ASKA、「あの鐘を鳴らすのはあなた」カヴァーも披露した最新ライヴの音源がiTunes限定で配信

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ASKAが2010年10月から翌2011年にかけて行なった全国ツアー『ASKA CONCERT TOUR 10>>11 FACES』のライヴDVD(Blu-ray)がリリースされた。さらにライヴ音源を収録したアルバムもiTunes限定で配信されている。

◆ASKA『ASKA CONCERT TOUR 10>>11 FACES』の画像、収録曲一覧

DVD(Blu-ray)には、2011年1月26日に行なわれた日本武道館公演の模様をアンコールも含めて全曲収録。この日のライヴでは、2010年11月3日にリリースされたセルフカヴァーアルバム第2弾『君の知らない君の歌』に収録されたCHAGE and ASKA、ASKAソロ曲を中心に、「はじまりはいつも雨」や「天気予報の恋人」「恋人はワイン色」などのヒット曲でセットリストが組まれた。

音源のほうもDVDと同じ日本武道館公演のもの。1曲めの「MY Mr. LONELY HEART」の厳かなストリングスのサウンドから始まるライヴ音源は、消えていった時間を再び巻き戻すことができるような、ライヴが始まる前の高まる温度感や張り詰めた空気感、“もうすぐだ”という胸の鼓動をよみがえらせることができる。

気持ちが昂ぶって、CD音源にはないメロディーをアドリブで挟むASKA。その喉が近年絶好調なことは、彼のライヴに足を運んでいるファンならばご存知のことと思うが(とはいえ、このツアー中にはインフルエンザにかかったりもしたが)、「パラシュートの部屋で」の音源などを聴く限り、今回のライヴ音源は、近年のASKAのライヴの中でも、すこぶる好調だったヴォーカルコンディションのもとで収録されているのがわかる。

“年齢を重ねて深みを増した”という言葉でASKAのヴォーカルを片付けてしまうならば簡単だが、単にそうではなく、たとえるなら、時代を超えて音に深みや艶を増すストラディヴァリウスのような響き。ASKAは、自らの身体の内部で共鳴させた声を丁寧に、想いとともに音に乗せていく。その声は、消えてなくなる瞬間まで、息を飲んで聞き入ってしまうほどにリスナーの耳を惹きつけて離さない。喉に自信のあるヴォーカリストは星の数ほどいるが、その自慢の喉に任せて勢いだけで歌い上げるのではなく、メロディーに乗せる言葉、そして想いが一番伝わる声量で、パワーで、音色で、発声方法で、喉を的確にコントロールし、結果、求心力を高めつつ歌いあげることができるヴォーカリストは、ASKAを含めてそう多くはないだろう。

また、ライヴならではの、ASKAのシャウトとともに圧倒的な声量と迫力で歌い倒す曲も(今回のライヴのセットリストには、そもそもその手の曲があまり多くなかったのだが)前半の「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」や「L&R」、そして「Far Away」「パラシュートの部屋で」などで楽しむことができる。ライヴならでは、という意味では、「待たせたね~!」のフレーズも収録。音源を冒頭から通して聴いていると、ASKAの声に両手を挙げて応えるオーディエンスの姿が見えるようですらある。

昨今のASKAライヴでのお約束、ASKAが幼い頃に影響を受けた歌謡曲をカヴァーするコーナー。今回のライヴツアーでは、ご存知のとおり、和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」がカヴァーされた。なお、10月30日のツアー初日には“あまりのインパクト”ゆえに、自分本来の歌い方を忘れてしまうというハプニングもあった(そもそもASKAの、“僕は僕なりの”サービス精神と茶目っ気で、過去には坂本九を、そして今回の和田アキ子をちょっと“意識”して歌うから、自分の歌い方を忘れてしまうのだが)。

しかしながらこのASKA版「あの鐘を鳴らすのはあなた」。オリジナルの和田アキ子の、ヴォーカリストとしての圧倒的な歌唱力は我々の知るところだが、それにも匹敵するほどのパフォーマンスをASKAは聴かせてくれる(ちなみに、Aメロでの和田アキ子のモノマネもかなり上手い)。これを“時が過ぎようが、歌い手が変わろうが、名曲は色褪せない”と解するか、それとも“和田アキ子もASKAも、すげえ”と解するか。正解はきっと両方なのだろう。そんな説得力を持つ1曲となっている。

というわけで、ライヴに足を運んでいない人はライヴDVDのほうを購入してもらうとして、ライヴに行った人は、まずは、この音源を購入してみてはいかがだろうか。ビジュアル(映像)を持たないライヴ音源なだけに、目を閉じれば、そこにはジャケットを羽織り、ネクタイを締め、ギターを抱えたASKAが……抱えたギターがMartin D-76なのか、それともGibson J-50なのか、はたまたオベーションなのか、もしくはジャケットが赤のコーデュロイなのかどうかは、それぞれライヴ参戦した時期や思い浮かべる情景も異なるであろうから、ひとまず置いておくとして、そんなASKAが十川知司、澤近泰輔の長年ASKAを支えてきた両キーボーディストらをはじめとした名うてのミュージシャン陣を従えてパフォーマンスしている姿が鮮明に浮かんでくる。電車の中が、自宅が、職場が、受けた熱量や想いもそのままに、あの日足を運んだASKAのライヴ会場の空間と化すのだ。

ただ、そうしていると、そのうち記憶が曖昧となり、より鮮明なビジュアルがほしくなるのも確か。その時は、DVDよりも高精細、高音質なBlu-rayのほうでいかがだろう。もちろん記者は、この最良の選択をとるつもりだ。

同じ楽曲であっても、その時代や時間、瞬間で様々な表情を見せるのがライヴ。たとえ手元に同じ曲があったとしても、その楽曲と、このライヴで歌われた曲は、確かに違う。過去から現在において、ASKAの作品に触れたことがあるという人は、このライヴアルバムで、再びASKAの楽曲を耳にしてみるといい。自分の知っている曲は、また違った顔(FACES)を見せてくれるはずだ。

なお、現在オフィシャルサイトにある特設ページでは、ライヴ映像を一部視聴できたり、ライヴ画像を壁紙としてダウンロードできたり、また小貫信昭 氏によるライヴレポートを読むことができる。

text by ytsuji a.k.a.編集部(つ)

◆ASKA オフィシャルサイト(CHAGE and ASKA Official Web Site)
◆iTunes Store ASKA CONCERT TOUR 10>>11 FACES(※iTunesが開きます)
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