川平慈英とサンタラ、尾藤イサオ、三谷幸喜など豪華ゲストを迎え義援ライブ

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2011年3月23日、渋谷B.Y.Gで開催された川平慈英とサンタラのユニットPot-luck Nite!が主催した義援ライブ<Live for East-North『Pot-luck Nite! & Friends“UNITE!”』>。豪華ゲストを迎え、熱い夜になった。

震災後、多くのコンサートやライヴが中止を決定するなか行なわれたこのライヴは、入場料2000円が全額、東日本大震災の被災者支援のために寄付されるというもの。また、ライヴハウス側も無料で場とスタッフを提供した。

震災後に居酒屋で砂田和俊と川平慈英打ち合わせをしているときに、開催を決めたという即決さ。そして、開催決定後、声をかけ集まった出演者は、尾藤イサオ、三谷幸喜など豪華な面々。街から音楽が消えていた時だからこそ、音楽の大切を感じる時間となった。そして、今、私たちに必要な「日常に戻ること」を教えてくれた。

冒頭では、被災地へのお見舞いの言葉。

1曲目は、「Don't Give Up」。直球で、今の私たちに必要なことを伝えてくる。2曲目の前には、「ここは安全な場所です」というMC。何かあったら時の非常口の確認と非常灯が点灯することを伝え「安心して楽しんでください」と。

川平慈英は、お風呂でスピーチのリハをしたけれど、予定調和になってしまう。今日は、それはおいておいて、音楽と楽しい話で、渋谷B.Y.Gから北へ癒しと祈りを送りたい、というMCを。その言葉通り、川平慈英は兄ジョンと地下鉄の網棚に乗った話や、ACジャパンのコマーシャルの「思いやり」を「重い槍」と勘違いして、見えるに決まっていると話していた人の話など、つい笑ってしまう言葉を投げてくる。笑うことをNGとしてきた私は、OKサインもたったような気がした。そして、東京にいても、ストレスフルになっている私たちへのメッセージでもあると感じた。

深刻な顔をして自粛モードになっていては、日本は立ち上がれない。今だからこそ、私たちは経済を動かすべきだと、実感させてくれる。

サンタラのキョウコが幸せな朝の風景を歌った「WORK SONG」では、川平慈英がタップを披露。開場全体の雰囲気が、あまりに温かく優しすぎて涙が出そうになる。人間って本当に素敵だ。

「Somewhere Out There」は、ねずみのお父さんと子どもが巡り会う歌。客席からも「好き」という声が。

そして、ここで、スペシャルゲスト一人目。琵琶奏者の吉田心美が「夜光貝~アベマリア」を。彼女の美しさに、魅了されるメンバー。彼女は、このライヴ開催を決めた居酒屋で、隣のテーブルに偶然居たことから出演が決まった。縁の深さを感じる。琵琶を生で聴くことは少ない。重い音から入り、かき鳴らす激しさ。心を貫くような彼女の声。今日のためだけのオケを作ったそうだ。

一部ラストは「誓い」。<悲しみは足かせじゃない 消えない約束>という言葉が身体に響いた。

20分の休憩をはさみ、二部が始まる。川平慈英のアカペラでスタートした「ポジティブ・シンキング・マン~Banana Boat」は、途中からドラムが入り、ウクレレも。

そして、スペシャルゲスト、尾藤イサオの登場。「あしたのジョー」で一気に尾藤ワールドになる。歌い込んだ彼の声は、被災地まで届く勢いで、深く強く暖かい。5曲熱唱の中に「コーヒーは微糖(尾藤)」なんて、ギャグをいれてくれることも憎い。慈英が声をかけてくれて、一緒になにかできるチャンスを与えてもらったとも。NHKの「みんなの歌」で流れていた「赤鬼と青鬼のタンゴ」も披露。ドンピシャ世代には嬉しい一曲だ。

尾藤ワールドのあとは、ギターひづめ・つかさによる「ダブルスケッチ」。優しい歌。

そして、またまたスペシャルゲスト。パルコ劇場から駆けつけてくれたという三谷幸喜が鼻笛を持って登場!そう今、まさにパルコ劇場では、三谷幸喜作・演出による「国民の映画」が上演されている。鼻笛で「上を向いて歩こう」を見事に演奏。そして、三谷は「僕らが日常に戻ってこそ、被災地のみなさんとちゃんと向かいあえる。僕らミュージシャンが日常に戻ることは演奏すること」とMC。「僕らミュージシャン」という言葉に違和感を思えつつも、「日常に戻ってこそ」という言葉に、強く背中を押された。

