新時代の幕開け、ソニーから遂にBAドライバー・ヘッドホン登場

ポスト

ついにこの日がやってきた。長年にわたり秘密裏に開発を続けてきたという自社開発のバランスド・アーマチュア(BA)・ドライバーが遂に完成、ソニーからBAドライバーを搭載したカナル型ヘッドホンの登場である。

◆ソニーBA型ヘッドホン画像

ソニー自社開発のBAドライバーは、一般的なBAドライバーと同様に数mm程度の小さな直方体の形状をしているが、既存のBAのようなパイプ形状のエアーダクト構造をもたず、直方体の一面に円形のホールが開きそこからサウンドを放つフラット形状を有しており、これにより広帯域に伸びのあるサウンドを可能にしたという。

ソニー製BAドライバー型ヘッドホンは、充実のラインナップで11月10日に発売開始となる。リスニングシリーズとしてシングルドライバーからクワッドドライバーまでのバリエーションが登場、あわせてノイズキャンセリングモデル/ブルートゥースモデル/スポーツモデルも各1モデルずつの登場の予定だ。

現時点のラインナップから確認できるのは、(1)フルレンジ、(2)ウーファー、(3)トゥイーター、(4)スーパーウーファーという4種類のBAドライバーの存在だ。今回BAドライバーを搭載して登場する新モデルは下記の11機種だが、全てのモデルに共通しているのは(1)のフルレンジBAドライバーを積んでいるという点である。
その上で、リスニングシリーズのデュアルドライバーモデルXBA-2は(2)ウーファーを追加することで低域を充実、トリプルドライバーモデルXBA-3は(2)ウーファーと(3)トゥイーターが追加され低&高域の充実が図られている。クワッドドライバーモデルXBA-4は、トリプルのXBA-3にさらに(4)スーパーウーファーを加えることでヘッドルームの確保とともにさらなる低域の充実を特徴とする。現時点での情報で判断すれば、XBA-4は4ウェイ4ドライバーと言えるが、一般的な構成が超低域×1、低域×1、中域×1、高域×1と表現されるところ、XBA-4の場合は、超低域×1、低域×1、全域×1、高域×1と表記すべき構成となる。ネットワーク回路がどう設計されているのか、気になるところだ。

シングルからクワッドまで4種類すべてのモデルを繰り返し試聴し、そのサウンドを確認したが、まさしくそのスペック通りのサウンドが楽しめる。基本的なトーンはすべて共通しており、各帯域のチューニングがモデルによって異なるというイメージだ。ユニットを重ねていくことで低音と高音が増強されていく構造になっているわけだが、単にマルチドライバーのほうが優れているというものではなく、自分の好みに合致したモデルを選択するのが吉だと思う。

実際、私は個人的にドンシャリサウンドも大好きだが、実に今時っぽいバランスで鳴らすクワッドXBA-4SLの重量級サウンドよりも、絶妙なバランスでフットワーク軽く全域を表現してくれるデュアルドライバーXBA-2SLのほうが、音楽を楽しく再生してくれると感じた。中にはシンプルなシングルドライバーXBA-1SLのサウンドが一番好きだという意見もあり、そこはまさに十人十色。自分にとって最も心地よいモデルがどれかを探すのも楽しいところで、是非試聴を通し購入モデルを決めていただきたいところだ。なおエントリーモデルとなるXBA-1SLは希望小売価格7,455円(税込)で市場価格は6,000円ほど、フラッグシップとなるXBA-4SLが希望小売価格30,975円(税込)で市場価格は25,000円程度になるものと思われる。

ケーブルはネックチェーン型といういわゆるu型だが、iPod/iPhoneモデル(型盤末尾:IP)に関してはコントローラーが付属するY型となる。タッチノイズはゼロではないが控えめなので、特に神経質になることもないだろう。ハウジングの形状から耳掛け(シュアー掛け)も可能だ。なお、全てのモデルは、内部に低反撥ウレタンが充てんされているノイズアイソレーションイヤーピースがセットされるのも、特筆ポイントだ。

