Dirty Old Men、大切に育て上げた1曲1曲が詰まった最新アルバム『GUIDANCE』特集

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Dirty Old Men

最新アルバム『GUIDANCE』 2011.2.2リリース

INTERVIEW

──アルバムを作っているという話は『Somewhere』のときからしていましたよね。

高津戸信幸(以下、高津戸):もうその頃はほぼ出来ていたんですよね。それまでずーっと曲を書いてたので。ミニアルバムやその前に出していた作品からも曲を入れたんですけど、ベストアルバムのようなアルバムにしたいと思っていたんですよ。初めて聴く人も増えると思ったので、これを一枚聴けば、Dirty Old Menがわかるっていう作品にしたかったんです。コンセプトを立てて作るというよりは、ベストアルバムを作るような感じでした。

──だから、「蛍火」とか「Time Machine music」のようなミニアルバムからの曲も収録されたんですね。

高津戸:はい。そもそも、ミニアルバムをリリースしたときも、最初はシングルを作ろうということで制作していたんですよ。だから、僕らの中ではシングル感覚だったので、PVになっていた曲を入れたりしたんです。フルアルバムにはシングルって必ず入れるじゃないですか。

──ベストアルバムのような作品ということは、自分たちをより知ってほしいということですよね。それでタイトルも『GUIDANCE』(“案内”の意味がある)なんですか?

高津戸:この『GUIDANCE』は“導き”というニュアンスなんです。高校二年生のときから音楽をやっていて、出会いとか別れとか、社会勉強のようなものは音楽で学んだんですよ。事務所を離れたり、いろんな別れがあって。そこで気持ちが産まれて、曲が産まれて来て。人との出会いと別れを大切にして曲が産まれて来たので、偶然ではなく、必然的に出会ったり、色んなものが必然的におきて、導かれてこのアルバムが出来たのかなぁと思ったので。だから本当に思い入れが強いアルバムなんです。

──そういう意味でも、出来てきた曲は、自分が音楽を初めて学んだことが言葉になっていたりするんですね。

高津戸:そうですね。でも、今回のアルバムを聴いてみると、まぁ暗いですねー。辛かったんでしょうねぇ(笑)。でも、去年、一番最後に出来た曲が「約束の唄」だったりするんですよ。それまでが苦しかったんでしょうね。

山田真光(以下、山田):アルバムを作っている最中はもちろん、去年はみんなが苦しかったですからね。

山下拓実(以下、山下):それぞれが大変だったからね。みんな同じくらい。平等に。

高津戸:産みの苦しみもそうだけど、別れとか、色んなことを共有していたからね。

──『somewhere』のときもそういう話をしていましたよ。2010年はずっと、その状態が続いている中での制作だったんですね。

高津戸:続いているというか、その頃に書いていた曲が集まっているから。その時期を集約した感じなんです。

山田:そのときは必死にしがみついていたという感じでしたよね。なんとかしてまだ音楽を続けて行きたいという気持ちで、しがみついて頑張ってるというような時期でしたね。曲を作っているときも、自分が大変だったので、周りに助けられて出来たものなんですよね。一番近いところで言えばメンバーには本当に助けられたことが大きかった。アレンジをするにも一緒に考えてもらったし。1曲ごとに苦しみがあったし。

──そんな気持ちが伝わってくるのか、順番に聴いて行くと、「想イ花」から「願い事」にかけての流れで涙ぐんでしまいました。みんなの苦しみとか、思いが音に乗っているんでしょうね。

山下:届いているってことじゃないですかね。嬉しいです。

高津戸:嬉しいですね。実は『想イ花』が一年半前に書いた曲で、この中で一番古いんですよ。で、『願い事』が一番最後に出来た曲だったりするんですよ。

──「ブリキ」と「chocworld」で、現実逃避するような感じになりますよね。でも、逃避しきれていない。何かを求めていたり、出口を探しているような。モヤモヤが残った状態の逃避というのがリアルだと思いました。

高津戸:ずっと物語とかファンタジーなものを書いてましたけど、「約束の唄」のようにリアルなものに挑戦したりすることで、ファンタジーな中にもリアリティが出たのかなぁって思いますね。

──それぞれ自分のプレイ面ではどんなところを気にしてほしいですか?

