ギル・スコット・ヘロンよ、安らかに…心からの冥福を祈っているよ

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2011年5月27日、ニューヨークの病院で62年の生涯に幕を閉じたアーティスト、ギル・スコット・ヘロン。1970年代からアーティスト活動を開始し、2010年には実に13年振りとなる新作『アイム・ニュー・ヒア』をリリースし、さらなる活動が期待されたなかでの突然の訃報だった。

◆ギル・スコット・ヘロン画像

数えきれなぬほどのアーティストに多大な影響を与えたことを象徴するかのように、トム・ヨークからエミネムまで、多くのアーティストが哀悼コメントを発表する中、『アイム・ニュー・ヒア』のプロデュースを務め、彼が所属するXL Recordingsの創設者にしてオーナーでもあるリチャード・ラッセルが哀悼の意を寄せた。

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2011年3月19日…思えばあれがギル・スコット‐ヘロンと話した最後だった。土曜日で、ちょうど私の誕生日の翌日で、ロンドンの書店「フォイルズ」にいた私の携帯にギルが電話をかけてきてくれた。それから小1時間、すっかり長電話をしてしまった。そう、ギルと話すのは私にとっては嬉しいプレゼントなのだ。ギルは私にとって父親のような存在で、本当に多くのことを彼から学んだ。

決して完璧な人間ではなかったが、(もちろん、完璧な人間などこの世にはいないが。)とにかく、自分の物差しで人を測ったり決め付けたりはしなかった。とてつもなく頭が良くて、言葉選びがこれまた絶妙。ユーモアのセンスも最高で、彼独特の優しさ、人間臭さがたまらなかった。名声や成功の落とし穴にハマるような馬鹿な真似はしなかった。そんなヘマをするような愚か者ではなかった。金銭には一切、関心がないようだった。私が知る限り、与えられた賞を一切受け入れたことがないし、それよりも自分以外の人間の仕事がきちんと評価されることを望んでいた。

自分のウェブサイトに掲載する際に、スタジオ・エンジニアと自分の写真を同等の扱いするようリクエストしてきたアーティストは、私の知る限りギルぐらいだ(『アイム・ニュー・ヒア』のエンジニアを担当したローソン・ホワイトとは、ギルも私も素晴らしい時間を過ごした仲間同士だ)。

本当にギルは私にとって…いや私だけでない、たくさんの人にとって特別な存在だった。あの素晴らしい才能。彼は孤高の詩人であり、シンガーであり、演説家であり、キーボーディストだった。精神面も素晴らしいの一言に尽きる。彼が伝えるものは、私たちにたくさんの感動を与えてくれた。私に対しても常に寛大で、一緒に音楽を作ろう、プロデュースしようと励ましてくれた。彼のおかげで自分のクリエイティヴィティを再確認することができたと言っても過言じゃない。自分でさえ信じていなかった、そんな時も、ギルは私の創造力に一つの疑問を抱かなかった。

人生の最良の経験…そのいくつかはギルと過ごした時のことだ。彼と知り合えることができて本当に光栄に思っている。最後の電話で、ギルは私に簡単に自分を曲げるなとアドバイスしてくれた。そしてその言葉を胸に、私は日長一日レコードあさりを楽しんだのだった。

ギル、安らかに…心からの冥福を祈っているよ

──リチャード・ラッセル

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◆BARKS洋楽チャンネル
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