ロジャー・ウォーターズ、驚異の『The Wall』再現ツアー

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5月11~18日、ロジャー・ウォーターズの<The Wall Tour>がロンドンO2アリーナで開かれた(全6公演ソールドアウト)。ロンドンでアルバム『The Wall』の再現ツアーが行なわれるのはおよそ30年ぶり。1980年にアメリカ、イギリス、ドイツで行なわれた同ツアーの映像が公開されていないため、ピンク・フロイドとしてパフォーマンスされた当時のものと比べることはできないが、テクノロジーが発展した分、舞台装置はさらにスケール・アップしたのではないだろうか。何であれ、今ツアーもまたもやロック史に残る驚天動地なコンサートであるのは間違いない。

◆ロジャー・ウォーターズ画像

ショウは2部構成になっており、「In The Flesh?」から「Goodbye Cruel World」までが1部。軍人たちの登場に目を奪われている間、巨大な戦闘機がオーディエンスの頭上を飛行しステージ横の壁に衝突、激しく火を噴くという意表を突くシーンでスタートした。この飛行機のセットはあらかじめ会場後部もしくは天井にでも設置されていたのだろうが、開演前まったくその存在に気づかなかったため、突然の出現とクラッシュのリアルさに度肝を抜かれた。

初っ端からの強烈な一撃にオーディエンスは息を呑み、続いて驚嘆と賞賛の歓声を上げた。そう、これこそピンク・フロイドだ。1988年に代々木競技場で初めて彼らのコンサートを観たとき、光と音が織り成すイルージョンに圧倒され口がポカンと開きっぱなしだったのを思い出した。今回、ピンク・フロイドではないにしろ、ウォーターズは最初から最後まで観る者を圧倒する驚異のパフォーマンスを見せてくれた。

1部では、巨大な“Teacher”や“Mother”のバルーン人形や子供たちのコーラスが登場し、曲のストーリーに沿ったパフォーマンスが繰り広げられる後ろで、ショウの主役でもある“The Wall”が着々と構築されていく。そして客席とバンドの間を遮断する巨大で脅威的な壁がステージ全面に築かれたところで終了。2部はその壁の中からのパフォーマンスでスタートする。

バンドの姿が見えず、壁が立ちはだかっているため観客の間にもなんとなく疎外感が漂う。大掛かりなセットはあったもののミュージックが主体だった前半に比べると、後半はヴィジュアルに焦点を当てシアトリカルに展開していく。壁が巨大なスクリーンの役割を果たし立体感のある迫力満点の映像を映し出したり、一部が飛び出し壁の中での生活がかいま見られるような工夫が凝らしてあり、ウォーターズはときとして哀愁漂う、ときとして攻撃的なアクト(客席に向けてマシンガンをぶっ放す一場面も)を交えた演劇的なパフォーマンスを繰り広げていく。サウンド・エフェクトも並みのものではなかった。

そしてラストで、ショウのクライマックスとなる壁の崩壊――高さ10メートル近くはあると思われる壁が一気に崩れ落ちるのだ。こんなことがステージ上で起こり得るのかと思うほど凄まじく衝撃的な瞬間だった。

壮大なステージ・セットはいまどき珍しいものではない。ここで見られた大掛かりな仕掛けや映像も1つ1つは特筆すべきものではないかもしれない。しかし、それでも<The Wall Tour>がほかのロック・コンサートと一線を画するのは、究極のコンセプト・アルバムの1枚である『The Wall』が持つストーリー(そして、それを見事に具象化)、痛烈な歌詞や音楽、さらにアルバム誕生の背景を熟知しピンク・フロイドに対し並々ならぬ想いを抱き続けるオーディエンス――さまざまな要素が入り混じっているからだろう。

会場を去る誰もがこう思っていたに違いない。「何としてでも、もう一度、ピンク・フロイドが観たい!」

<The Wall 2011 Europe Tour>のツアー・メンバーは以下の通り。
Roger Waters (Vo, B, G)
Snowy White (G)
Dave Kilminster (G)
G E Smith (G, B)
Jon Carin (Key)
Harry Waters (Hammond Organ)
Graham Broad (Dr)
Robbie Wyckoff (Vo)

ツアーはこの後、ヨーロッパに上陸する。

Ako Suzuki, London

◆BARKS洋楽チャンネル
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