capsule、コダワリ満載の最新アルバム『WORLD OF FANTASY』大特集

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最新アルバム『WORLD OF FANTASY』 2011.5.25リリース

INTERVIEW

――中田さんにとって、capsuleは軸になってる活動ですよね。

中田ヤスタカ(以下、中田):そうですね。capsuleは基本なんですよ。capsuleは唯一、プロになる前からやってる活動であり、人に頼まれていない。勝手にやってるところから始めた活動なので、その延長線上でやっていたいし、何かに応えるためにやっているわけではないので。自分がいいなと思うものを表現した結果の作品じゃないといけないと思ってやっています。

――capsuleはマニアックな部分も魅力ですし、わかりやすさとわかりにくさのキワにいるというか、表裏一体というイメージもありますね。

中田:あぁ、そうですね。僕が好きだなと思っている要素を、ただの自己満足ではなく、聴かせるというパワーを込めているという感じです。どうにかして、“これだったら面白い!”っていう風にならないかなと思っていて。ある種、きっかけになるようなパワーがあると、僕は良い作品が出来たなと思うんですね。

――制作はどんなところからスタートしたんですか?

中田:作り始めたときのイメージは、音そのものをどうこうしようっていうことではなく、capsuleじゃないとできないようなことを生かした内容にしようと。誰かに相談しながら作るようなユニットではないので、簡単に言えば自由に作るっていうことなんです。capsuleは、純粋に音楽ありきでアルバムまで持っていくっていうスタイルなんです。前作『PLAYER』のときは、タイアップの関係もあって、アルバム制作時期をひとまとめにできなかったんです。だから、今作は、純粋に曲だけを先に作り始めて。僕は他にもプロデュース活動とか、ソロの活動をやっていますが、音楽のことだけ考えて作るというのはcapsuleじゃないとやりづらいんですよ。デモテープを作る必要もないし、こういうものが出来そうですって誰かに提示することもなく、出来たものが完成品。そういう自由な感じが出たら良いかなぁと思いました。ジャンルとしてではなく、状態としてcapsuleらしさというのがあるんだとしたら、理想に一歩近づけたかなっていう感じですね。こういう音がってことではなく、capsuleとしてのあり方っていうのが。

――音はデジタルですけど、こしじまさんの声のせいなのか、込めたもののせいなのか、すごく人間的にも感じるんですよね。

中田:人間が作り出している感はものすごくあると思います。コンピューターを使っているというのを生かしたサウンドにはしたいんですけど、自分の持っている環境から出る音というのも生かしたい。しかも、それは人間がコントロールしているっていうところのヒューマンな感じから出るノリっていうか。今までcapsuleは色んなことをやってきたと思うんですけど、今作はオーディオっぽさっていうか、スピーカーから出ている音を楽しむっていうところに集中したっていうのはありますね。

――空気を伝わって来る感じですね。

中田:音楽って、形のないものですけど、物理的にあるような感覚で捉えている。だから、なるべく良いスピーカーで聴いてほしいですよね。今、ツールとしての音楽っていうのもあるじゃないですか。“これどう?”って人に聴かせるための。それこそ、携帯のスピーカーから聴かせるだけの。それも一つの音楽の文化なんですけど、自分で自分のために聴くなら音は良いほうがいいじゃないですか。だから、そういう部分も楽しんでもらうために、こういう音楽はすごく向いていると思うので。スピーカーを変えたら、びっくりするような音になってると思う。小さいスピーカーでも楽しめるようには作っているんですけど、楽しみの奥行きは、さらに込めて作っているので。

――このアルバムはBPM(テンポ)が一定ですが、これは最初から決めていたんですか?

中田:半分くらい作ったときに、このままこのテンポで乗り切ってやろうって。自分ルールみたいな感じで。だからこそ同じBPMとは思えないような緩急を感じられるものにしようと。アルバムを聴いているうちに、違う世界にいっちゃったみたいな、没入してもらえるといいですよね。

――無心になれる感じありますよね。

中田:そう思っていただけたら、すごい嬉しいですね。そういう内容なので。

――これが今のcapsuleの濃い形としてリリースされたあとは、次にまた向かうんですよね。

中田:次はぜんぜん違う事をやるかもしれない。変えようとも、変えないでおこうとも思わないですね。ホントに気分なので。

――最初にcapsuleは自由だっておっしゃってましたもんね。

中田:そうなんですよ。ルールはないんですよ。勝手にやってたら、何かしら変化はあるし、変えないと思わないと変わると思うんです。だから、普通にやってればいいかなって。大きな変化も計算していないんですよね。出来て行く中で、自分で作っているんだけど、決まっている音に向かっているわけではなくて、出来てる音に対してこうしていこう、ああしていこうっていうのが段々見えて来るものなので。作るのが一日ズレただけで、全然違う曲が生まれる可能性もあるんですよ。作った順番がもし違えば、このアルバムには入れられないなってことになったりもするし。自分で作っているのに、僕もわからないんですよね(笑)。

――リアルタイムなんですね。

中田:そうなんです。すごいカッコ良い音が出たと思ったときに、でもこれ、やりたいことと違うしって……そのやりたいことっていうのが、カッコ良いことだったら、そっちを優先するじゃないですか。だから、ホント、どうなるかわからないんです。頭の中にすでにある音っていうよりは、やっている中で生まれて来る音を優先したいというか。頭の中に完成型を作るんじゃなく、実際に出ている音を聴いて、考えているというか。人のプロデュースをするときだったら、完成型がある程度は頭にあることが多いんですけど、capsuleはやりながらなので、どうなるかがわからない。ただ、自分が楽しんでいるのは間違いないです。

――前作『PLAYER』がオリコン初登場4位だったりしていますが、そこでのプレッシャーは?

中田:まぁ、売れなかったら、それはそれでしょうがないですよね(笑)。

――そこも自由な感じですね(笑)。

中田:だって、好きな曲をやって売れなかったら納得いくけど、売れると思って、好きじゃないことをやって売れなかったら悲惨だし。それで売れても、売れて良かったとは思うだろうけど、“曲好きです”って言われたときに、“でしょ?”とは言えないから。そういうものにはしたくないので。売れるか売れないかなんて、考え始めたら何も作れなくなるから。あとは、レコード会社の人、頑張ってください(笑)。

――今までの作品もそういうやり方をしてきていますもんね。

中田:世の中そういう音楽がもっと増えればいいのにとは思います。音楽を作っている人は、自分が聴きたい音楽を作って欲しい。作るっていうことは、世の中の音楽に100%自分の好みに当てはまるようなものがないから作るんでしょ? そう思ってなければ作る必要ないから。作り手自身が聴きたいと思うような音楽作品、そういうものが聴きたいです。クラブシーンだけの話ではなく、音楽全体で、むしろ物作りをする人全員がそういう風に出来たら本当に楽しいと思う。今の時代、好きではないけどダメではない、っていうもののほうが溢れていると思うんです。でも、残って行くものや、たくさん作るものって、強烈に誰かが好きっていうもののほうが多いでしょ。そういうものこそ、9割の人は納得してなかったけど、やってみるか! みたいな面白さがあると思うんです。そういう創作物が世の中に溢れてくると、もっと楽しいですよね。色んな物が見られて、色んな物が聴けて、刺激がいっぱいになりそう。capsuleによって、そういう機会を増やせたら良いですよね。

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