山下:「蛍火」ですね。作っているときもスゲェ覚えているし。イントロのバッとくる感じとか。耳に残るっていうか、言葉でもフレーズでも繰り返して耳に残る。ファーストインパクトで思い出せるフレーズっていいフレーズなのかなって。で、口ずさんだり出来るっていうか。

野瀧真一(以下、野瀧):俺は自分のプレイっていう、フレージング単位で考えるのはあまり好きじゃなくて。一曲として捉えられるように、考えて叩いてるんですね。一貫したビート感を意識して叩いてるんですよ。一曲を一曲として聴いてもらえれば嬉しいですね。「ブリキ」だったら、一つのストーリーで一曲を作っているわけで。そのストーリーのこの部分がいいんだよって持ち上げるよりも、ストーリーを通して感じてもらえたら凄く嬉しいですね。すべてに起承転結を感じてもらえたら。

──いつもそういう起承転結を考えているわけですね。

野瀧:うん。そうですね。フレージングの中にも起承転結を考えているんですよ。でも、全体での起承転結っていうのが一番大きい。

山田:アルバムの中には色んな曲がありますよね。物語チックなものもあるし。その中でベースが下のほうで支えている場所があったり、「ブリキ」のブリッジのソロみたいに上の方に出て来たりしているんですね。ベースを聴く人ってそんなにいないと思うんですけど、そういうところを注意して聴くと、ベースの面白いところが見えたりするのかなって思います。ベースって、音として捉えている人が多いと思うんですけど、その中でもベースの音が出て来たときに、それだけ追っかけてみると、また違った曲の見え方がするのかなぁって思います。

──ギターは二人いるから、アンサンブルも考えますよね。どうやってやっているんですか?

高津戸:基本、僕がベーシックなものを考えて、適当に弾いている上に乗っけてくれるっていう感じですね。

──そこで試される部分もありましたか?

高津戸:いやぁ、彼はスーパーギタリストなので……。

山下:いやいや(笑)。最近、よくその言葉が出て来るけど。

高津戸:でもまぁ、任せてますよ。四人で話し合ってフレーズを変えたりして合わせて行きますよ。僕は雰囲気しか言わないので、メンバーが頑張ってやってくれています。

山下:一番大事なのは唄なんですけど、唄の入っていないイントロとかは面白いことしたいなと思っていますね。歌っているときは、歌を壊さないように、どの曲も考えていますね。」

──歌で言えば、「chocworld」の歌い方はコミカルで面白いですね。

高津戸:チョコっぽく、かわいく歌いました。昔から物語を書いていた理由が、疑似体験をしたいからなので。その中に入って、その役になり切ってって。音楽の中では無敵でいたいっていう意味で書いていたので、それになり切ってますね。曲を描いているときにも、台詞のように言葉を浮かべながら書いて行くので、役に入り込むのはこういう感じかなって思いながら歌いますね。逆に「蛍火」だったら強くとか、「ことばのうえ」は囁くようにとか、曲単位で意識して歌っています。

──「願い事」の最後の“ありがとう”もグッときますよね。

高津戸:はい。あそこはしゃべっているように。それまでの部分は、この“ありがとう”を言うための前振りですからね。「パントマイム」もそういうところがありますね。

──そうやって、歌も演奏も1曲ごとにきちんと世界観が構築されているんですね。

高津戸:はい。ホントに1曲1曲、大切に作って来たので、たくさんの人に聴いてもらいたいですね。自信作なので。これを作ってみて、まだ成長出来るんだなっていう、Dirty Old Menの可能性をまた感じられたんですよ。いろいろ挑戦して来て、やっと僕的には殻が破れた感じがするんです。「願い事」という曲が書けたことによって、前に出たような気持ちにもなって。とはいえ、最近は歌詞が書けないんですけど(笑)。でも、これからもどんどん出して行くと思うんですけど、その先の作品で知ってくれた人も、このアルバムは聴いてほしい一枚になっていると思います。

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