そして、ゲストは止まらない。2011年1月に下北沢GADENで上演した「Back on Stage!」で共演したメンバーの登場。「It don't mean a thing」を、歌とタップで、ステージはまさしく舞台となり、音楽だけでないエンターテインメントすべてが表現された空間となる。

そして、ライブは終盤に。タップあり、尾藤ワールドあり、鼻笛あり、琵琶もあり。本当に、思いが集結したライヴ。そして、笑顔になることに許可をもらい、日常に戻る勇気をもらった。

音楽って本当に本当に素晴らしい。ヒットチャートをにぎわすものだけが音楽ではない。心に直球で入ってくる音や声。それらが、日本を元気にすると確信した。そして、一日も早く節電をしながらでもコンサートやライヴが再開されることを祈る。

サンタラのキョウコが、遠くの人を思って作った曲「フラッグ」。続く「Happy Song」は、今日の日のためにできた曲。<Music is Love>と歌う。そして、ラストは全員で「Stand By Me」。

渋谷の夜、小さなライヴハウスかもしれない。だけど、そこには最高の音楽と無限の愛との最大級の出演者と観客が集まっていた。きっと届くと信じたい。いや、きっと届いている。被災地に力を、被災地以外の場所で不安に思う人にも力を。最高のエンターテインメントは勇気をくれる。

そして、このライヴで集まった義援金228,000円は、社会福祉法人テレビ朝日福祉文化事業団を通じ被災地に送られる。本当の音楽に触れたと実感した夜だった。

<Live for East-North『Pot-luck Nite! & Friends“UNITE!”』>
2011年3月23日@渋谷B.Y.G
Pot-Luck Nite!“UNITE”
Jay Kabira(Vo)
砂田和俊(G & Cho)
田村キョウコ(Vo & Harp)

朝倉真司(Per)
ひづめ・つかさ(G)
御供信弘(B)
ローズ高野(Pf)

岩崎廉(Pf)
高谷あゆみ(Vo & Tap)
平澤智(Tap)
本間憲一(Tap)

三谷幸喜(Nose Flute)
吉田心美(琵琶)

尾藤イサオ(Vo)

第一部
1.Don't Give Up/Pot-Luck Nite!
2.Lollipop/Pot-Luck Nite!
3.WORK SONG(サンタラ)/Pot-Luck Nite!
4.Somewhere Out There/Pot-Luck Nite!
5.夜光貝~アベマリア/吉田心美
6.三番目の恋人/サンタラ
7.誓い/Pot-Luck Nite!
第二部
1.ポジティブ・シンキング・マン~Banana Boat/Pot-Luck Nite!
2.あしたのジョー/尾藤イサオ
3.WORK SONG/尾藤イサオ
4.悲しき願い/尾藤イサオ
5.赤鬼と青鬼のタンゴ/尾藤イサオ
6.Black or White/尾藤イサオ
7.ダブルスケッチ/ひづめ・つかさ
8.上を向いて歩こう/三谷幸喜
9.It don't mean a thing/川平慈英、平澤智、本間憲一、高谷あゆみ、岩崎廉
10.フラッグ/サンタラ
11.Happy Song/Pot-Luck Nite!
12.Stand By Me/Pot-Luck Nite!

photo by NAOAKI OKAMURA

<SANTARA TOUR 2011“愛しのTRICKSTER”>
2011年4月2日、3日
@渋谷B.Y.G
開場/開演:18:00/19:00
チケット:各日 前売¥3,000 当日¥3,500 (1drink別)
[問]ビーワイジー TEL:03-3461-8574(17:30~)

『愛しのTRICKSTER』
2011年4月20日発売
DQC-611 ¥2,800(税込)
全11曲

◆サンタラ・オフィシャルサイト
◆川平慈英オフィシャルサイト
◆尾藤イサオ・オフィシャルサイト
◆三谷幸喜オフィシャルサイト
◆東北地方太平洋沖地震にまつわる音楽・アーティスト関連情報ページ

[寄稿] 伊藤 緑:http://www.midoriito.jp/
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