ジェイムス・ブレイク、重厚な音に包まれた静寂感

ツイート
2011年、最も活躍が期待される新人リスト<Sound of 2011>で2位に選ばれ、2月にセルフ・タイトルのデビュー・アルバムをリリースしたジェイムス・ブレイクが、3月24日、ロンドンでギグを行なった。

◆ジェイムス・ブレイク画像

場所は英国で最も古い教会のひとつ、1600年以上前から存在するといわれるSt Pancras Old Church。現在の建物は19世紀に建てられたものだが、それでも古く、歴史を感じさせる厳かな場所でのパフォーマンスとなった。

ポスト・ダブステップ、エレクトロニックなど、ジャンル的にはダンス系に分類される彼の音楽だが、その特徴であり重要な要素のひとつが曲の合間に含まれる“沈黙”。クラブやライヴ・ハウスではなく、静寂が似合う教会を会場に選んだのはそれを反映してのことか。収容人数はわずか200人弱だったと思う。デビュー・アルバムがトップ10入りした今、この何倍も大きな会場でプレイできたはずなのに、ジェイムス・ブレイクにとってはプレイする場所と雰囲気も大切な要素なのかもしれない。先月行なったライヴもこの教会を使用している。

ブレイクのキーボード/シンセに、ドラム、ギター/ベースを加えた3人で行なわれたパフォーマンスは、アルバムのオープニング・ソングでもある「Unluck」でスタート。教会という場所柄か、イントロのキーボードの音色がパイプ・オルガンを連想させる荘重な始まりだった。

アルバムからも想像がつくように始終、クールな趣きで進められたパフォーマンスだが、決してエモーションやライブ感がないわけではない。ブレイクのヴォーカルはときに(控えめではあるが)ソウルフルであり、小さく石壁でできた会場の中、幾重にも積み重ねられたサウンドはまるで洞窟の中で聴いているかのごとく、深く重く、身体全体に響き渡る。

賛否両論があるパフォーマンスだと思う。ライブならではの躍動感、ダンスの面を期待して来た人は退屈に感じたかもしれない。しかし、古い祭壇や十字架を背景に無数のロウソクが灯される中行なわれた今回のパフォーマンスは、ブレイクの持ち味と感性を最大限に活かしている。耳だけでなく身体全体で感じとることができる重厚な音があるにもかかわらず、始終漂う静寂感。この矛盾は不可思議でとらえどころがないかもしれないが、なぜか心地良く、落ち着く体験だった。

この夜のセットリストは以下の通り。

・Unluck
・To Care (like you)
・Give Me My Month
・Tep & Da Logic
・Never Learnt to share
・Lindisfarne
・Klavierwerke
・Limit to your love
・Wilhelm Scream
・Half heat full
EC
・A case of you

Ako Suzuki, London
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス