Chage、興味深いタイトルのアルバム『&C』

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スペーシーなイントロからスタートする「Windy Road 2010」。2010年によみがえるMULTI MAXの名曲。これはいやが上にも気持ちが高まる。組曲「WANDERING」までをも彷彿させるようなイントロだけで、拳を高く突き上げたい衝動に駆られたリスナーは多いはずだ。

Chageのメインパートに村上啓介、そして久松史奈のハモリが重なるという、いわばオリジナルの2コーラス目からのような出だし。そして曲が進むに連れて、11年前の<千年夜一夜ライブ -福岡ドーム 僕らがホーム->、もしくは、18年前の武道館公演でのステージに立つMULTI MAXがフラッシュバックする。Chageソロとしてのアルバムということ、ハモリの定位を含めて当時のそれとは明らかに違うことは頭で理解していても、やはり思い出さずにはいられない。それほどまでに「Windy Road」には、ファンひとりひとりにとって強い思い入れが、強烈なインパクトとメッセージが込められている。

もちろんこの曲は、Chageのソロライヴでも定番の1曲として披露されている。しかしライヴで演るのと、音源として残すのとでは、意味合いも反応も違ってくるはずだ。Chage自身この楽曲については<僕のソロ・ライヴといえば当然やる楽曲のひとつですが、かつてマルチマックスでやっていた音源をなぞるのではなく、今回のこのメンバ-から生まれてくる音でレコ-ディングし直した。なのでタイトルは“2010”。でもいいグル-ヴ出てますよ。>と、いう言葉にとどめている。

オリジナルが発表された年から数えてもうすぐ20年。時は過ぎ、時代は変わった。当時生まれた子供は成人式を迎え、<砂漠の中の泉に / 優しさをなくしていた / あの人>は、砂漠の砂へと還った。しかし、2010年も終わろうとしている今もなお、あの頃と同じように、世界のどこかでは紛争が起こり、人々は自分の進むべき道に迷い、そして未来に戸惑っている。

『&C』には、“ソロアーティスト・Chageは、ソロでありながらもひとりじゃない”、そんな意味が込められている。そしてアルバムのラストを飾る「Windy Road 2010」。この曲は、アルバムコンセプトを超えて、そして時代を超えて、自分を見失いそうな2010年の我々に“ひとりじゃない”というメッセージを伝えているかのようですらある。“もし、自分の道を見失い、自分自身を見失ったら、答えはきっと目の前に吹く風の先。風をくぐり抜けた先に、誰かがきっと君を待っている”と。

アルバムのエンディングは、シンプルに終わる。それはこのアルバムと同日にリリースされたASKAの作品『君の知らない君の歌』のラストにも言えることだろう。しかし、我々の中ではこの作品が終わっても、なおどこかで“音”を聴く。それは余韻かもしれない。想像かもしれない。気のせいかもしれない。しかし、ひとつの作品が終了したあとに、リスナーの胸の中は、その作品から受けた何かに共鳴し、そして確かに音は鳴るのだ。

「Windy Road 2010」が終わり、『&C』終了とともに訪れる静寂の中で、会場を包む大歓声を聴いた、というリスナーもいるかもしれない。Chageはこのアルバムを引っさげて全国ツアー<Chage Live Tour 10-11“まわせ大きな地球儀”>をスタートさせる。久しぶりとなるバンド形式でのツアー。しかも、本作でゲストミュージシャンとして参加した村上啓介、久松史奈、そして西川進もこのツアーに参加する。

我々オーディエンスは、まずは紙飛行機を折るところから初めてみよう。『&C』のひとりとして。

◆Chage オフィシャルサイト(CHAGE and ASKA)
◆iTunes Store Chage(※iTunesが開きます)
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