアルバム、と言っても過言ではない(誤解のないようにいうと、確かにASKAの描く恋愛物語は繊細かつ具体的な場面の一部を切り取ることで抽象的な表現として成立させるという独特の手法を用いたりして、ロマンチックで印象深い作品が多いのだが、ASKAにとってラブソングはあくまでひとつのジャンルであり、当然、それ以外のことについても多く歌っている)。

楽曲それぞれを見ていくと、「めぐり逢い」や「好きになる」「明け方の君」などは、前作セルフカヴァーアルバム『12』(2010年2月リリース)の「LOVE SONG」や「恋人はワイン色」と同じ方向性、すなわち、オリジナルよりも若干バンドサウンドを意識したアレンジがなされていることに気づく。もしかしたら、今のASKAにとってこの方向性がざっくりとしたトレンドなのかもしれない。ただ、『君の知らない君の歌』ではそれだけではなく、たとえば「Far Away」は、ロック的なアプローチをしながらも壮大なバラードとして成立させていたり、「201号」では押尾コータローと葉加瀬太郎の音色が加わり、オリジナル同様の音の温かさの中にドラマチックさがプラスされていたり。一方、「MIDNIGHT 2 CALL」は、オリジナルの世界観を現在の音に差し替え、少しのスパイスを加えたかのようなアレンジだったりと、一言でいえば、(ASKAの作品はいつもそうなのだが)バラエティに富んでいる。ゆえにリスナーも作品に触れるたび、そして時が経って再び聴き直した時に、常に新しい発見がある。若かった頃、幼かった頃には気付かなかったり人生経験がなくて理解できなかったこと。『12』に引き続き、そんなことを今回のアルバムでも“再発見”できることだろう。

各曲をひとつずつ触れていくのは細かくなりすぎるので、アルバム全体について、いくつか気になった点を触れよう。まずは…なんといっても、CDジャケット。ASKAの横顔、しかも右側から光が当てられて撮影された真横のアップというジャケットは初だ。写真としても珍しい(左から撮影された横顔のジャケットとしては、1991年リリースの『SCENE II』がある)。歌詞ブックレットとして見ると、裏表紙はASKAの反対方向からの横顔になっており、表紙と裏表紙、右と左、光と影の対になっていることがわかる。なお、完全に余談だが、Chageの右側から撮影された横顔といえば、CHAGE and ASKA「男と女」のジャケットが、そのエピソードとともに有名だろう(ここではなぜChageが横顔だったのかについてのエピソードは割愛する)。

さらに我々をワクワクさせてくれるのが、歌詞のブックレットの表紙を開いたところ。そこには、ポットとミルクの入ったグラス、そしてパンの写真とともに、<つくづく想像だと思う>というフレーズから始まる一遍の詩が載っている。ブックレットに詩、というのも、往年のファンからすると感慨深いものがあるはず(ASKA作品だと2005年リリースのオリジナルアルバム『SCENE III』にも詩は載っているのだが、同作品と本作の詩は、何かしら匂いのようなものが異なっており、本作のほうが、“あの頃”のアルバムのブックレットに掲載されていた詩に近い気がしないだろうか?)。また、“つくづく”という言葉の使い方からは、<つくづく恋だと思う>という、やはり同じく過去のASKA作品のブックレットに載っていた詩を思い出す人もいるかもしれない。

いずれにしても、ASKAからのメッセージを受け取りながら、その作品ひとつひとつにいろんな想像や共鳴をしながら楽しみたい。
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