【D.W.ニコルズ・健太の『だからオリ盤が好き!』】 第25回『Robbie Robertson / How To Become Clairvoyant』~現代のアナログ盤を聴く

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D.W.ニコルズの鈴木健太です。

2年目突入の第1回目。そして記念すべき第25回(というのも、D.W.ニコルズでは25=ニコとして、毎月25日を“ニコルズの日”にするなど、25という数字にかけて色々なことを企画しているのです)。

これから紹介するのは、そんな記念すべき今回にふさわしい作品です。

ロビー・ロバートソン『How to Become Clairvoyant』。先日発売となった、ロビー・ロバートソンの13年振りのソロ・アルバム! 「ロビー・ロバートソンがエリック・クラプトンとアルバムを作っているらしい。」という噂は前々から聞いていたのですが、それは本当でした。

エリック・クラプトンは、7曲で参加し(そのうち1曲はヴォーカルもとっています)、3曲を共作。まさに噂通り、一緒に作ったと言ってもいいほどの参加ぶりです。他にも多数著名ミュージシャンが参加していますが、スティーヴ・ウィンウッドはさておき、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロ、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー、超絶ペダルスティールのロバート・ランドルフらの参加が、彼の与えてきた影響の幅広さを物語っていると思います。

何はともあれ、ロビー・ロバートソンの新作です。僕が最も好きなThe Band。そのギタリストでありコンポーザーだったロビー・ロバートソンの新作。しかもこれまた僕の最も好きなギタリストのひとりであるエリック・クラプトンが全面参加。内容は、意外にモダンでした。良い意味で。“13年振り”“クラプトン参加”というキーワードから、もしかしたら中途半端なルーツ寄りの作品なのではないかと懸念していたのです。

しかし届けられた音楽は、彼らしいルーツ感はもちろん土台にありながら、音楽的にもサウンド的にも洗練され、現代性がちりばめられた、「熟練されたアメリカンミュージック」という印象でした。そしてこの作品から漂ってくる“良きアメリカの音楽の臭い”はとてもピュアなのです。アメリカの音楽に憧れ続けている、アメリカ人ではないふたりだからこそ奏でることのできるピュアさなのかもしれません。

またこれは決して古い音楽の焼き直しではなく、ロビー・ロバートソンというアメリカンミュージックの最重要人物がこの現代に提示した、まさに現在進行形の音楽なのです。彼の創造力の豊かさには、今なお本当に驚かされるばかりです。

しかしやはり、ところどころでふと気付くと漂っているThe Bandの残り香にはドキッとさせられます。でも決してわざとらしくないところがまた、非常にロバートソンらしいのです。

ふたりの絡み合うギターも、涙なしには聴けない素晴らしいものとなっています。そしてそこにはクラプトンのロバートソンへの尊敬の念が感じられ、がっぷり四つというよりも、互いにのフレーズを引き出し合い、会話しているような、さり気ないごく自然な絡み方なのです。これはまさにこのふたりだからこそ、と言えると思います。

さて、この『How to Become Clairvoyant』。日本盤のCDが3月に先行発売されましたが、4月にアナログ盤が出るという情報を得たために僕はそれを待つことにしました。なるべく先入観を持たずに聴きたかったので、飛び交う評判からは耳を遠ざけ、CDショップへ行ってもジャケットは眺めても決して試聴はせず(多くのお店で大きく展開され、試聴機に入っていたのはとても嬉しいことでしたが…)、聴きたい気持ちを堪えに堪えて、アナログ盤の到着を待ちました。

そして4月の下旬にようやく手元に届きました。
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