【BARKS編集部レビュー】ファイナルオーディオデザインのheavenの登場は、ちょっとした事件

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これはheavenというカナル型ヘッドホン。これまで出会った中でベストに位置する素晴らしいサウンドを奏でる感動的なモデルだった。heaven aの音を何かに例えるならば「少女のような音」とでも言えばいいだろうか。麗しく清潔で清らか。透明感溢れ、音がどれだけ重なっても軽やかで決して濁らない。はつらつとして躍動感があり瑞々しく音像が広がっていく。

◆ファイナルオーディオデザインheaven画像

いろいろなヘッドホンを試聴していると、どんな音がするのか確かめたくなるブランドがたくさん現れる。最近、最も気になっていた筆頭がファイナルオーディオデザインだった。

ファイナルオーディオデザインはピュアオーディオを徹底追及している純国産ブランドで、イヤホンながら20万円もの超弩級モデルを平気で作り上げる職人気質のメーカーである。庶民の感覚からすると「20万円のイヤホンってどうなの」と思うが、発表から足掛け3年になった今も生産が追いつかずバックオーダーを抱えている状況にある。作る方も買う方も本気モード、技術に裏打ちされた哲学と理念に基づく孤高の品質は、必ず正当な評価を受けるということだ。

そんなファイナルオーディオデザインが一般コンシューマに向けて作り上げたモデルならば、期待するなというのが無理というもの。今回入手したのはheaven s(想定市場価格29,800円)とheaven a(19,800円)の2機種。この価格なら射程内だ。過剰に高まる期待をぐっと抑え、冷静に試聴、1週間ほど聴き込んだ。いつもは良いところと良くないところをまさぐるように聴き込むのだけれど、heavenの場合は勝手が違った。

とにかく気持ちいいのだ。ひたすら「音が楽しい」。そうなんだ。あくまで音楽を楽しむツールなんだから、そいつのどこがいいとか悪いとかは話の本質じゃない。聴いている音楽がどれだけ楽しくて、どれだけ心地よいかだ。評価の重要な基本ポイントは、シンプルに「音楽がどれだけ魅力的に鳴っていますか?」だったはずなんだ。

いつの間にか出来の悪い評論家のように視点がどこかずれてしまっていた自分を、サウンドひとつで引き戻してくれたのがこのheavenだった。

低音バシバシが最近のトレンド傾向であることを考えると、heavenの音は人によっては低音が足りないと感じるかもしれない。でも、きっとそれは一部の音楽に特化した異形なサウンド・バランスでの話ではなかったか。音楽のボトムを支えるキックやベースにおいて、その歯切れの良さや地に足の付いたコード感を伝えてくれるのは決して重低音域ではなく、中高域のアタックや粘るような中域部分の押しの強さだったりする。心地よく必要にして十分な低音を感じさせてくれるポイントは、あくまでアンサンブルのバランスだ。超ローを強引にブーストすることが迫力なのではないことを、無言のうちにそっと優しく諭してくれる、なるで天使のようなヘッドホンだ。そういや名前がheavenだもの。

heaven s(29,800円)とheaven a(19,800円)には価格差が1万円ほどあるが、両者において音をつかさどる心臓部分は全く同じである。違いは素材とケーブルのタイプだけで、筐体が真鍮(s)かアルミ(a)か、その素材と加工におけるコストの差異が価格の差となっている。この2機種は上位下位の位置関係ではなく、サウンドキャラの違いで捉えるべきだ。

ファイナルオーディオデザインが金属筐体の削り出しにこだわるのは、剛性を高め不要な振動を抑制し立ち上がりの速い音を実現させるためという。素材の特性がサウンドを大きく左右すると同時に、中の構造でサウンドは激しく変化するものだが、空気の流れを最適化させる特許構造をもって、heavenの全帯域バランスが計算されている。そこは至福の心地よさだ。

sとa、どちらがいいかと問われたならば…問われてないけど問われたならば、私はheaven aを選ぶ。価格が同じならめちゃめちゃ迷うところだが、1万円安いのだから迷わずheaven aだ。

両者の違いは微細だが明確。確実にheaven aは、健康的でたぶつきのない切れのよいサウンドを持ち、しゃっきりしていて気持ちいい。POPSやROCKには最高だ。一方、heaven sはどんな音源でも綺麗に再生してくれるスタジオモニター・スピーカーのような安心感があり、中域に極上の暖かさを持つ。

heaven sで音楽を聴いていると、安心して高品位なサウンドが楽しめる。もうこれ以上のサウンドはいらないという至福感に包まれる。でもaの音を知っているだけに、もっとキュキュッと引き締まった音で聴いたら気持ち良さそうだなと、heaven aに交換する。期待通りの音を受け取って、おーいいねいいねと、そのまま聴き続けるものの、しばらくすると、ふと素直でフラットなsで聴くとどうだっけ?とheaven sに戻り、心地よさに酔いしれる。このループを延々と繰り返すのだ。もう、おサルさんのマスターベーションである。

ちなみにイヤーパッドは、サイズこそS、M、Lが同梱されているものの、用意されているのは1パターンだけ。いろんな種類を出してくれという要望もあるだろうが、同じ形状のイヤーパッドでも白と黒と色が違うだけで音が変わってしまうという。カーボンの含有量がサウンドに影響を与えるのだそうだ。イヤーパッド自体が低音をぼやけさせ不自然な響きを生み出してしまうことを避けるため、100種類以上の試作を経てたどり着いたベストを付属させたと断言する。

耳へのフィット感によって低音の出方が変わることは皆さんも経験済みだと思うが、heavenは軽く自然にはめてくれればそれでいい。実際、耳へのフィットは自然だし、遮音性もごく標準的で、その状態で極上の音場が形成される。ぐいぐいと無理矢理外耳道にフィットさせて低音を強調させるのは、下衆のテクニックだったようだ。

LRが分かりにくい、きしめんの様なheaven sのケーブルが耳にかかりにくい、といった不満点もあるものの、このサウンドは市場の5~6万円に位置する最上ハイエンド商品群をたじろがせるパワーに満ち満ちている。それが19800円と29800円という価格だからエポックだ。これ、ちょっとした事件です。

「heavenの音が好みだった」というだけのことかもしれないが、僕にとっては衝撃的な商品だった。もっと早く出会いたかったと思うと同時に、これからいい音のインナーイヤー・ヘッドホンを探すのであれば、必ずheavenも候補に入れて欲しいと心から願う。

final audio design
●heaven s/heaven a
形式:バランスド・アーマシュアBAM機構
ドライバーユニット:オリジナルカスタムドライバ
感度:112db
インピーダンス:16Ω
コード長:1.4m
質量:heaven s 23g/heaven a 15g
筐体:heaven s 真鍮削り出し/heaven a アルミ削り出し
型番:heaven s FI-BA-SB/heaven a FI-BA-A1
JAN:heaven s 4560329070123/heaven a 4560329070147
イヤーパッド:S、M、L
キャリーケース、取扱説明書、保証書付属
想定市場価格:heaven s 29,800円/heaven a 19,800円

text by BARKS編集長 烏丸

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