シンディ・ローパー、日の丸を背負って「What's Going On」を

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超満員となった3月21日大阪NHKホールには、2日間のオフで充分休養をとったあとでシンディ・ローパーの声は絶好調だった。声を振り絞らんばかりの絶唱、全身全霊を叩きつけるようなパフォーマンスは、ある種神がかった感じもするほど。

この日も奇跡が起こった。「Time After Time」が終わった後、前のほうの一人のオーディエンスが「Cyn!」と声をかけ、何か手紙とプレゼントのようなものを。それを読んだシンディはその贈り物を広げる。それはなんと日の丸の国旗だった。シンディはおもむろに日の丸を羽織り、場内は大歓声、「ありがとう!」の声も飛び交った。

日の丸を羽織ったまま「Shine」を歌い上げるシンディは、客席へ降り観客が差し出す手をしっかり握って歌い上げ、総立ちの観客は「Shine」をかけあいで返す。まさに場内はひとつに、2Fの奥まで総立ちだ。

そのあとなぜかシンディはバンドのメンバーと話し出した。本当は次が最終曲だったはずで、バンドメンバーはステージからはけるはずだったのに、誰もはけようとしていないのだ。シンディがそれぞれのメンバーのところにいって説明。バンドメンバーもにっこりしてシンディの気持ちが通じたようだ。

日の丸を背中に羽織ったまま、次の曲へ。1,2,3,4の掛け声のあとイントロが演奏されるとその瞬間に場内のオーディエンスもわかったようで大歓声が沸きあがった。まさに今、歌うべき曲というべきか、この状況にぴったりともいえるマーヴィン・ゲイの名曲「ホワッツ・ゴーイン・オン」を歌いだしたのだ。

   ◆   ◆   ◆

「ホワッツ・ゴーイン・オン」
母よ
大勢の人が泣いています
兄弟よ
遠くで大勢の人が死んでいます
僕たちは見つけなければ
今ここに愛を運んでくる方法を

一体何が起こっているんでしょう
ああ、何が起こっているんでしょう?

   ◆   ◆   ◆

「What's Going On」は、ベトナム戦争から帰還した弟から戦場の様子を聞き、反戦のメッセージを込めたマーヴィン・ゲイの1971年の大ヒット曲だ。その後も数々のアーティストによってカヴァーされている20世紀を代表する名曲のひとつだが、この曲はシンディもカバーし『トゥルー・カラーズ』に収録していたもの。

おそらく今回のツアーのリハでも一度も演ってなかった曲で、その場でやろうと思ったのだろう。日本の国旗を背負うなんて、出来すぎと思うかもしれない。でも日の丸も「WHAT'S GOING ON」も、何のお約束でもなく仕込みがあったわけでもない。自然な流れの中、偶然というべきか必然というべきか、偶然のマジックが生まれた瞬間だった。その場にいたオーディエンスのどれだけが涙を浮かべたことだろう。

最後は「True Colors」。東京ではTOKUとキーボードのスティーヴとともに3人で演奏していたが、今回は名古屋公演同様、シンディのダルシマー1本で切々と歌い上げた。

会場中から「Thank you!」「ありがとうシンディ!」の声が飛び交った。何度も何度もオーディエンスは「ありがとう!」と叫び続けた。こういう時だからこそ「一体感」を感じることがどれだけ励みになるか、音楽の力を見せ付けてくれたシンディのパフォーマンスは、感動の中幕を閉じた。この日も義援金の募金箱には多くの人々が列をなした。

<シンディ・ローパー3月21日大阪公演セットリスト@大阪NHKホール>
1.Just Your Fool ジャスト・ユア・フール*
2.Shattered Dreams シャッタード・ドリームズ*
3.She Bop シー・バップ
4.Early in the Mornin' アーリー・イン・ザ・モーニング*
5.All Through the Night  オール・スルー・ザ・ナイト
6.Lead Me On  リード・ミー・オン
7.Crossroads  クロスロード*
8.Down Don't Bother Me  ダウン・ドント・バザー・ミー*
9.Don't Cry No More ドント・クライ・ノー・モア*
10.Good Enough  グーニーズはグッドイナフ
11.Change of Heart チェンジ・オブ・ハート
Encore(アンコール)
12.Girls Just Want to Have Fun ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン
13.Time After Time タイム・アフター・タイム
14.Shine シャイン
15.What's Going On ホワッツ・ゴーイング・オン
16.True Colors トゥルー・カラーズ
(*=MEMPHIS BLUES)

◆シンディ・ローパー・オフィシャルサイト
◆シンディ・ローパー・ジャパン・ツアー・オフィシャルサイト
◆東北地方太平洋沖地震にまつわる音楽・アーティスト関連情報ページ
◆BARKS洋楽チャンネル
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