KOKIAのニューアルバム『moment』が完成した。アルバムごとに新しい試みを盛り込んできたKOKIAだが、今回、KOKIAがチャレンジしたのは“ステージレコーディング”という非常に難易度の高い試みだった。

◆KOKIA レコーディング風景

「以前からライヴ盤を出してみたいという興味はあったのですが、5年前に事務所を独立してからは、大きなコンサートがあるたびにライヴDVDを必ずリリースしていることもあって、ライヴ盤よりももっと面白く、私らしいアルバムを創ることはできないかな? っと考えた結果、ステージレコーディングという形式を思いついたんです。ステージレコーディングというのは、ライヴでの録音ともスタジオでの録音とも全然違うものなんです。私はもちろん、携わってくれるスタッフにとっても初めてかつ難しい試みであったのですけど、エンジニアの笹原(与志一)さんをはじめ、信頼できるスタッフの方たちや浦(清英)さんたち尊敬できるミュージシャンの方たちとだったらできると思いました。」

ライヴと同じく、ミスが許されない一発録り。しかもスタジオでの録音と同様のクオリティが求められる。これまで多くのレコーディング経験を積んできたKOKIAにとっても、“ステージレコーディング”はまったく未知の世界だった。その斬新な試みは3月8日と9日の2日間、東京・草月ホールでオーディエンスに見守られながら行なわれた。

「普段、ライヴでもすごく緊張するんですけど、今回のステージレコーディングは、比べものにならないぐらいの緊張感でした。一発録りのため、間違えたら他のミュージシャンの方にも迷惑が掛かっちゃいますからね。ただならぬ緊張感ではあったものの、オーディエンスがいてくれたお陰で私はとても心強かったですし、ミュージシャンの方たちも、見られることによって奏でる音が変わっていったと思います。」

2日間で11曲を録る。そのためには高い集中力も要求された。

「最初のうちのテイクは探りながら進んでいったような気がします。正直に言うと、初日は『う~ん、こんな感じかなぁ?』と、2日目に向けての対策をやっと見いだせたという感じでした。でも、そうした課題を、2日目は克服できて、一番最後に録ったタイトル曲「moment~今を生きる~」はもう2度と録れないんじゃないかっていうぐらいのいいテイクが録れました。たった2日間のレコーディングでしたが、私にとってすごく成長できた時間となりました。」

アルバム『moment』には、ミュージシャン、スタッフ、そしてファンの人たちと一緒に作りだした会場の雰囲気や空気感もしっかりと刻み込まれている。アルバムを手にした人は、歌はもちろん、楽器の音もひとつひとつじっくりと聴いて、ステージレコーディングでしか出せない世界観を楽しんでもらいたい。

文:田中隆信

◆KOKIA オフィシャルサイト