また一方で、ノイズキャンセリングモデルXBA-NC85Dも実はすごい。ドライバーが劇的に小型化されたことで、煩わしかった電池ボックスやコントローラーを全てハウジングに押し込んでしまうという驚きの仕様での登場だ。もちろん、ノイキャンながらボックスレスを実現させているのは世界広しといえどこのモデル以外存在しない。BAドライバーのみならずマイクも超小型化、プロセッサーも省エネ化を実現化させ、ハウジング内バッテリーで駆動させるという夢のような設計で、付属するUSB充電器をPCに挿し、そこにイヤホンジャックを入れるだけで充電されるという実にスマートな仕様となっている。孤高の完成度、この総合力の高さこそまさにソニーの真骨頂だ。

一方のブルートゥースモデルXBA-BT75も全てのパーツがハウジング内に収まっており、こちらも電池ボックスが存在しない。さらに画期的なのは付属のキャリングケースで、このケースに充電池が内蔵されており、ケースにしまうだけで、本体へ充電を施すという気の利いたことをしてくれる。本体の連続使用3.5時間という実働時間の短さを見事にフォローしてくれるアイディアで、かゆい所に手の届く素晴らしい設計だ。

小型化と完全な密閉化という新たなステージで、これまで成し得なかったエポックメイクな商品を打ち出してきたソニーだが、同時に、これを起点としながら更なる高品質化、高機能化を果たすBAドライバーが開発されるだろうという可能性にこそ大きな意味がある。ネットワーク回路の設計とともに、帯域特化の特定領域専用のBAドライバーや、周波数帯域を拡張した新ドライバーの登場など、その期待値は並ではない。これまで成し得なかった最高品質サウンドの登場から、他社を凌駕する超安価エントリーモデルまで、これからどのようなサクセスストーリーが描かれるのであろうか。もちろんハイブリッド設計だって視野にあるだろう。MDR-EX1000の完成度は未だ色褪せぬものだが、BAドライバーの登場は、これまでの既成概念をぶち壊すポテンシャルに満ちている。

技術力、生産能力、販売能力…とさまざまな観点から自社開発は限りなく困難とされてきたBAドライバーを、量産体制をもって次世代に夢をつないだソニー。新時代を牽引するこの切り札は、とてつもなくでかいものだ。

text by BARKS編集長 烏丸

周波数帯域
シングルドライバー XBA-1SL/XBA-1IP:5~25,000Hz
デュアルドライバー XBA-2SL/XBA-2IP:4~25,000Hz
トリプルドライバー XBA-3SL/XBA-3IP:4~28,000Hz
クワッドドライバー XBA-4SL/XBA-4IP:3~28,000Hz

2011年11月10日発売(XBA-BT75のみ11月中旬発売)
・XBA-1SL:シングルドライバー 7,455円(税込)
・XBA-1IP:シングルドライバー(iPod/iPhone用) 8,715円(税込)
・XBA-2SL:デュアルドライバー 18,375円(税込)
・XBA-2IP:デュアルドライバー(iPod/iPhone用) 19,635円(税込)
・XBA-3SL:トリプルドライバー 24,675円(税込)
・XBA-3IP:トリプルドライバー(iPod/iPhone用) 25,935円(税込)
・XBA-4SL:クワッドドライバー 30,975円(税込)
・XBA-4IP:クワッドドライバー(iPod/iPhone用) 32,235円(税込)
・XBA-NC85D:ノイズキャンセリングモデル 43,050円(税込)
・XBA-BT75:ブルートゥースモデル 24,675円(税込)
・XBA-S65:スポーツモデル 8,715円(税込)

◆ソニー・ヘッドホン・オフィシャルサイト
この記事をポスト

この記事の関連情報