amber gris、空位の玉座へ誘う1stフルアルバム『Pomander』

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V-ROCK界で注目を集めつつあるバンド、amber grisが初のフルアルバム『Pomander』を7月20日にリリースする。これまで、1枚のシングルとマキシシングル、1枚のミニアルバムをリリースしてきたこのバンドは、“空位の玉座”に最も近い存在になろうとしている。

◆amber gris画像

現在、歌モノ・ソフトV-ROCK系のバンドで、次代を担うべき決定的な逸材はまだ存在しない。“空位の玉座”とはこのポジションを指す。どのバンドにもチャンスはあるが、このamber grisは横一線から頭ひとつ飛び抜け始めたと言えるほどのオリジナリティとクオリティを有している。

彼らが打ち出す世界観は、
・中世から前近代の、西洋の片田舎をイメージさせる牧歌的な舞台設定。
・西洋的だが、V-ROCK特有のゴシック要素は無い。
・絵本、童話、伝承のような歌詞世界。

アートワークを含め、概ねこういった世界観を持つ。非常にプリミティヴであり、近代的な固有名詞や描写はほとんど見られず、憤りや葛藤を描くラブソングも無く、内省的な問いかけも無い。現在のV-ROCK界において、いかに“空位”の方向性であることがわかる。

そして、その世界観を体現するサウンドも、まさに“空位”のものと言える。近年V-ROCK界は、デス声やスクリーム、ダウン・チューニングを多用したヘヴィネスサウンドへのパラダイムシフトが起こり、これが主流となっている。ダークネスを軸とするV-ROCKであれば非常に効果的なファクターであり、この帰結点は当然と言えるかもしれない。どの時代でも、第一線で活躍するバンドの方向性が、追従者にとってひとつの指標となるのは当然だ。第一線級のバンドたちがヘヴィネスであれば、自ずとインディーズ界でもそれが主流となる。しかしこのバンドは、レギュラー・チューニングでやれることはまだある!と言わんばかりの独特なサウンドを聴かせてくれる。

メジャー・キーで紡いだ楽曲とミッドテンポの構成比が高く、明朗にして快活。尺もコンパクトで聴きやすくダレない。楽器陣は耳障りのよいウォームなアナログ感を漂わせ、時に緻密なアンサンブルで左右の脳を刺激する。シンセに頼らずツインギター以外の味付けが無い点も、こだわりと意地を感じる。もちろん肝心のメロディの良さについては、もはや言うまでもない。確かな歌唱力と表現力を併せ持つ、vo.手鞠による緩急自在のヴォーカリゼーションが、このサウンドによく“乗って”おり、聴かせる“声”を放っている。

かつて、L'Arc en CielやLa'cryma Christiは、ダークネスを軸とするV-ROCKサウンドのアンチテーゼとも言える、“白いサウンド”を打ち出し、脚光を浴びた。amber grisは、その正統後継者であると敢えて言いたい。近年、モダンなヘヴィネスサウンドがトレンドとなったV-ROCK界において、非常に貴重な存在であるだけでなく、広くROCK界全体においても貴重な存在となりえるポテンシャルを持っている。密閉された空間より、むしろホールクラスの会場で響き渡るイメージが既に浮かぶ。

久し振りに良質の“物語”を聴かせてくれる彼ら。このフルアルバムを機に、“空位の玉座”へと一気に駆け上がれるはずだ。アルバム内容はもちろん、今後の展開にも期待は膨らむばかりである。

文:金本 英嗣
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