銀色夏生、初ライヴで聴かせるせつなく共鳴する魂と自由な精神

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2010年から表現の一環として音楽の分野でも活動を始めた詩人であり作家の銀色夏生が、2月28日、大井町きゅりあんで初ライヴを敢行した。

◆銀色夏生 ライヴ画像

この日は前半・歌、後半・トークと二部構成になっており、まず銀色がステージに現れ軽く挨拶した後、シンガー・ソングライターの原田晃が登場。“銀色プレゼンツ”(銀色夏生の詞世界を銀色ファミリー以外の人が歌う時の総称)として今年1月に4曲入りCD『輝き』をリリースしている彼は、サポートのベースとパーカッションをバックにギター弾き語りで「夕空」「アイスコーヒー」とCDに収録されている珠玉曲を放っていく。恋のせつなさと生きていく上での真理がタペストリーのように織り込まれた透明感あふれる銀色の深い詞世界が、伸びやかであたたかみのある原田の歌声によって、立体的にその場に広がっていく。

この日は、銀色が2008年に出版した「詩集 エイプリル」の中から抜粋した詩に曲をつけたという未発表の新曲「物語」や、銀色夏生作詞・大沢誉志幸(現・大澤誉志幸)作曲・歌で大ヒットとなった「そして僕は途方に暮れる」のカヴァーも披露。原田は1曲1曲、丁寧に世界観を表現し伝え、集まったファンを魅了した。

続いては、銀色の愛娘であり、山元バンド=銀色ファミリー・バンドのヴォーカルであるk-k(カーカ)の登場だ。彼女は、日々の出来事や想いを日記形式で綴った銀色夏生の人気シリーズ著書「つれづれノート」の中に生まれた時から登場しているので、ファンの間ではおなじみの存在。とはいえ、“動く生k-k”がみんなの前に姿を現すのは今回が初とあって、彼女がステージに登場すると、会場にはどよめきが起こり、「k-k、かわいい~!」の声が飛び交った。

実際、ふんわりとした白いワンピースを着て現れたk-kは、妖精のようにかわいかった。そんな彼女は「神聖な想い」「ハイネ」「小鳥」の女子号泣ナンバー3曲を披露。直立不動で歌うその歌声は、不純物がなくサラサラと澄んで、声質自体がせつない。それはまんま、銀色の詞が有する特徴でもあり、ゆえにk-kが無心で歌うとそこには自然と銀色夏生の世界が静かにくっきり浮かび上がった。

意志的に銀色の詞世界を表現した原田晃の歌と、無心に歌うことで銀色の詞世界が浮かび上がったk―kの歌。アプローチは真逆だったが、どちらもそれぞれに素晴らしく、会場には感動の大きな拍手がわき起こった。

さて、後半は銀色夏生と、『マクロスF』のランカ・リーのコスプレ衣装に着替えたk-k(中島愛ファン)、そして中国から船で渡りこの日、日本に到着したばかりという謎のパンダによるトーク・コーナー。3人(2人+1匹?)は事前に寄せられたファンからの質問に答えていく形でフリー・トークを展開。哲学的な話あり、恋バナあり、軽い話題あり。3人の肩肘張らないトークを聴いていると、まるで銀色の自宅に遊びにいき、銀色親子が気楽におしゃべりしているのを横で聴いているような錯覚にも陥り、それはすなわち観客である自分も“つれづれ”の世界に入り込んだような感覚で、なんともフシギ楽しい気分になった。何より銀色の自由で何ものにもとらわれない言葉の数々が、時に刺激的であり、時にヒーリング作用ももたらし心地よかった。

「この先、何をやるかまったくわからない」と銀色自身、トーク・コーナーで発言していたが、何かひらめくとそこを突き詰め、また何かひらめくと突き詰め……という根っからの芸術家気質の銀色夏生。よって、本当に先が読めず、こういった形のライヴがまた行なわれるのかどうかもわからない。が、もし第2回が開催されたら、今回参加できなかった人はぜひ行くことをお勧めする。

せつなく魂が共鳴する世界観と、自由な精神が生み出す心地よい空感。ありそうで他にはなかなかない景色と空気がここには確かにあるから。

取材・文●赤木まみ

◆山元バンド(Vo.k-k)
CD「ハイネ/神聖な想い」
2010年12月8日発売

◆銀色プレゼンツ(Vo.Harada Akira)
4曲入りCD
「輝き」
2011年1月12日発売

◆山元バンド(Vo.k-k)
3曲入りCD
「小鳥」
2011年2月16日発売

◆銀色プレゼンツ
CD
「偶然」
2011年3月下旬発売予定

◆銀色夏生オフィシャル・サイト
◆銀色夏生Twitter
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