【D.W.ニコルズ・健太の『だからオリ盤が好き!』】 第22回「クレジットで聴くレコードの世界」

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D.W.ニコルズの鈴木健太です。

レコード屋でレコードを見ていると、妙に目に留まるレコードというものがあります。ジャケットの雰囲気や質感が気になったり、アーティストの名前が気になったり、アルバムのタイトルが気になったり、ときには傷み具合が気になったり…。その気になり方というのも時と場合によりますが、とにかく妙に目に留まるレコードにしばしば遭遇するものなのです。

それで買ってしまうのがいわゆる“ジャケ買い”というやつなのですが、実際にはそう簡単にジャケ買いに踏み切れるものではありません。たくさんの情報を得た上で買っても“外す”ことはしょっちゅうなのですから、ジャケ買いして“当たる”なんてことは本当に稀なのです。

そこで、そんなレコードに出会ったときには裏ジャケットを見てみます。チェックするのはメンバークレジット。ソロアーティストの場合、演奏に参加しているメンバーを見てみるのです。レコードでは裏ジャケットにクレジットが記載されていることが多く、すぐ参加メンバーを確認できます。また裏ジャケットに見つからなくても内ジャケットにはたいてい載っているので、それは検盤すれば確認できます。

1960~70年代のシンガーソングライターやソウルシンガーのバックバンドの演奏には本当に素晴らしいものが多く、個性派プレイヤーによる上手いだけではない味のある演奏が数多く残されています。そういった名演は、作品として高い評価を受けている“名盤”にはもちろんたくさんありますが、残念ながらあまり売れなかったり、一般にはそれほどの評価を受けなかったりした作品にも、実はたくさん埋れています。

裏ジャケットのクレジットから辿って、そんな隠れた名演が収められた作品に出会ったときには、まるでお宝を掘り当てたような喜びがあります。後から調べてみると、詳しい人たちの間では有名な作品だったりもするのですが、それもまた嬉しいものです。
また、その作品のことをまったく知らなくても、クレジットされているメンバーによってそのサウンドや音楽性を予想することができます。メンバークレジットは、自分の好きな音楽を掘り下げて行くための大きなヒントになるのです。

実際にクレジットを見て購入するにいたったレコードはたくさんありますが、その中でも一番最近買ったレコードを1枚紹介します。


『JOHN HAMMOND / SOUTHERN FRIED』。このJohn HammondはJohn Hammond Jr.のこと。コロンビアの名プロデューサーでありアメリカンミュージック界の重鎮、偉大なるJohn Hammondの息子。名前はもちろん知っていましたし、彼についても、カントリーブルースが得意な白人ブルースマンで、Bob DylanとThe Bandの橋渡しをした…ということくらいは知っていましたが、特に聴いてみたいと思ったことはありませんでした。ところがある日、レコード屋でレコードをめくっていて、このレコードがなぜか妙に目に留まったのです。なぜなのかはわかりません。ジャケットの写真もあまりかっこ良くありませんし、デザインが凝っているわけでもありません。どちらかというとチープで手抜き臭いジャケットのように思います。でもなぜか気になったのです。今思うと不思議ですが、出会いとはそういうものなのです。

そして裏ジャケットを見てみるとそこにクレジットされているのは…、“Barry Beckett、Eddie Hinton、David Hood、Roger Hawkins”。
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