渡辺美里:偶然な幸せを見つける力『Serendipity』に込めた想いを聞く

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渡辺美里

New Album 『Serendipity』 2011.8.3 Release

INTERVIEW

震災について曲を作るというよりも“音楽とはいったい何なのだろうか?”と思った。

――4年ぶりのオリジナル・ニューアルバム『Serendipity』です。

渡辺美里(以下、美里):期間が空いてしまいましたが、ずっと活動はしていたんですよ(笑)。去年はデビュー25周年でボックス・セットやシングル・コレクションがあったし。何かしら動いている、止まれない自分がいるんです。

――やはりオリジナル・アルバムというのは“まとまるタイミング”というのかな、そうしたものが必要だと思うのですが、その引き金は震災ですかね?

美里:今年リリースすることは決まっていたんですが、震災があったために「リリースしてもいいものだろうか?」と思いました。私も震災のあとにコンサートがあったのですが、例えばお腹が満たされたあとに、音楽で心がうるおうことも必要だろうと自分に言い聞かせてやりましたね。去年、オリジナル・アルバムを出そうという案もあったけど、去年は他にもアイテムがあったので、もう少し作り込んでから出そうってことになった。だから、震災に向けてというよりも、被災した方を含め私たち自身が感じた“ささやかな日常の大切さ”を見つめるものになったと思う。逆に言えば、被災された方たちに聴いてもらっても、恥ずかしくないアルバムというか。そうあってほしいと思い、完成させましたね。

――アルバムの制作過程のどの辺で、震災があったのですか?

美里:完成間近でした。締切りぎりぎりという感じで。重く受け止めました。

――ひとりのシンガー、ミュージシャンとして“自分に何ができるのか?”ということは、考えるなと言われても考えてしまうものでしょう?

美里:そうですね。特に感受性で仕事をしているミュージシャンだとか、クリエイター、映像を撮る人もそうでしょうけれど、何かを感じてそこから自分が作品を生み出していく人たちは、いろいろなことを思っただろうし、感じただろうし、“自分に何ができるのか?”をすごく考えたこの時期だったと思う。その気持ちで新曲を作ろうとした人もいるかもしれないし、もっと大きな“全部に通ずるもの”を私は作りたいなと思いました。震災について曲を作るというよりも“音楽とはいったい何なのだろうか?”と思った。

――加えて、去年リリースした「ニューワールド~新しい世界へと~」などの楽曲が、震災後に聴いてみると“響き方を変える”というか、そんな気もしました。

美里:ほんとにそうですね。「始まりの詩、あなたへ」もそうですけど、本当に歌っていいものだろうか?と思う瞬間もありました。「始まりの詩~」は、4年前に大江千里さんがくれた曲なんですね。それが今、ハマりすぎていて怖くなるほどで。今回のアルバムを完成させるために、マスタリングでロサンジェルスに行ったんですけど、そんな行為すらやっていいものだろうか? 日本がこんな状況の時に……って思ったけど、ここで私がじっとしてアルバムも出しません、何もしませんと言ったところで、ことは進まないわけだからと思い直してね。その流れで急遽、千里さんらとニューヨークでチャリティ・ライヴをしました。4年経って、こんな状況で、千里さんとニューヨークで「始まりの詩~」を歌えたことは貴重な体験でした。ありふれた日常の中にある深い部分での孤独だったり、持ちたいと思う希望だったりをテーマに今回のアルバムの歌詞は書いていったので、本当に“始まり”という言葉に集約される世界観だと思う。

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